Green Tourismローカルの豊かな魅力を五感で満喫!
“グリーン・ツーリズム”体験[後編]

Travel

1970年代よりヨーロッパで流行し、現在日本でも新しい旅のスタイルとして注目を集めている“グリーンツーリズム”。日本で呼ばれている「農泊」の文字通り、地方に滞在し、地元に根付いた農漁業や郷土料理作りを体験しながらローカルの人々と交流するその魅力や文化的側面を前編で紹介しました。
後編では、全国各地に広がる農泊支援エリアの中から、国内外からのトラベラーに人気を博している徳島県の知られざる秘境、祖谷(いや)地方で郷土料理つくりや農業体験、大自然ならではのアクティビティ、そして“懐かしくて新しい”歴史薫る古民家滞在の魅力に迫ります。

太古の日本が根付く“日本三大秘境”

徳島県の北西部に位置する「にし阿波」の祖谷地方は“日本三大秘境”のひとつ。険しい四国山脈に囲まれた渓谷には、かつて源平合戦に敗北した平家の落人(おちうど)が隠れ住んだという伝説が伝わり、手つかずの大自然が今も残ることから“日本のチベット”とも呼ばれています。このエリアでは、古くは江戸時代から続くトラディショナルな古民家が点在し、400年以上にわたって継承されてきた伝統農法や山村景観、食文化をうみだす「傾斜地農耕システム」は、世界農業遺産に認定されました。

平家の落人が隠れ住んだと伝わる東祖谷の落合集落。国の重要伝統的建造物群保存地域にも選ばれている。

1970年代にこの地を訪れた東洋文化研究家であり作家のアレックスカー氏は、現代に残る桃源郷に魅了され、東祖谷エリアの古民家を購入。地元の人々と交流しながら、長い期間をかけて茅葺き屋根などを改修し、2012年に古民家ステイが楽しめる一軒家ヴィラ[篪庵(ちいおり)]をオープン。さらに、落合集落にも8棟の趣の異なる古民家宿泊施設からなる[桃源郷祖谷の山里]のプロデュースを行政の依頼より手がけ、祖谷地方のグリーン・ツーリズムの礎をつくりました。

訪日外国人からも人気が高い[篪庵] 画像提供:ちいおりアライアンス

グリーン・ツーリズムの稀少な郷土料理体験

旅の大きな楽しみのひとつである食は、グリーンツーリズムや農泊ではローカルならではの郷土料理を「つくる」ところから味わえます。たとえば祖谷地方では、通常の豆腐の倍以上の大きさと歯ごたえが際立った「岩豆腐」や、蕎麦の実と野菜を出汁で煮た「蕎麦米雑炊」、瑞々しく大ぶりな「祖谷こんにゃく」など地域に根付いた特産品があり、地元のスーパーで手に入ります。宿泊施設に着く前に手に入れ、家族や仲間とわいわい楽しみながら自炊する料理は美味しさもひとしお。たとえば地味噌で地産食材を煮込むだけの簡単な鍋料理でも皆でつくって食べるという時間がかけがえのないごちそうに変えてくれます。

郷土料理とともに地酒も楽しみたい。

施設によっては、ケータリングサービスや地元で暮らすお母さんたちに教えてもらいながら夕食をつくる郷土料理体験、本格的な道具を使用した蕎麦打ちなど様々なオプションがあるので、出かける前にチェックしたいところ。さらに、実際の農家に宿泊するプランでは、春は山菜採りや野菜の種植え、初夏にはお茶摘み、秋には新米の収穫などゲストのリクエストによって、その地にしかない農業文化体験ができます。

左:[篪庵]のケータリングの一例(要予約)。右:地元の人たちと交流しながら作る郷土料理には新しい発見がある(※[桃源郷祖谷の山里]では、2021年5月現在、郷土料理作り体験は休止中) 画像提供:ちいおりアライアンス

大自然を体感するアクティビティ

また、大自然ならではのアクティビティや景勝地が満喫できるのもグリーン・ツーリズムの楽しさです。祖谷地方では、14メートルの高さにかけられ、隙間の空いた割木を渡るスリリングな体験ができる国指定重要有形民俗文化財の[祖谷のかずら橋]をはじめ、2億年前に形成された大歩危(おおぼけ)峡のダイナミックな美景をゆったり下る遊覧船、雄大な山々の幻想的な絶景が鑑賞できる雲海ツアー、四季折々の景色を堪能できる秘境温泉など、五感を刺激するアクティビティが充実しています。

[祖谷のかずら橋]はまさに野山のダイナミックなアトラクション。
往復約30分のショートトリップが楽しめる大歩危峡観光遊覧船。

“懐かしくて新しい”現代的古民家ステイを満喫

そして、その地域ならではの風土や文化が宿された建築に宿泊できる古民家滞在も都市部ではできないエクスペリエンス。たとえば[篪庵]では、ノスタルジックな茅葺き屋根の佇まいもさることながら、屋内は現代の日本家屋にはない開放的な空間が広がっています。これは、かつて特産品だった葉たばこを乾燥させるために梁で吊していた風習があり、天井をつくっていなかったこと名残り。居間には趣深い囲炉裏があり、調理や防寒で一年中使われていたので、太い柱や梁、屋根裏まで漆黒に光り、荘厳な雰囲気を漂わせています。

居間がふたつ続いている[篪庵]は、仕切りがないので開放感にあふれている。画像提供:ちいおりアライアンス

そういった歴史的な建築に包まれながら、その趣を損なわないように現代的なファシリティを備えているのも魅力。[篪庵]や[桃源郷祖谷の山里]の古民家施設では、IHクッキングヒーターや冷蔵庫、オーブンレンジ、調理器具など一式が揃ったキッチンをはじめ、バスルーム、リネン、床暖房などラグジュアリーホテル並みの近代的な機能で快適に宿泊できます。

使い勝手のいいキッチンにはダイニングテーブルも。画像提供:ちいおりアライアンス

また、古民家ヴィラは一棟貸しスタイルなので、基本的に家族以外と接触することがありません。建物同士の距離が離れている地方にあることが多いので、自然とソーシャルディスタンスが保たれているのもうれしいところ。自然の声以外なにひとつ物音がしない環境の中、家族みんなで囲炉裏を囲みながら寛ぎ、縁側に出て夜空を見上げれば煌々と輝く無数の星の絶景――。素朴な大自然と一体化し“なにもしない”という贅沢な時間は、都市部の箱形ホテルでは体感できません。

梅雨が明け、清々しい夏の風が吹きはじめるこの時期に、グリーン・ツーリズムでかけがえのない思い出づくりの旅を楽しんではいかでしょうか。

【取材協力】

ちいおりアライアンス

http://chiiori.org
[篪庵][桃源郷祖谷の山里]の宿泊に関する問い合わせ
TEL:0883-88-5290
(受付時間:10:00〜17:00)

2021 Autumn

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