「写真をもっと上手く撮りたい」……。日々切磋琢磨する写真愛好家へ、
Harmonyで活躍中のカメラマンが実践的なテクニックを指南します。

Harmony 2015年12月
本格派のための写真講座

イルミネーションをきれいに撮るには?

文/写真・坂本道浩

第1回は冬の風物詩、イルミネーションを美しく撮るコツ。今回はイルミネーションを主役にした写真と、イルミネーションの丸ボケを引き立て役に利用したクローズアップ写真の2通りの撮影方法をご紹介します。時間帯は、薄暮のタイミングを狙います。重要なポイントは「露出」と「ホワイトバランス」です。

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「Photograph(写真)」。直訳は「光画」で、カメラのレンズを通して光の陰影を記録、保存したものが写真です。今はスマホで誰でも上手に撮影できる時代ですが、「光の特性」「レンズと感材(フィルムやセンサー)の相関性」を知ると、さらに美しい写真に仕上がります。このコーナーでは、オートでなくマニュアルモードを駆使して、今までより「ひと味違う」作品撮りを目指します。カメラの種類はシャッター速度、絞りを設定できるデジタル一眼やミラーレス一眼、コンデジの使用をおすすめします。毎回ひとつのテーマを決め、美しく撮るための機能設定やちょっとした工夫、撮影マナーなど、自身の撮影現場での体験もふまえてご紹介していきます。

準備

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    ISO感度を高感度設定にすれば手持ちも可能ですが、ここでは三脚を使用し、ISO200〜400でじっくりと撮影に臨みます。用意するものは、
  • 三脚、レリーズ(リモートシャッター、なければセルフタイマーでも可)
  • LEDの小型ライトやスマホの照明具(暗闇の手元を照らすのに便利)
  • 水準器(シューにはめ込む小型のものが便利、またカメラ内蔵型デジタルタイプもあり)

Step1:遠景撮影

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日はあっという間に暮れてしまいます。薄暮撮影の際は、テスト撮影や準備を含めた下見(ロケーションハンティング)のために余裕を持って明るい時間帯に到着します。そして、太陽が沈む方向(スマホの方位計機能などを使って)やライトの点灯を想定してベストポジションを探します。人気の撮影スポットでは、“ベスポジ”はすでに先客で占められていることが多々あります。私自身もよく遭遇する場面ですが、こういう時は挨拶をするようにしています。そうすると場がなごみ、先客さん達は耳寄りな情報を教えてくださったりするものです。また、三脚の先端に反射テープなどを貼っておくと暗い場所での目印として便利。他の方への配慮にもなります。

水準器を用いて構図を決めたらホワイトバランスを設定します。薄暮の空はオート設定に適しておらず、見たままの色はでません。今回撮影した場所はイルミネーション光源の発色が電球光色に近似していたため、さらに薄暮の濃い青を強調する電球光色モードを選択。できれば太陽光モードや蛍光灯モードも試し、最適なモードを見つけましょう。レンズは標準ズームか単焦点標準レンズを選び、フラッシュは光らない設定に。絞りはシャープに表現できるf8前後がおすすめです。

次にテスト撮影をしながら適正露出を決めます。基本、ひとつの構図につき露出計の適正値、2/3絞オーバー、2/3絞りアンダーの3パターン撮影しましょう。まず、メイン被写体となるイルミネーションの適切な露出を探します。カメラ内蔵露出計は、発光するライトなどが構図の中にある場合、適正値のまま撮影するとアンダー気味に写ることがあります。今回は2/3絞りオーバーに撮影した写真が適正に表現されていました。機種によってはAEB*を使用しても便利です。

レリーズがない場合は、セルフタイマーモード(2〜3秒後の撮影モード)に設定。お手持ちのカメラにミラーアップ機能が付いている場合、これを使うとカメラブレが減少します。これで準備は万全です。薄暮での撮影プライムタイムは日没前後20分ぐらい。時間との闘いになりますので、心静かにその時を待ちましょう。

*AEB Auto Exposure Bracketing 任意の設定で自動的にマイナス補正、プラス補正、標準露出を撮影できる機能

【露光の比較】

【ホワイトバランスの比較】

【イルミネーション(点光源)の見え方】

Step2:クローズアップ撮影

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次は、後ろぼけを活用した奥行き感のある夜景撮影にチャレンジしてみましょう。数々の光の重なりが大変きれいなので、これらを上手に構図に取り入れると、バリエーションのある夜景が撮影できます。焦点を合わせた箇所がこの写真の主題となり、後ろぼけは主題を引き立たたせてくれます。

レンズは単焦点標準レンズや標準ズームで、なるべく明るいものを。絞りは開放値にし、主題は大きめにクローズアップ撮影するほど丸ぼけが大きくなり、より効果的に作画できます。

この表現方法は開放値で撮影を行うので、感度を上げて手持ち撮影することも可能ですが、撮影後の処理でノイズを減少させる必要があるでしょう。手持ち撮影は圧倒的に現場でのフットワークがよくなりますが手ぶれのリスクが増えます。近くに柱や壁がある場合はそれを利用し、同行者がいる場合は肩を借りるなどして、カメラをしっかり固定させましょう。

今回のキーワード「ホワイトバランス」

人間の目の記憶はとても優れ、どのような光でも、ある程度脳が「白」という色を的確に再現してくれます。ところが、カメラは撮影のたびに光源の色を設定してあげないと、白い雲が青や黄色に撮影されてしまうのです。光源の色を設定し、適正に調整する機能がホワイトバランスです。最近のデジタルカメラのオート設定での精度は大変上がっています。しかし光源によっては補正過多になる場合もあり、万能ではありません。そんな時、カスタマイズ設定が適切に行えるよう少しだけ光源の色についての基礎知識を覚えておくと便利です(上の作例3〜6を参照)。そこで、光源の色を温度にたとえて数値化した「色温度」を知っておくと便利です(下図)。

ホワイトバランスのマニュアル設定を撮影する光源に合わせて設定してみましょう。通常はオートを含めて5つのモードで事足ります。Raw現像を行う場合は撮影時に厳密に設定する必要はなく、現像時に色調整できます。現場撮影時の注意事項がひとつ減るのでその分構図決めなどに集中できます。

さかもと みちひろ◎東京都生まれ。写真家。広告、エディトリアル、企業PR誌等で臨場感のある旅取材撮影を得意とし、これまで30数カ国に渡航。情感を捉えた写真に定評がある。