Favorites of Shotaro Ikenami Spot池波正太郎生誕100年。
“まんぞくまんぞく”なドライブ&グルメを巡る
制作協力:https://ikenami.info/

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2023年は日本を代表する時代小説・時代小説家、池波正太郎の生誕100周年。日本各地で様々な記念イベントが開催されています。そこで、レジャーに最適なこの時期にドライブとともに楽しみたい文豪ゆかりのスポットから、あの作品に登場した美食店、代表作を再現したユニークな施設までご紹介します。

写真:Kodansha/アフロ

時代を超える池波正太郎の魅力とは

池波正太郎は大正12年、現在の台東区浅草で生を受けました。幼少期を上野・浅草で過ごし、戦後に入り都職員を経て劇作家としてデビュー。昭和35年に「錯乱」で第43回直木賞を受賞し、その後「鬼平犯科帳」「仕掛人・藤枝梅安」「剣客商売」の3大シリーズで時代小説の第一人者になります。昭和52年には吉川英治文学賞を受賞するなど評価や人気がゆるぎないなか、平成2年に急性白血病で永眠するまで3285作品を残しました。

「鬼平犯科帳」(文春文庫)と「剣客商売」(新潮文庫)は今なお読み継がれる名作

現在も映画やドラマ、コミックなどのさまざまな作品の原作として選ばれ、多くの人を惹きつけてやまない池波作品の大きな魅力は、“人の業”を深く描いていること。たとえば「仕掛人・藤枝梅安」は、鍼医者を表稼業で営みながら実は仕掛人として暗躍する善悪の矛盾を問い、「剣客商売」では、軽妙洒脱に生きる老剣客と堅物息子の対象的な剣客父子の活躍を描くなど、粋で細やかな人間描写のなかに「人間とは?」という普遍的なテーマが根底に流れています。

浅草の仏教寺院、待乳山聖天近くには池波正太郎生誕地碑がある

池波正太郎は生粋の下町江戸っ子。「私の故郷は誰がなんと言っても浅草と上野なのである」と語っている台東区の区立図書館では今年1月から毎月、直木賞作家による講演会や文藝評論家による講座をはじめ、区内のゆかりの地を巡るスタンプラリー、名作に登場した区内各所に江戸時代の「高札」を設置し、作中の背景を通じて地域を紹介するなどさまざまな記念事業が開催されています。

食通が愛したグルメ

また池波正太郎は、文人屈指の食道楽としても名高く、時代小説シリーズのなかにも数々の江戸料理を堪能するシーンが描かれているほか、食に関する随筆も多く書き下ろしています。多種多様なグルメ情報があふれる現代でも「池波正太郎が愛した名店」を訪れるファンは後を絶ちません。そのなかでも、ご贔屓にしていたのが明治17年創業の老舗蕎麦店「神田まつや」です。

「神田まつや」の建物は東京都の歴史的建造物に選定されている

関東大震災後に建てられた歴史的な建物で楽しめるのは、昔ながらの江戸前蕎麦。茨城県や北海道、青森、長野など名産地から厳選した石臼挽きの「挽きぐるみ」のそば粉を使用し、職人が手打ち、茹でたてで仕立てる蕎麦は、まさに伝統の味。池波正太郎は足繁く通い、昭和初期の食の思い出を綴ったエッセイ「むかしの味」では「出すものはなんでもうまい。それでいて、蕎麦屋の本道を踏み外していない」と賞賛しています。

いつも昼時を避けた午後遅めの時刻に訪れ、日本酒とともにそばがきやもりそばを注文し、ときには蕎麦好きの間で邪道とされていたカレー南蛮も味わっていたとか。

現代に継承された江戸の味を求め遠方から訪れるファンも多い

また、同作で「豚肉にコロモとパン粉をつけ、油で揚げたポークカツレツは、子供の頃の私たちにとって最大の御馳走だった」と述懐していた池波正太郎が愛してやまなかったとんかつが「分厚い最上のロース肉をじっくり揚げる」上野の老舗洋食店「ぽん多本家」です。

