高級時計の祭典「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ 2026」世界最大の時計の舞台で輝いた珠玉の新作

Lifestyle

世界最大級の時計見本市「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ 2026」では、ロレックスやパテック フィリップ、タグ・ホイヤーなどの名門ブランドに加えて、中堅、新進ブランドまで、全部で65もの時計ブランドが集結し、2026年の時計界を象徴する新作を披露した。キーワードは「アニバーサリー」、「原点回帰と革新」そして、「アフォーダブルプライス」。市場環境が変化するなかで、各ブランドは流行ではなく、自らの歴史や技術、美意識に立ち返った“本質的価値”を打ち出している。その最新潮流を、注目モデルとともに読み解く。

Text:Yasuhito Shibuya
Edit:Akio Takashiro(pad inc.)

世界最大の時計見本市が示す2026年の潮流

「ウォッチズ・アンド・ワンダーズ・ジュネーブ(略称WWG)」は、その前身である「Salon International de la Haute Horlogerie(SIHH)」から数えて30年以上の歴史を持つ、毎年春にスイスのジュネーブで開催される世界最大級の時計見本市です。現在、ロレックスやカルティエ、パテック フィリップ、ショパール、シャネルなど主要な時計ブランドが一堂に会し、その年の時計市場と時計文化の方向性を示す存在となっています。コロナ禍を経て現在の形へと移行した同展示会には、2026年、日本のグランドセイコーやクレドールを含む65の時計ブランドが出展しています。

グランドセイコーの展示ブース。

一方、スイスを中心とする高級時計業界は今、大きな転換期を迎えています。コロナ禍による行動制限、つまり旅行などレジャーの禁止は、富裕層による「リベンジ消費」と呼ばれる高級時計の積極的な購入につながり、その人気は「コロナバブル」ともいわれるほど過熱しました。しかし、行動制限の解除、旅行などのレジャーが再開されることで終息し、市場が落ち着きを取り戻した現在、消費者はこれまで以上に「その価格に見合う価値が本当にあるのか」を厳しく見極めるようになっています。こうした環境変化に対応するため、各ブランドは流行や話題性だけに頼るのではなく、自らの技術力や美意識、歴史といった本質的な強みに立ち返った時計づくりに取り組んでいます。

2026年のWWGでの最大のトピックは3つ。ひとつが「アニバーサリーイヤーとその記念モデル」。そしてもうひとつが「原点回帰と革新」。さらにもうひとつが「アフォーダブル(無理しなくても手が届く)プライス」です。

今回、数々の新作のなかからHarmony読者に特におすすめしたいのが、ロレックスの100周年記念モデル「オイスター パーペチュアル 41」と、ショパールの「L.U.C 1860」、パテック フィリップの「ノーチラス」、タグ・ホイヤーの「タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ」と「タグ・ホイヤー モナコ エバーグラフ」、そしてオリスの「オリス スターエディション」の6本です。

ROLEX/ロレックス
防水腕時計の原点を祝う「オイスター」誕生100周年記念モデル

アニバーサリーイヤーとその記念モデル。そのなかでももっとも注目を集めたのが、ロレックスの防水時計「ロレックス オイスター」の誕生100周年と、これを記念したアニバーサリーモデル「オイスター パーペチュアル 41」。100周年を記念して文字盤とリュウズにそれぞれ「100」の文字が入り、ベゼルとリュウズにイエローゴールド素材を使った“イエロー ロレゾール”という特別な仕様になっています。

「オイスター パーペチュアル 41」Ref.134303
自動巻き。ケース径41mm。オイスタースティールケース&ブレスレット、18Kイエローゴールドベゼル&リュウズ。100m防水。1,428,900円(税込み)。
ロレックスの展示ブース。

CHOPARD/ショパール
「L.U.C」30周年を祝うアニバーサリーモデル

そしてもうひとつ、1996年に開発された自社製ムーブメント「L.U.C」の誕生30周年を記念して発表されたショパールの一連の記念モデルも見逃せない存在です。スモールセコンド(小秒針=秒表示を文字盤中央の時分針とは別の小さなダイヤルと針で行う方式)を備えた「L.U.C」のシンプルモデルを中心にした新作は、アニバーサリーモデルであると同時に、原点回帰ともいえるデザイン。2つのトピックを兼ね備えた存在です。

