TOYOTA LAND CRUISER “250”ランクル250は凄い!「ランクル300」直系制御に心酔、オフロード試乗で見えたDNA 文:渡辺敏史/写真:小林岳夫、トヨタ自動車

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2024年4月に販売が開始されたランドクルーザーの最新モデル”250“。ランクルとしての「原点回帰」をうたい、走破性や機能性を追求するとともに、デザインや安全性能を高めて「21世紀のランクル」としての新たな魅力も身に着けた。ここではランドクルーザーの系譜を振り返るとともに、オフロードを舞台に行われた試乗の模様をお届けしよう。

これだけ押さえればランクルマスター!! 長い歴史を振り返ろう

こちらは40系ランドクルーザー

戦後の官用車入札向けに開発されたBJ型を祖とするランドクルーザー。そこから数えて73年の歴史の中では、市場の要望に応えるべく2回の枝分かれを経験している。

一度目は60年に登場し、ランドクルーザーの名声を決定づけた40系をベースにした50系の誕生だ。貨客のためにより大きく快適なキャビンを持つモデルとして67年に投入されたそれは、以降60〜300系という系譜をもってランドクルーザーシリーズのトップラインを構成してきた。

二度目は84年に40系の直接後継として登場した70系をベースに乗用車としての性能を高めたミッドサイズのワゴンを祖とするライトデューティモデルの系譜だ。このラインナップは90年以降、一部市場ではプラドシリーズとして括られている。

以降、ランドクルーザーのラインナップは直近まで、原点であり普遍でもある70系、頂点であり象徴でもある300系、そして生活・実用系モデルとしての150(プラド)系という3系統で支え合っている。が、ニーズに引っ張られるかたちでいつしか150系が300系の芸風に寄っていったことを省みて、本来の生活に根ざした実用性の高いクルマという原点回帰の立ち位置へと戻る方向を目指した。それが新しい250系の無骨な意匠へと繋がっている。

受け継がれる魂… 250系には濃すぎるランクルの血が流れていた!!

泥に汚れた姿こそがギアとしてのランクルであること教えてくれる

250系のデザインは、そういう精神を形にしたというだけではない。水平・垂直基調の造形は車両感覚が認識しやすく、更に前カウル部を低く採ることでボンネット端の見切りを直感的に掴めるよう工夫されている。

更に150系より28mm低めたというというベルトラインは横側方の視認性を高め、縦長形状のミラーも側低部の見切りを広げながら、ミラーtoミラーの全幅を抑えた。実寸的には300系より僅かに全長が短い程度の差しかない250系だが、これらの工夫もあって運転席に収まるとその車格は明らかにひと回り小さく感じられる。

250系のプラットフォームは300系と同じGA-F、ホイールベースは伝統の2850mmを踏襲する

オフロード試乗では狭小な林道的なコースを走る機会もあったが、そこでの取り回しの良さは明らかに250系の側に軍配が上がった。実は最小回転半径は僅かながら300系の方が小さいにも関わらず、だ。見えやすさや掴みやすさがいかに大事な要素かを思い知る。

250系のプラットフォームは300系と同じGA-Fを採用。ホイールベースも同じで80系以降、ランクルの黄金比とされてきた2850mmを踏襲している。この新しいラダーフレーム採用が奏功して、車両全体の剛性は前任の150系に比べて30%向上した。サスは前がコイル式のWウイッシュボーン、後ろがラテラルロッド付のコイルリジットと、こちらも300系譲りでランクルの伝統をしっかり踏襲する。

グローバルで5種類が用意されるエンジン

荷重コントロールが難しい急な降坂路を進む”250“

パワートレインはグローバルで5種類用意されるが、日本仕様は共に4気筒の2.7lガソリンと2.8lディーゼルターボの2種類。共に型式的には先代150系からの継承となる。が、ディーゼルの1GD-FTV型はタービン径を小径化して過給のレスポンスを高めた一方で、最新の解析でインペラ形状に工夫を加えることにより同等のアウトプットが得られるように工夫されている。

また、ミッションはFF用をベースに縦置きに変更して高トルク対応とした新開発の8速ATを採用、クラッチの多板化により大トルクでもフルロックアップに近いダイレクトな駆動伝達を可能とした。

日本にラインナップされるエンジンは、共に4気筒の2.7lガソリンと2.8lディーゼルターボの2種類

今回の250系の試乗車はそのディーゼルモデルのみ、そして登録前ということもありオフロードコースでの走行のみとなった。グレードは最上位のZXで、前スタビライザーをフリー化するSDMをシリーズでは初搭載しているほか、路面状況に応じて駆動配分や応答性を最適化するMTSなど、他グレードではオプションでも選べない悪路走破向けデバイスが標準装備となる。

