気になるトヨタ車これが“ランクル”の最前線!
ランドクルーザー“250”
文/国沢光宏 写真/トヨタ自動車、奥隅圭之
2021年にデビューしたランドクルーザー“300”。その弟分であるランドクルーザー“250”が満を持して登場した。原点回帰を掲げてゼロから開発されたというグローバル・オフローダーの実力とは?
優れたサバイバル能力で万一のときにも活躍!
2050年のカーボンニュートラルに向け、エンジンだけで走るクルマは急速に減っていく。世界規模で見ると、すでに新規のエンジン開発を止めてしまった自動車メーカーが大半といった状況だ。そんなことから「エンジン車に乗っておきたい」という人も増えている。現時点で考えるとエンジン車のメリットはたくさんある。なにより燃料さえ入れればどこまでも走って行けるのだ。
特に自然災害が増えている昨今を考えると、今回紹介するランドクルーザー(ランクル)“250”のような乗用車最強クラスの走破性能を持つクルマは魅力的。あえて水の中に入ることを推奨しているワケではないが、カタログに「最大渡河性能」という項目があり、なんと700mm! 悪路上等、どんなクルマより優れたサバイバル能力を持つ。車内に家族分の防災キットなどを積んでおけば心強い。何を隠そう私も最後のエンジン車として高性能スポーツモデルと、サバイバル性能を持つクルマの購入を考え、すでに前者は手に入れた。
ちなみにガソリンや軽油は、今のところ2049年末まで入手できることになっているため、今から買っても23年少々は乗り続けることができる。私が10年くらい乗り、6人いる孫の中にクルマ好きなど出てくれば引き継ぎたいと思っている。
閑話休題。今回の主役はランクル“250”だった。前身はランクル・プラドというモデルで、ランクル“300”より一回り小型だった。プラドのルーツを辿ると、メルセデスのゲレンデヴァーゲンや、Jeep、ランドローバーなどのようなヘビーデューティーな商用車として開発されたランクルの元祖「ヨンマル」になる。その後、ランクル“300”に至る大柄なボディ形状を持つ「ロクマル」が登場した。
したがって、ランクル“250”はヘビーデューティーを信条とする本家筋なのだった。今回、悪路性能を味わう機会がなかったが、限界を試そうとしたらハンパない。「こんな場所を走れるか?」と思えるほど大きな岩が転がっている場所や「こんな坂を上れるのか?」、はたまた「こんな深い水たまりは無理でしょ!」みたいな“挑戦”をしなくちゃダメ。少なくともそんなこと、気軽にはできるわけがない(笑)。
週末ドライブも楽しめる頼もしい相棒
今回、一番気になっていたのは、ランクル“250”を買ったら大半を過ごすだろう(私でいえば5%は雪道)舗装路での乗り味だったりする。本格的な悪路性能を持つクルマの多くが、舗装路での快適性を最優先していない。高速道路を走れば直進時のハンドルの手応えが少し曖昧だったり、カーブでハンドル切るとワンテンポ遅れたり。ブレーキのタッチだって乗用車と違う。
乗り心地はシャッキリと対極にある、いわゆる「ぶわぶわ」した感じ。大きいタイヤとか、ブッシュと呼ばれるゴムを多用したサスペンションや、「ラダーフレーム構造」というトラックのような鉄の骨組みを持つ車体からくるもの。もちろん「ラダーフレームの乗り味が大好き!」というこだわりを持つ人もいるけれど、私は“普通”を好む凡人だ。そんなことから、私の最後のエンジン車の有力候補であるランクル“250”の乗り味は大いに気になっていた次第。
参考までに書いておくとランクル“250”と基本的に同じシャシーを使うランクル“300”の場合、先代モデル(ランクル“200”)と比べ格段に普通になっていた。よくいえば伝統的な構造を持つランクル・プラドと乗り比べると、隔世の感があるほど。圧倒的にランクル“300”に軍配を上げたい。
ランクル“250”はランクル“300”より普通か、はたまた伝統的か? 走り出してすぐ「どちらでもありませんね!」と感じた。意外や意外! ランクル“300”に勝るとも劣らない快適性を持っていたのだった。
エンジンは、ランクル“300”のV型6気筒3300ccと比べれば物理的に勝てない4気筒2800ccであり、なめらかさで届かない。パワーだって300 は309 PS、250は204 PSだ。
でもランクル“250”だって必要にして十分なパワーを持つ。なにより乗り心地とハンドリングが素晴らしい! 世界中のクロスカントリータイプに試乗した経験を持つけれど、舗装路の快適性は世界トップクラス(人によって好みが違うためあえて世界一とせず)。特に、よくできた乗用車レベルのステアリングフィールが素晴らしい。高速道路もシャッキリしている。
ヘビーデューティーなクロカンモデルでは珍しくフル電動パワステを採用しており(ランクルでは初)、極悪路でも路面からハンドルに伝わるガツガツした入力がない。快適性でいえば運転席、リヤシートともに評価が高い。自然災害時の頼もしい相棒というベースを持ちながら、週末のドライブも快適に楽しめそう。私の最後のエンジン車候補として真剣に考えてしまっている。