上質な豚ロースの芯の赤味部分のみを使用した名物のカツレツは創業時より変わらない味が魅力

創業は明治38年。宮内庁の料理人だった初代、島田信二郎氏がミラノ風カツレツをアレンジし、天麩羅式に揚げた料理は“日本のカツレツの元祖”といわれています。4代目が暖簾を守る現在も、確かな目利きでその時期にベストな豚肉を厳選し、切り落とした脂身で自家製ラードを作り、低温からじっくり揚げる美味は確かに受け継がれています。

ドライブとともに楽しむ文豪ゆかりのスポット

また、池波正太郎ゆかりのスポットは全国各地に存在します。そのなかでもドライブとともに楽しみたいのが長野県の城下町、上田市にある「池波正太郎真田太平記館」です。

池波正太郎は真田氏を題材とした時代小説を執筆するにあたって上田市へ幾度となく通った。「池波正太郎真田太平記館」はそのゆかりをもとに開館

『真田太平記』は、名将真田昌幸・信之(幸)、幸村父子の活躍をテーマに「週刊朝日」(朝日新聞出版)で9年に渡って連載された池波正太郎の代表作のひとつ。池波正太郎真田太平記館2階・常設展示の「真田太平記コーナー」では、執筆時の取材ノートや真田太平記の舞台となった場所のジオラマなど貴重な展示で作品の魅力を紹介。さらに「池波正太郎コーナー」では、書斎の様子や遺愛品なども展示しています。

本館2階の「池波正太郎コーナー」。館内では書籍やグッズの販売や喫茶コーナーも併設

2023年6月18日まで、上田が登場する作品を軸に、池波正太郎ゆかりの店や場所、エピソードなどを関連資料とともに展示する企画展「池波正太郎の愛したまち上田」を開催。かつて徳川の軍勢を二度にわたって退けた上田城跡や信州最古の温泉と伝わる別所温泉など、周辺に観光スポットも多数あるので、ぜひ訪れてみてください。

さらに、ユニークなのが埼玉県の「羽生PA(上り線)」にある「鬼平江戸処」。こちらは池波正太郎の金字塔的作品「鬼平犯科帳」の世界観を再現した施設です。

忠実に再現された江戸時代の街並み

かつてこの界隈には栗橋関所があり、江戸の入口として多くの人で賑わっていました。そのすぐ近くに位置する羽生PAを江戸の入口に見立て、鬼平が活躍した文化・文政期を再現した街並みを始め、江戸をテーマにしたグルメ、週末には独特の口上が楽しい大道芸などテーマパークのように「鬼平犯科帳」の江戸情緒が体感できます。

新緑から初夏に入るこの時期は絶好のドライブシーズン。世紀の文豪に思いを馳せながら、知的好奇心をくすぐる旅を満喫してはいかがでしょうか。

【関連リンク】

●台東区立図書館

https://www.city.taito.lg.jp/library/index.html

●神田まつや本店

東京都千代田区神田須田町1-13
電話番号:03-3251-1556
営業時間:11:00~20:30(L.O.20:00)、土・祝~19:30(L.O.19:00)
定休日:日曜
駐車場:なし
http://www.kanda-matsuya.jp

●ぽん多本家

東京都台東区上野3-23-3
電話番号:050-5492-8353
営業時間:
火-日曜・祝前日・祝日 ランチ11:00~13:45(L.O.)
火-土曜・祝前日 ディナー16:30~19:45(L.O.)
日曜・祝日 ディナー16:00~19:45(L.O.)
定休日:月曜(祝日の場合は営業、翌火曜休み)
駐車場:なし
https://g608200.gorp.jp

●池波正太郎真田太平記館

長野県上田市中央3-7-3
電話番号:0268-28-7100
開館時間:10:00~18:00(最終入館17:30)
定休日:水曜(振替休館日はHP参照)
駐車場:なし
https://www.city.ueda.nagano.jp/site/ikenami/

●羽生PA(上り線)

埼玉県羽生市弥勒字五軒1686
電話番号:048-566-1215
営業時間:9:00~17:00(鬼平江戸処)
駐車場:267台(無料)
https://www.driveplaza.com/special/onihei/

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