吉田直樹の『アイアンショット・バイブル』
VOL.6 ラウンドでの応用編

Lifestyle

主に地面の上から打つことが多く、ライや芝の状況などにショットの成否が左右されやすいクラブがアイアン。でも、ボールに対してしっかりコンタクトするテクニックを身につければ、ミスが激減し、グリーンをとらえる確率も飛躍的にアップします。谷原秀人プロ、上井邦裕プロ、小祝さくらプロ、脇元華プロらを指導する吉田直樹コーチが、実践で役立つ応用テクニックを伝授します!

撮影協力/アクアラインゴルフクラブ(アコーディア・ゴルフ)





「手=中、ヘッド=外」をフィニッシュまでキープ

これまでアイアンショットについて学んできました。基本的にはこのスイングでOKなのですが、ときには「どうしても◯◯したくない!」という場面に出合うのが実戦ラウンド。そこで、そのような状況に対応できるテクニックをお教えしましょう。

CASE.1「どうしても曲げたくない!」
左右に曲げたくない状況でプロが用いるワザが「ライン出し」です。方向性重視のショットを指すのですが、ライン出しという言葉は知っていても、打ち方まで理解されている方は多くないと思います。

よくある間違いが、ターゲット方向に真っ直ぐクラブと手を出してしまうこと。意図としては、ラインを出すために真っ直ぐ振ろうと考えるのもわからないでもないのですが、ターゲット方向に真っ直ぐクラブを出そうとすると、軌道はインサイドアウトになります。すると手は体から離れ、フェースがかぶってボールは左に曲がってしまいます。

ターゲットに真っ直ぐクラブを出そうとすると、フェースがかぶってしまう

ライン出し成功のカギは「いかに左に振るか」。スイング中、常に手は体の前にあるわけですから、体が回転すれば手は自ずと左に振れていくことになります。

ただし、「いかに左に振るか」には前提があって、クラブがインから下りてくること。単に左に振るだけでは、クラブが外から下りるアウトサイドインの動きを招きかねません。

また、アドレス時にできた前腕とシャフトの角度を変えないことは必須です。

アドレス時に前腕とシャフトが作る角度を意識することが大事

リリースを抑えて、この角度を最後までキープできれば、フィニッシュでは自分から見て「手=(体の)中、ヘッド=外」にあるはずです。

「手=中、ヘッド=外」の関係を最後まで崩さずに振る

「ライン出し=低いボール」をイメージすると、ボールを押さえようとして腕をねじってしまいがちです。それでは前腕とシャフトの角度が変わり、手と一緒にヘッドも体の中側に入ってきます。すると、手の軌道は一緒でもヘッドはかぶる動きになります。

ボールを押さえようとすると腕をねじる動きになりがち。「手もヘッドも中」になり、やはりフェースがかぶってしまう

前腕とシャフトの角度を変えないことはスイングの基本なのですが、ライン出しではこの角度がより重要になってきます。

フィニッシュは、手が左胸の高さで終えるイメージです。実際にスイングするともっと高い位置まで上がるのですが、フィニッシュも、そしてトップもコンパクトなイメージを持ってください。 シャフトと自分の背骨のラインが平行になるイメージを持つと、「手=中、ヘッド=外」を意識しやすいと思います。

シャフトと自分の背骨のラインが平行になるイメージを持つ

なお、ライン出しではクラブを短く握ります。また、スイングもコンパクトになるので距離は落ちます。なので大きめのクラブを持つようにしましょう。

球の高低はボール位置で打ち分ける

CASE.2「球を高く上げたい&低く抑えたい!」
球の高低の打ち分けは、ボール位置を変えることで対応します。
通常より右に置くとややドロー系の低い球に、左に置けばややフェード系の高い球になります。
ただし、スイングは普段と変えません。

通常のボール位置はスタンスの真ん中です。昔であれば4番や5番アイアンは少し左になりますが、今の一般ゴルファー向けのセッティングは6〜7番からなので真ん中でいいと思います。

スイングを変えなくても、ボールを右に置くと、通常のボール位置でのインパクトよりもロフトが立った状態でコンタクトすることになります。
スイング軌道も、インサイドから下りてスクエアに戻る手前でボールに当たるため、ドロー回転がかかります。

低い球を打つには、通常のショット(写真上)よりもボールを右側に置く(写真下)

ボールを左に置いた場合はその真逆で、通常のボール位置でのインパクト地点を過ぎ、ロフトがついた状態でコンタクトします。
また、スイング軌道がスクエアからインサイドになるポイントでボールをとらえるので、ややカット打ちになってフェード回転がかかるのです。

高い球を打つときはボールを左側に置く。スイングは変えない

ボール位置を変えるだけとシンプルなのに、なかなか上手くいかないという方は、普段の位置と異なることで見た目の違和感を覚え、いつものようには振れなくなってしまうことに多くの原因があります。

なので、練習を積むことで違和感を取り除くようにしてください。練習場で試してみて、実際に弾道が高くなる、または低くなるのを実感することで、違和感や振りにくさがなくなってくると思います。

左右の打ち分けは肩のラインで行う

CASE.3「球を左右に曲げたい!」
この場合は足のポジションが重要になります。

ボールを左に曲げたいときは、右足だけ後ろに引きます。すると、肩のラインがクローズになります。
クラブフェースはターゲットに向けたまま、ボール位置やスイングはいつも通りで、肩のラインに対して振っていけば、インサイドアウトのスイング軌道になってドローボールが出ます。

ボールを左に曲げたいときは、通常のアドレス(写真左)から右足を後ろに引いて肩のラインをクローズ(写真右)にする。フェースはターゲットを向けたまま

右に曲げたいときは、左足を後ろに引いてスタンスはオープンにします。すると、スタンスに対してボール位置が中に入るため、ボールを少し左に出しましょう。あとは同じように肩のラインに沿ってクラブを振ります。
結果的にカット軌道のスイングになるため、フェードボールを打つことができます。

右に曲げるには、左足を後ろに引いて肩のラインをオープンにする。ボール位置はやや左

高低も左右の打ち分けも、今のプロはスイング動作をあまり変えずに行っています。
動作を変えようとするから難しくなる。要は、静止した状態でどれだけ変えられるかです。
静止した状態=アドレスでボール位置や肩のラインを変えておいて、あとはいつもの動作を行うだけ。

かえってアマチュアの方のほうが、余計な動きが入り過ぎているように感じます。
雑誌や動画などからいろいろな情報が入ってきますが、もっとシンプルに考えたほうが成功率は高くなると思います。

吉田 直樹(よしだ なおき)

幼少期から過ごしたアメリカ・ニューヨークでゴルフを始める。オーストラリアの大学で5年間、オーストラリア女子ナショナルチームのコーチに師事。その後、アジア、日本、アメリカでプロツアーを転戦しながら世界のトップコーチからレッスンを受ける。2014年、兵庫県芦屋市にインドアゴルフ練習場『ゴルフ ラ・キンタ』をオープン。現在は谷原秀人、上井邦裕、小祝さくら、脇元華など男女ツアープロを指導している。

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