気になるトヨタ車72年目の原点回帰。
ランドクルーザー250が目指すもの
文/片岡英明、写真/茂呂幸正、トヨタ自動車

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72年もの歴史を誇るランドクルーザーには、現在「ステーションワゴン」「ヘビーデューティ」「ライトデューティ」という3つの流れがある。その中のライトデューティの流れを受け継ぐニューモデル「ランドクルーザー250」が、8月に東京で世界初公開された。
誕生以来、ランクルが担ってきたのは「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」という使命。ランドクルーザー250は、はたしてその使命をどう体現したのか。ランクルの歴史を振り返りながら、その素性を探ってみよう。

トヨタが誇る真のグローバルカー

ランドクルーザーの72年の歴史を表す系統図。現在のランクルが3つの流れから成り立っていることが分かる

単一ブランドとしては、日本でもっとも長い歴史を誇る本格派のSUV、それがトヨタの「ランドクルーザー」だ。ファンからは「ランクル」と親しみを込めて呼ばれ、多くの国々のユーザーから愛されている。走破性能に強いこだわりを持つ4WDフリークや、プロの仕事人たちからの信頼も厚い。

世界でも類を見ない「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」がランドクルーザーである。現在は世界170カ国で販売され、累計生産台数は1,130万台だというから驚きだ。

ランクルの前身であるトヨタジープBJ型が誕生したのは、1951年8月1日だが、その誕生日から72年を経た2023年8月2日、新型ランドクルーザー「250」がベールを脱いだ。また、ファンの熱いラブコールに応え、名車ランドクルーザー「70」の日本再導入も同時に発表されている。

1951年に誕生したトヨタジープBJ型。1954年に車名を「ランドクルーザー」とし、現在までの長い歴史が始まった

トヨタが情熱を注いで開発したジープBJは、富士山の六合目までの過酷な登坂試験に成功するなど、クロスカントリー4WDとして非凡な能力を発揮した。だが、商標の関係で名前が使えなくなったので新しい車名を検討し、1954年6月に決まったのが、陸の巡洋艦を意味するランドクルーザー(LAND CRUISER)だ。

55年夏に登場した2代目の20系は、北米を中心に輸出も開始され、59年には初のワゴンも送り出した。車体の生産工場を増やしたために30系を名乗り、60年1月には40系にバトンタッチしている。

この40系は「ヨンマル」という愛称で呼ばれ、伝説を築く。悪路の走破性能を大幅に高め、積極的にバリエーションも増やした。多様なニーズに対応できるようになった40系ランクルは、24年の長きにわたって第一線で活躍し、新しいファン層を獲得することにも成功する。

ヘビーデューティ系からステーションワゴンが分離

1967年に40系からステーションワゴンの50系が分離する。現在のランドクルーザー300の源流となる

いっぽうキャビンの広さと荷物の積みやすさにこだわった4ドアのステーションワゴンは、1967年夏にFJ55Vにバトンタッチした。北米向けが多かったこともあり、安全装備を充実させ、排ガス対策にも力を注いでいる。

この4ドアロングボディ、ステーションワゴン系の後継モデルが、1980年夏にデザインを一新し、居住性と快適性を向上させた60系ランクルだ。ランクルのフラッグシップとしての立ち位置を明確にした60系ランクルは、プレミアムSUVの扉を開き、海外を中心にヒット作となった。

これに続く80系ランクルは、元号が平成に変わった1989年12月に発売を開始する。快適性を高めたワゴンの駆動方式は、時代の一歩先を行くフルタイム4WDだ。その後も80系ランクルの革新は続き、パワーユニットや安全装備を積極的に刷新した。1998年1月、ランクルのロングボディはモデルチェンジして100系へと発展する。ワゴンが搭載したのは、4.7LのV型8気筒DOHCだ。

1998年にデビューしたステーションワゴン系のランドクルーザー100。高い走破性とともに豪華さも身に着けた

世界中にファンを広げた100系ランクルは2007年夏に200系に主役の座を譲っている。卓越した走破性能と快適な乗り心地に磨きをかけた200系ランクルは2019年に、累計生産1000万台の金字塔も打ち立てている。

14年にわたって第一線で活躍した200系ランクルがモデルチェンジするのは2021年だ。300系を名乗り、時代に合わせてパワーユニットをダウンサイジングするなど、時代に見合った進化を遂げている。

70系の分岐によってライトデューティ系が誕生

1984年に登場したランドクルーザー70系バン。小改良を経ながら現在まで生産が続く超ロングセラーモデル

一方、時計を巻き戻すと、機動性の高いヘビーデューティSUVの40系は、さらに過酷な環境を求めて精進する道を選んだ。タフな40系の後継として1984年秋にバトンを託されたのが、のちに名車として語り継がれる70系ランクルである。

ストレート基調の力強いデザインを採用し、ピックアップを用意するなど、バリエーションも豊富だ。サスペンションは前後ともリーフスプリングによるリジッドアクスルにこだわった。日本では2004年に惜しまれつつ販売を終了している。だが、生誕30年の節目となる2014年に、期間限定でバンとピックアップを発売し、ファンから賞賛された。

バンを主役としていたが、ランクル70系にはワゴンも設定する。これは1990年4月に「プラド」を名乗り、ヘビーデューティとは一歩離れた姿を見せるようになった。ランクルの自慢である高い基本性能はそのままに、快適性を重視した味付けを施したのだ。

1990年にデビューしたランドクルーザーの70系ワゴン。このクルマが初めて「プラド」を名乗った

ライトデューティ系と言える70系ワゴンの第2世代が、96年5月に登場した90系プラドである。駆動方式はフルタイム4WDで、サスペンションはダブルウイッシュボーンと4リンク/コイルの組み合わせとした。悪路でも舗装路でもしなやかな乗り味が印象的だ。

