ウーブン・シティ永遠に未完成の街!?
ウーブン・シティでTOYOTAが挑むワクワクする未来

文/ベストカーWeb編集部、写真/トヨタ自動車
2020年1月、アメリカ・ラスベガスで開かれたCES(家電見本市)2020において発表されたトヨタ自動車の「コネクティッド・シティ」プロジェクト。後にウーブン・シティと命名され、2021年に静岡県裾野市で建設が始まった。2024年10月にはフェーズ1の建物が竣工し、2025年にはいよいよ稼働日を迎える。
ウーブン・シティはなぜ生まれ、そこでは何が行われるのか。総面積70万8000平方メートルという壮大な未来の町づくりを決断した豊田章男トヨタ自動車会長の発言も振り返りながら、その全貌を読み解いてみよう。
さまざまな価値を「織り込んでいく」街

「未来の当たり前」をつくる街ウーブン・シティは、2025年秋からトヨタ自動車の社員や関係者の入居が始まり、本格的に稼働する。
ウーブン・シティ(Woven City=織り込まれた街)にはさまざまな価値を「織り込んでいく」という思いが込められている。そこは、ヒト、モビリティ、インフラの3つを三位一体で考える「モビリティのテストコース」であり、社会課題の解決策を生み出す実証の街でもある。

ウーブン・シティには木製の機織り機が置かれている。1890年に豊田佐吉が発明した「豊田式木製人力織機」を復元したものだ。トヨタは織機から自動車にフルモデルチェンジを果たし、今またモビリティカンパニーへとフルモデルチェンジを果たそうとしている。先人たちの想いを忘れず、未来に向かって進んでいこうという意思の表れでもある。
掛け算を生み出すインベンターズとウィーバーズ

代表的な施設に「Kakezan Invention Hub(掛け算・インベンション・ハブ)」がある。外壁が一面ガラスとなっていて、屋根は富士山の尾根を思わせるスロープ状になっている印象的な建物だ。その名の通り「掛け算による発明」を生み出す場所で、トヨタの強みと自動車産業以外の業界の強みを「掛け算」し、新しい価値やプロダクト、そしてサービスの創出が期待される。
ウーブン・シティはインベンターズ(新しい技術やプロダクトを発明する人たち)と、彼らが生み出す技術やプロダクトを体験し、意見や感想を述べる住民やビジターであるウィ―バーズ(編み手)で構成される。

「Kakezan Invention Hub」はインベンターズが発明したプロダクトが展示され、ウィーバーズと意見を交わす場所であり、プロダクトはあくまでも試作や仮説に基づいたもので、意見交換によって開発が加速することを狙っている。
過去と未来がつながる場所

2025年2月ウーブン・シティ、フェーズ1の竣工式で豊田章男会長はこう語った。
「かつてここにはトヨタ自動車東日本の東富士工場がありました。その閉鎖を決断した2018年、私は工場で働く仲間たちと直接対話をしました」
「さまざまな事情で一緒に働くことができなくなる仲間たちへの想い、この地でクルマを作り続けてきた誇り、地域の方々への感謝、ひとりひとりがその胸の内を語ってくれました。その顔を見て、その想いに触れて、私は『この場所を未来のモビリティづくりに貢献する聖地にしたい』、そう心に誓いました」

「ウーブン・シティは更地の上にできたのではありません。半世紀にわたり、自動車産業のために働き続けた仲間の想いの上にできる街です。私の言葉で言うならば『クルマ屋たちの夢のあと』です」
豊田章男会長が話した熱い想いを体感できる場所がある。「インベンターガレージ」と呼ばれる製品とサービスの開発拠点だ。そこは半世紀以上にわたってモノづくりを行ってきたトヨタ自動車東日本のプレス工場があった所で、建屋に面影を残している。中にもむき出しの鉄骨やクレーンなど「遺構」が残っている。もちろん開発用の設備は最新のものだが、トヨタが培ってきたモノづくりの精神を感じながらインベンターたちは発明に打ち込むことができる。
ウーブン・シティは未来だけを見ているのではない。過去と未来がつながる場所でもあることをさまざまなところから感じることができる。
予想もしない未来のトビラが開く!?

豊田章男会長は「ウーブン・シティは進化し続ける『永遠に未完成の街』であり、『未来のモビリティのテストコース』です。そして、ウーブン・シティはコラボレーションがすべて。どんな商品やサービスが生まれてくるかワクワクしています」と語る。
第一段階としてダイキン、ダイドードリンコ、日清食品、UCCジャパン、増進会ホールディングスの5社がインベンターとして実証実験を開始する。いったいどんな掛け算による発明が生まれ、予想もしなかった未来のトビラが開くのか? 楽しみでならない。