加えて、ドライブフィールの比較用を兼ねて、ビッグマイチェンが施されたばかりの70系と300系のGRスポーツ、そして150系も用意された。

最初に走ったのはモーグル路と岩石路。共にサスストロークを含めたトラクション能力が試されるところだが、ここでの250系の印象的な振る舞いといえば、そういう悪環境でも至極快適ということだ。四輪が不規則に伸びながら大きな凹凸を捕まえていくシチュエーションではキックパックで手が持っていかれがちだ。

操舵形式にリサーキュレーティングボールを用いる70でもさすがにリジットサスの癖は隠せず、ステアリングが左右に揺すられる。

丸形のLEDヘッドランプはZXファーストエディションに標準、他グレードでは販売店装着オプションとなる

250系は独立サスに加えてヘビーデューティユース向けに新設計された電動パワーステアリングの効果があらたかで、キックバックの類は大きく抑えられていた。加えてスタビライザーがフリー化するSDMが、足着き性を高めるだけではなく大ストローク時のショックも和らげるなど、悪路での乗り心地の側にさえ効いている。

とあらば、300系との差異は限りなく無に等しいようにも窺えるが、そこは300、厳然たるフラッグシップである。凹凸の踏み越えや段差落ちなどのショックの柔らかさは250系よりも更に一枚上手な上、GRスポーツの標準装備となるE-KDSSは250系のSDMよりも更に長いトラベルを積極的に路面に押し付ける効果もあって、岩石路では快適かつ安楽にセクションを走り抜けた。総じて同じ悪路での動的質感は、なぞらえるならかつてのマークIIとクラウンくらいの違いがあるように感じられた。

70系、250、300……いったいどれを選べばいいのか

2台の250を中心に勢ぞろいしたランドクルーザーファミリー。奥が300、手前が70系

今回、取材現場へは再再販された新しい70系で赴いたが、その道中の高速で驚かされたのは乗り心地が劇的に洗練されていたことだった。聞けばワゴンボディを1ナンバーではなく3ナンバーモデルとして販売するにあたり、エンジニアは日本仕様の足回りのチューニングを大きく見直したという。

その効果はオフロードコースでもみてとれたが、さすがにその快適性は300や250系に準ずるほどではない。但しそれを補える要素として、デバイス介入を最小限に抑えたフィードバックの濃密さを筆頭に、直感的な操縦感によって得られる走りの歓びのようなところは、どのモデルよりも充実している。

同種の歓びは150系にもあって、デバイスと協働しながらも、最後は自らの手さばき足さばきでクルマを凹凸の向こうに押し込んでいくアナログ的な操縦感覚が程よく残っている。対すれば250系や300系は無敵すぎるだろうという贅沢な不満はさもすれば一部のオフロードマニアからは聞こえてくるかもしれない。

先代の150系プラドからさらに洗練されたインテリア

そういう面も鑑みながら、悪路ともしっかり戯れたいクルマ好きにとってのベストチョイスな250系は何かといえば、浮上するのが最安グレードかつディーゼルとなるGXだ。官公庁やNEXCOへの納入も前提に、全幅を1940mmに抑えたというそれは、装備的にはショボいがACCを始めとするADASや、画面小さめ画素数粗めながらもカメラ映像による視界補助など、機能的装備に致命的な欠落はない。

MTS、SDM、リアデフロックなどはオプションでもつけられないが、センターデフロックに加えてクロールコントロールのオマケもついてくるから、大抵のセクションをクリアする自力は備えている。

こちらはトップグレードZXの内装。ダークチェスナットカラーの本革シートとなる

ヒーターもない丸腰のファブリックシートは、トヨタ社内の使用済みのペットボトルも用いられるという再生素材を使っていて、そのざっくりした風合いはむしろ好んで選びたくなるほどだ。ステアリングはウレタンだが悪路を走る分には埃も拭き取れるなど、かうって都合がいい面もある。

図らずもアニマルフリー内装であることに加えて、外装も加飾要素がほぼ無に等しく、その道具箱的デザインが一層引き立つなど、その内容は520万円の値札を納得させるに充分なものだ。但し、ナロー化のおかげでタイヤサイズは245/70R18と特殊になっているので、カスタム前提でなければA/TやM/Tタイヤのリプレース品は登場を期待するしかないのが現状でもある。



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