NEXT WORLD HERITAGE旅の人気スポットを先取り
今“NEXT世界遺産”が熱い!
写真AC
悠久の歴史的価値を伝える遺跡、文化的背景を残す建造物、そして悠久の歴史的価値を伝える遺跡――。人類全体にとって共通した重要性を持ち、知的好奇心を刺激してくれる「世界遺産」は、いつの時代も国籍を超えて多くの人を惹きつける旅の人気スポットです。そこで今回、その基礎知識から日本の世界遺産の現状、そして、未来に登録が期待される、先取りしたい「NEXT世界遺産」の魅力を紹介します。
世界遺産の基礎知識
世界遺産の魅力とは
世界遺産とは、1972年の第17回ユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づくもの。地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から現在、そして未来へと伝えていかなければならない人類共通の遺産です。
その希少価値は言わずもがな、もっとも大きな魅力は、知られざる世界の多様性が学べること。国内外には自分たちが普段暮らしていて出合うことのない文化や歴史が数多あります。世界遺産を通じてそういった未踏の世界にアクセスすることは、人生経験を豊かにしてくれます。
世界遺産に登録されるまで
世界遺産はまず、前述した世界遺産条約を締約した国それぞれの世界遺産候補物件リストである「暫定一覧表」に記載されなければなりません。そのなかから条件が整ったものをUNESCOに推薦し、21カ国の委員国で構成される世界遺産委員会が、専門機関からの調査報告書をもとに審議・決議し、登録が決定します。
その種類は、建造物や遺跡などの「文化遺産」、自然地域などの「自然遺産」、文化と自然の両方の要素を兼ね備えた「複合遺産」の3種類。現在、世界には文化遺産が897件、自然遺産が218件、複合遺産が39件の計1154件の世界遺産が存在します。
日本の世界遺産の現状
日本における世界遺産は、1993年に「法隆寺地域の仏教建造物」「姫路城」の2件が文化遺産として、また「屋久島」「白神山地」の2件が自然遺産として初めて登録されました。それ以来、順調に数を増やし、2020年の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」と「北海道・北東北の縄文遺跡群」まで25件が登録されています。その数はアジアにおいて中国、インドに次ぎ3番目に多く、世界では第11位。それらは、変化に富む四季がつくり出す絶景や自然と共生するための配慮が施された建造物など、日本の歴史と精神文化、そして美しさを再発見できる魅力に満ちています。
日本で登録が期待される
5つの“NEXT世界遺産”
現在、日本で世界遺産の暫定一覧表に掲載されているのは5件。登録後、多くの旅人で混み合う前にそれぞれの見どころチェックし、足を運んでみましょう。
「金を中心とする佐渡鉱山の遺跡群」(新潟県)
佐渡鉱山の遺跡群は、2022年2月に世界遺産へ推薦することが閣議了解され、話題となりました。338年の歴史の中で金78トン、銀2330トンという産出量は日本最大級。西三川砂金山と相川金銀山(史跡 佐渡金山)、鶴子銀山の3つの鉱山で構成される金銀山には、江戸幕府の天領として奉行所が置かれ、伝統的な手工業で高純度金を生み出す生産技術と、高度に専門化された世界でも類を見ない大規模な生産体制が整備され、日本の近代化に大きく貢献しました。
「史跡 佐渡金山」一帯にある江戸時代に開発された手掘り坑道の一部を探検する「宗太夫坑 江戸金山絵巻コース」や山の頂上から手掘りした佐渡鉱山のシンボル「道遊の割戸」、古代遺跡のような東洋一の浮遊選鉱場「北沢浮遊選鉱場」など、当時の姿を残した遺跡群がその偉業を伝えています。
[DATA]
成立時期:16世紀半ば
所在地:新潟県佐渡市下相川1305(史跡 佐渡金山)など
アクセス:両津港から車で約50分(史跡 佐渡金山)
駐車場:500台
