全国で3,000以上もの温泉地がある温泉王国、日本。
その中から、クルマでなければ行きづらい名湯・秘湯をご紹介します。

2015年10月記
クルマで行く名湯・秘湯【第1回】 鹿児島県霧島温泉郷

維新の志士たちを思いながら湯めぐりを

文/写真・山崎まゆみ(温泉エッセイスト)

鹿児島県霧島エリアは名湯や秘湯の宝庫です。ちょうど昨年の今頃、霧島で湯めぐりをしていましたが、1日14回も湯へ。驚くことなかれ。それは場所が霧島温泉郷であること…

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鹿児島県霧島エリアは名湯や秘湯の宝庫です。

ちょうど昨年の今頃、霧島で湯めぐりをしていましたが、1日14回も湯へ。驚くことなかれ。それは場所が霧島温泉郷であること、さらにドライブだったからこそできた業なのです。

鹿児島と言えば、維新の志士たちが話題になりますが、湯どころの霧島では志士たちも温泉を愉しんだようです。

寺田屋襲撃によって傷を負った坂本龍馬は薩摩藩にかくまわれ、西郷隆盛の勧めもあり霧島の温泉に向かいます。日当山(ひなたやま)温泉や塩浸(しおびたし)温泉、硫黄谷温泉、栄之尾(えいのお)温泉を楽しんだといわれます。霧島山に登り、その前後の合計18日間も塩浸温泉に逗留して傷を癒したそうで、龍馬が入浴したとされる塩浸温泉は今も遺構として残っており、外からでも見学することができます。

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現在、塩浸温泉は共同浴場で湯をいただけます。浴場に入るとつんと金気臭が鼻をつき、赤茶けた色と鶯色をたしたような色彩の湯。湯船はこれら湯花がびっしりとこびりつき褐色に変化しています。肌触りはねっとりとした感じで、舐めるとその名の通りに塩っ辛い。3分も入れば汗がどくどく出てくる程の濃厚な温まり温泉です。温まり成分でもあり、殺菌効果も期待できるナトリウム成分が、きっと龍馬の傷を治したのだと思います。

また、薩摩藩家老の小松帯刀は病弱で、度々、栄之尾温泉に逗留し、その際に、龍馬が見舞ったとの記述が残っています。小松帯刀と龍馬が湯を共にし、語らいの場をもったであろう湯船が今も残っています。霧島いわさきホテルの敷地内にある浴槽の遺構です。今では、すっかり木々が茂り、錦江湾が見えなくなっていますが、当時の絵図には浴槽から桜島をはじめとする錦江湾が一望できたという記述が残っています。

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この風呂で追体験はできませんが、源泉はいまも同じものを使用しているので、森の中の野天湯「緑渓湯苑」で、同じ湯をいただけます。湯は硫黄泉。すぱっと肌から湯が離れていく感じの清涼感が魅力です。ちなみに、こちらには先のNHK大河ドラマ「龍馬伝」で龍馬役の福山雅治さんが入浴した湯船もあります。

また、霧島初の露天風呂と言われている旅行人山荘の「赤松の湯」、さらには、霧島湯之谷山荘の湯、新湯温泉の霧島新燃荘の湯はやはり入るべき湯です。

コラム原稿は2015年10月現在の情報を元に執筆しています。

やまざき まゆみ◎1970年新潟県生まれ。駒澤大学文学部卒業。世界31カ国1,000カ所以上の温泉を訪ねる一方、日本の温泉の魅力を世界に発信している。近著に『バリアフリー温泉で家族旅行』がある。