「L.U.C 1860」Ref.168860-3005
自動巻き。ケース径36.5mm。ルーセントスティール(TM)ケース。カーフスキンストラップ。30m防水。4,213,000円(税込み)。

PATEK PHILIPPE/パテック フィリップ
ラグジュアリー・スポーツウォッチの金字塔「ノーチラス」誕生50周年記念モデル

さらに時計愛好家にとって見逃せないのが、パテック フィリップが発表した伝説的なラグジュアリー・スポーツウォッチ「ノーチラス」の誕生50周年記念モデルです。こちらもあえて初代モデルと同様の時分針2針、水平ゴドロン模様文字盤を採用した超薄型モデルで、やはりアニバーサリーと原点回帰、2つのトピックを兼ね備えています。

「ノーチラス」Ref.5610/1P-001
自動巻き。ケース径38mm。プラチナケース&ブレスレット(9時位置にブリリアントカットダイヤモンド1石をセット)。30m防水。2,000本限定。18,320,000円(税込み)。
パテック フィリップの展示ブース。

TAG HEUER/タグ・ホイヤー
伝説のクロノグラフを現代技術で蘇らせた最新モナコとクロノグラフの未来を切り拓く革新的タイムピース

また「原点回帰と革新」という意味では、タグ・ホイヤーが発表した角形クロノグラフ「タグ・ホイヤー モナコ」の2つの新作も見逃せない存在です。ひとつは、伝説の名優スティーブ・マックイーン主演のレース映画の傑作『栄光のル・マン』で、彼が実際のレーシングマシンを運転しながら劇中で着用し、また個人的にも愛用したことで知られるファーストモデル。そのデザインと機能を最新の技術で忠実に復刻した「タグ・ホイヤー モナコ」。まさに“原点回帰と革新”を体現するモデル。そしてもうひとつが、これまでのクロノグラフムーブメントの構造を根底から変えた「コンプライアント・クロノグラフ機構」を搭載し“機械式クロノグラフ機構の革新”を体現する「タグ・ホイヤー モナコ エバーグラフ」です。

「タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ」Ref.CDW2181.FC8360
自動巻き。ケース径39mm。グレード5チタンケース。レザーストラップ。100m防水。1,347,500円(税込み)。
「タグ・ホイヤー モナコ エバーグラフ」Ref.CEW5180.FT8122
自動巻。ケース径40mm。グレード5チタンケース。ラバーストラップ。30m防水。4,939,000円(税込み)。
タグ・ホイヤーの展示ブース。

ORIS/オリス
無理なく手が届く、大人のためのネオ・クラシックウォッチ

そして3つ挙げたトピックの最後、“アフォーダブルプライス”を体現するのがスイスの中堅ブランド「オリス」の新作、「オリス スターエディション」です。1966年に発売されたオリジナルモデルは、「スイス時計法」という法律でピンレバー脱進機と呼ばれる廉価版のムーブメントを使った時計しかつくることを許されなかったオリスが、法廷闘争の末にこの法律を撤廃させて初めてつくったスイスレバー脱進気を採用したムーブメントを初めて搭載した腕時計。これはスイスで中堅ブランドとしての地位を確固たるものにした、現在のオリスの原点になったモデル。1960〜70年代当時のクラシックスタイルを現代に蘇らせた、時計界で今人気の“ネオ・ヴィンテージ”というトレンドにもぴったりですし、何よりも30万円台半ばという“アフォーダブル(無理しなくても手が届く)”価格が魅力の1本です。

「オリス スター エディション」Ref.01 733 7813 4151-Set
自動巻き。ケース径35mm。ステンレススティールケース。5気圧防水。363,000円(税込み)。

いずれも流行に左右されない普遍的なデザインを備えながら、それぞれのブランドの歴史や哲学を色濃く反映したモデルです。時計の購入をお考えの方は、ぜひ時計専門店や百貨店の時計売り場の店頭で、その魅力をご自分の目と手で確認してみてはどうでしょうか。

紹介してくれた人
渋谷ヤスヒト

1995年から現在まで30年以上にわたり、スイスや日本を中心に、時計づくりの現場や時計師たちを取材しつづける時計ジャーナリスト。紳士靴や文房具などの嗜好品に加え、クルマやスマートフォン、パソコンなどデジタル分野の取材も幅広く手がけている。

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