Local efforts in Kyoto 02国内外からの移住者が
新しい文化・伝統を"編む"京都へ
【PART2】
Text:Haruko Hamahori
Photo:Shinichi Kimura
日本の伝統文化が脈々と息づく国際都市・京都市。この地に魅せられ移住した人びとがムーブメントを起こす新スポットを、自身もまた10年前にUターンして以来、京都のまちづくりやコミュニティづくりに関わる地域プロデューサー・田村篤史さんが訪ねました。
巡る人
地域プロデューサー
田村篤史さん
1984年京都府生まれ。2012年にUターンし、2015年ツナグムを設立。移住促進やまちづくり、コミュニティづくり事業を展開。2020年、京都信用金庫と共同出資で新会社Q’sを設立し、コミュニティキッチン「美食倶楽部」などの事業を開始。
日本初のジン専門蒸溜所が
手掛ける和洋折衷の京体験
京都御苑の東へ移動し、田村さんは河原町通沿いにある「季の美House」の暖簾をくぐった。2020年6月にオープンしたこの施設では、日本初のジン専門蒸溜所・京都蒸溜所が手掛ける「季の美」ブランドの世界観を体験できる。建物は築100年超の木材商の元住居で、歴史ある土壁や梁、石畳をいかしつつ、上質なモダン空間にリノベーションしている。しかも空間を構成する主要素材が京都の老舗の伝統工芸というこだわりで、暖簾は一澤信三郎帆布、 アプローチの壁紙やカウンターのあしらいなどに細尾の西陣織、カウンターの壁一面には雲母唐長の京唐紙を貼るなど、京都らしさにあふれている。また木工家具類は市内の工房が手掛けるなど、京都の多様な職人技が集結した貴重な空間になっている。
京都と英国の伝統を掛け合わせた
京都産クラフトジンの世界観を
町家リノベーションで表現
「『季の美』はジュニパーベリーをベースにしたロンドンスタイルのジンです。でも、お米から造ったスピリッツを使用し、ブレンド水は京都伏見の名水、風味や香りを左右するボタニカルには宇治茶や京都産のユズ、山椒、生姜、レモンなど和の素材を取り入れています。素材をグループに分けて蒸溜し味わいを引き出すという、手間暇かけた京都の洋酒。ここはそれを体現した空間として造りました」
そう語るのは「季の美House」のマネージャー、佐久間雅志さん。ロンドンで10年間バーテンダーを務めた経験があり、国内外から訪れる人びとに、丁寧かつ気さくにジンの魅力を説 いてくれる。2階にはジンの歴 史や種類、製造工程を学べる展示コーナーやセミナールームもあり、ジンを飲まない人も楽しめる工夫が施されている。田村さんも「京都の人びとと国内外からの観光客をつなぐ場、京都の素材や職人の仕事を感じられる場として、地域に根付いてほしい」と期待を寄せた。
施設情報
季の美 House(The House of KI NO BI)住所:京都府京都市中京区河原町通二条上る清水町358
Tel:075-255-2612 定休日:月曜
https://kyotodistillery.jp/house_kinobi/
地域のつながりをいかし
新たなつながりを創る
南北に広がる京都市で、最後に訪れたのは市の中心地から北へクルマで1時間ほど離れた右京区京北エリア。自然豊かな里山で、近年、国内外から作家や音楽家などの移住者も増えている。この移住の流れが生まれた一端に2018年から開催されているイベント「ツクル森」がある。いわゆる地域のお祭りだが、アートやクラフト、地場産のオーガニックフードや野外音楽ステージ、ヨガや手作りワークショップなど実に多彩だ。
「出展者や地域のつながりを大切にするために出展は紹介制です。運営も誰かが指示するのではなく、みんなが自発的に行動するティール組織で、新たな交流も創作も自然と広がっています」
と語るのは、ツクル森実行委員会の理事代表・曽緋蘭さん。曽さんも移住者で、京北で居住する茅葺き屋根の家で個人的にイベントを開くうちに地域の人と仲よくなり、ツクル森の立ち上げに声がかかったという。
「京北には林業従事者が多くて、イベントに使いやすい端材などの資材が豊富です。そしてその資材で創作したい人も多い。イベント場所などに最適な広大な 森の原っぱもあるので、こうした地域資源を上手にいかしながら、地域経済を回すお祭りに成長しています」と曽さん。それを受けて田村さんも「暮らしの場の延長にある創造の場づくりは、魅力ある活動です。僕も移住したくなりそう」と笑った。
施設情報
ツクル森実行委員会 事務局住所:京都府京都市右京区京北下中町鳥谷2(あうる京北<京都府立ゼミナールハウス>)
Tel:075-854-0216(あうる京北<京都府立ゼミナールハウス>)
https://www.tsukurumori.com/