第3世代のプラド、120系がベールを脱ぐのは2002年。さらに150系と呼ばれる4代目プラドの投入は、2009年秋のことだ。メカニズムの多くは120系から受け継いでいるが、快適でラグジュアリーな性格を強めた。

命を託せるという信頼関係こそがランクルの価値

2023年8月2日にワールドプレミアされたランドクルーザー250。ステージには顔付きの異なる2台が展示されたが、双方は互換性があるという

そして2023年8月、ライトデューティ系を受け持つプラドが、14年ぶりにモデルチェンジを断行した。世代交代のたびに快適、豪華へと進化を続けてきたライトデューティ系だが、「ランクルはもっと身近な存在であってほしい」と思うファンも少なくない。

そこで、ライトデューティ系はユーザーが求める本来の姿に戻すべきだ、と開発陣は考えた。そして質実剛健だったランクルに原点回帰することを決断する。これまで使っていた「プラド」のネーミングを外し、ランドクルーザー「250」として新たなスタートを切るのは、その決意の表れだ。

執行役員で、デザイン領域統括部長のサイモン・ハンフリーズ氏は、発表会場で、「ランドクルーザーの歴史は、トヨタの歴史そのものと言っても過言ではありません。最初のトヨタBJから、名車と呼ばれる70、そして現在の300まで、その使命はどれも同じです。『どこへでも行き、生きて帰ってこられる』ということです。ランクルの価値は、ひと言でいうと、命を託せる、というオーナーとの信頼関係にあります。より多くの人たちの生活を支えるために、ユーザーが求める本来の姿に戻し、原点に回帰することをコンセプトに開発を進めました」と語っている。

トヨタが誇る真のグローバルカー

2023年8月2日にワールドプレミアされたランドクルーザー250。ステージには顔付きの異なる2台が展示されたが、双方は互換性があるという

2023年8月2日、ライトデューティ系を受け持つプラドが、14年ぶりにモデルチェンジを断行した。世代交代のたびに快適、豪華へと進化を続けてきたライトデューティ系だが、「ランクルはもっと身近な存在であってほしい」と思うファンも少なくない。

そこで、ライトデューティ系はユーザーが求める本来の姿に戻すべきだ、と開発陣は考えた。そして質実剛健だったランクルに原点回帰することを決断する。これまで使っていた「プラド」のネーミングを外し、ランドクルーザー「250」として新たなスタートを切るのは、その決意の表れだ。

スクエアさを強調して車両間隔の掴みやすさに考慮した。当面日本には2.8Lディーゼルターボと2.7Lガソリンモデルが導入される

世界の道を知り尽くしたランクルの最新作、250は、「命をあずかる堅牢性」、「新たな選択肢」、「極限での直感的操作」、「機能美こそ究極の美」などのテーマを掲げて登場した。

エクステリアは、ひと目でランクルと分かる明快なデザインだ。70系ランクルにも通ずるストレート基調のフォルムで、悪路を走り切るのに必要な機能性を損なわないデザインとしている。LEDヘッドライトのフロントマスクは、角目と丸目の2つのデザインを用意した。

兄貴分のランクル300と同じGA-Fプラットフォームを採用し、オフローダーとしての基本性能を向上させていることも見逃せない進化だ。

プラドより大幅な剛性アップを実現し、サスペンションの基本性能も高められた。ハンドリングと乗り心地を高い次元で両立させるために、AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション)と呼ぶ電子制御式減衰力可変サスペンションを採用し、走行モードは5段階、減衰力制御モードはノーマル、スポーツ、コンフォートの3つを設定する。電動パワーステアリングも採用した。

質実剛健な「70」も3ナンバーワゴンとなって復活

ランドクルーザー250プロトタイプのインテリア。グローブをはめて操作するような極限状況下の使い勝手も考慮されている。日本仕様はもちろん右ハンドルとなる

インテリアも機能的なデザインだ。悪路走行を意識して運転席からの視界はいいし、車両感覚もつかみやすい。また、疲れにくく、操作しやすいように、スイッチやメーターもデザインや配置を分かりやすいよう設計としている。キャビンは広く、快適だ。2列シートの5人乗りと3列シートの7人乗りが用意され、リアシートを畳むと広い荷室スペースが出現する。

パワーユニットは5機種を設定した。当面、日本向けに搭載されるのはそのうちの2種類で、2.8Lの1GD-FTV型直列4気筒ディーゼルターボにダイレクトシフト8速AT、2.7Lの2TR-FE型直列4気筒ガソリンエンジンに6速ATの組み合わせとなることが発表されている。

注目したいのは、5機種の中にランクル初のパラレルハイブリッド(2.4ℓガソリンターボ+モーター)があることだ。こちらも将来的な日本市場への導入が期待されている。

日本での再々発売が決まったランドクルーザー70。ディーゼルターボエンジンを積むワゴンモデルとなる

ランクル250の世界初公開の会場で、嬉しいサプライズも告げられた。今なお多くのファンに愛されているランクル70が、誕生から40年になるのを前に、3ナンバーのワゴンになって復活したのである。日本で発売されるのは2.8Lの直列4気筒ディーゼルターボの6速AT車だ。サスペンションも快適方向に味付けしているというから発売が今から待ち遠しい。

ランクルの栄光の歴史に新たな1ページを加えるランドクルーザー250。正式デビューは2024年前半と言われている。今から待ち遠しい。

発表会場に集まった歴代のランドクルーザーたち

トヨタ ランドクルーザーブランドサイト

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