彦根城(滋賀県)
滋賀県のシンボルであり、日本を代表する名城のひとつ。荘厳な天守だけでなく、二重の堀に囲まれた全体構造と、藩主の住まいである表御殿や重臣の屋敷跡、和歌や茶の湯、武芸を実践した雅やかな大名庭園など、江戸時代の秩序ある社会をつくるための機能が一体化し、それらが優れた状態で保存されていることに大きな価値があります。
大きな飾り屋根や多彩な意匠で変化に富んだ美しい姿を残す国宝の天守や若き井伊直弼が文武の修練に精進した「埋木舎」、国指定名勝の大名庭園など江戸の美景を巡り、往時に思いを馳せてはいかがでしょうか。
[DATA]
成立時期:1604年
所在地:滋賀県彦根市金亀町1-1
アクセス:彦根ICから約15分
駐車場:295台
飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群(奈良県)
奈良県東部にある宮殿や寺の跡地、古墳など20カ所で構成される史跡の総称。崇峻天皇5年(592)の推古天皇の即位から和銅3年(710)に平城京へ遷都するまでの間、飛鳥の地に営まれた宮都の関連遺跡群には、現在に至るまでの1300余年続く「日本国」誕生の記憶が刻まれています。30数個の巨岩を積み上げられて造られた日本最大規模の石室古墳「石舞台古墳」や後の都の建築に大きく影響を与え、現在は四季折々の花が咲き誇る「藤原宮跡」、聖徳太子が建立した7つの寺のひとつ「橘寺」などが人気です。
[DATA]
成立時期:592年
所在地:奈良県高市郡明日香村島庄254(石舞台古墳)
アクセス:(大阪方面から)葛城JCTから約30分
駐車場:150台
「古都鎌倉の寺院・寺社ほか」(神奈川県)
鎌倉幕府は1192年に日本初とされる全国的武家政権を樹立しました。その武家文化を忍ばせる寺社、寺院跡、武家館跡などの文化財が、三方を山に囲まれ一方が海に開く要害的地形と一体となって残されていることに歴史的価値があります。中でも、中世の卓越した鋳造技術と造形美を力強く今に伝える「鎌倉大仏」をはじめ、鎌倉幕府滅亡後も武門の守護神として手厚く保護された「鶴岡八幡宮」、日本に禅宗が定着する契機をなした最も重要な寺院「円覚寺」など、その後の日本文化に大きく影響を与えた武家社会を象徴するスポットは、普遍的な輝きを放っています。
[DATA]
成立時期:1192年
所在地:神奈川県鎌倉市雪ノ下2-1-31(鶴岡八幡宮)
アクセス:朝比奈ICから約15分
駐車場:40台
「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―(拡張)」(岩手県)
平泉は、12世紀に奥州藤原氏が武力ばかりに頼ることなく、仏教に基づく理想世界である「浄土世界」の実現を目指した政治・行政上の拠点です。2011年、その仏国土を独自に表現した文化遺産として中尊寺や毛越寺などの5カ所が世界遺産として登録されました。現在、108体の毘沙門天が祀られている「達谷窟」や平泉の政治、経済、文化の中心的施設である平泉館の跡地「柳之御所遺跡」など5カ所の重要な遺跡群が拡張遺産としての登録を目指しています。
[DATA]
成立時期:12世紀頃
所在地:岩手県西磐井郡平泉町平泉北沢16(達谷窟)
アクセス:一関ICから約10分
駐車場:40台
より理解を深める「世界遺産検定」に挑戦!
世界遺産検定とは、人類共通の財産・宝物である世界遺産を通じて、国際的な教養を身につけ、持続可能な社会の発展に寄与する人材の育成を目指した検定。年に4回開催され、4級からマイスターまで難易度別に5段階あり、2006年に始まって以来、19万人が認定されています。思わず人に話したくなるトリビアから学校や自治体での講演ができる高度な専門的知識まで、生涯学習として幅広い世代に親しまれているので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
●世界遺産検定
https://www.sekaken.jp