Local activities in Kagoshima 01地域のとりくみ「鹿児島」01:
住人の想いが行き交うエコスポット、POLDER Terrace
Text:PONCHO
Photo:Naoki Ohshi、トヨタカローラ鹿児島

Travel

鹿児島市内からほど近い東開町の産業道路沿いにある、トヨタカローラ鹿児島株式会社が手がけた新しいコンセプトショップ「POLDER Terrace(以下、ポルダーテラス)」。桜島の火山灰で困っている鹿児島の方たちに、「洗車で地域貢献を」という想いからはじまった複合商業施設です。その開発の陣頭指揮を執ったトヨタカローラ鹿児島株式会社新規事業部 担当部長・神之田 哲也(かみのだ・てつや)さんにお話をうかがいました。

コンセプトは「くつろげる洗車場」

ポルダーテラスは2019年9月にオープンしました。クルマの展示スペースや洗車機だけでなく、市内で人気のカフェからアパレル・アウトドアのお店まで完備しています。 洗車待ちの間にカフェで寛ぎ、アウトドアなお店を眺め、トヨタ、ダイハツの新車を見て回る。こうした施設ができたきっかけとは何だったのでしょうか?

大きな窓とグレーの壁が印象的なシンプルなこの建物について、神之田さんは、

「当初はトヨタともダイハツとも看板を出していなかったため、目の前の産業道路を走るクルマのドライバーさんから『なんのお店?』と度々聞かれました」

と当時を振り返って笑います。

それが洗車場を中心とした施設だとは、誰も想像できなかったでしょう。しかも店内に入れば吹き抜けの広さと、ナチュラルなインテリアで和めるカフェもあります。

当時カフェ併設のカーショップといえば、首都圏の欧米輸入車のディーラーが採用しはじめたばかりの時。それを2019年に鹿児島で取り入れるというのは、かなり先進的でした。そしてそれは現在も、クルマの販売会社と地域の向き合いの新たなカタチを示しているともいえます。

トヨタカローラ鹿児島株式会社新規事業部 担当部長・神之田 哲也さん

先駆けとなったポルダーテラスは、「知名度アップ」、「カフェ併設によりクルマに興味のなかった層の掘り起こしを」といった、従来のディーラー視点だけで建てられたわけではありません。

ポルダーテラス出店の経緯を、神之田さんに聞くと、

「弊社社長の中村博之が、『火山灰で困っている住民に、トヨタのカーディーラーとして洗車の領域で力になりたい』と考えたのがはじまりです。火山灰は鹿児島県のシンボルである活火山、桜島と共存していくうえでの課題です。外に洗濯物を干すことができない、集めた灰を出す専用のゴミ袋があるといえば、その頻度、量がわかると思います」

写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟

「特に頭を悩まされるのが灰と雨が重なった時で、これらが混ざるともうドロドロになってしまいます。ただでさえ生活にクルマが欠かせない地域ですので、他県よりも洗車のニーズが一層高くなっているのです。

一方で、火山灰による汚れは洗車が難しいという問題もあります。火山灰はザラザラしていますので、不用意に擦るとキズを生む可能性があるのです。それが気になり、鹿児島では白やシルバーなど、キズが目立たないカラーのクルマを選ぶ人が多いくらいです。

どこの洗車機もまずは高圧洗浄を行いますが、それでもキズを心配して、手洗いにこだわる方もいらっしゃいます。しかし、夏は暑く、鹿児島といえど冬は寒い。こうした気候で手洗いするのは大変な作業です。洗う場所も必要ですし、背の高い車種においては特に洗いづらさがあります」。

カフェでくつろげる洗車場

とはいえ、洗車のためにディーラーに行くのは、ハードルが高い。もし、セルフ洗車場と同じ気軽さ、かつ人まかせで洗ってもらえるうえ、洗車機でありながら手洗いと同等以上のクオリティを持ち、しかも洗車を待つ間ゆったりくつろげるスペースが用意されている……そんなラグジュアリーな洗車場を提供できれば、老若男女を問わず幅広い方に利用していただけるのではないか? カローラ鹿児島さんは、そう考えました。

「これは、洗車を通した地域貢献の一環です。灰でお困りの方がたくさんいらっしゃるので、なにか力になりたいと考えた結果が、誰でも手軽で利用でき、くつろげる洗車場というカタチでした」。

2023年の現在でも新しさ感じる洗車場は、一社のみで作られたものではありません。

「“地元のひとと一緒に作る”という地域活性の観点から、地元志向の施設に絞って協業先を探しました。いろいろな人を伝って出会ったのが、現在ポルダーテラスでカフェを出店してくれているdanken COFFEE(以下、ダンケンコーヒー)の正 浩一郎社長です」

「正社長からは、施設としての方向性でもアイデアを出していただき、アウトドアの物販があったほうがいいとHALUさんを紹介してもらいました。また、ダンケンコーヒーのお店を手がけたデザイナーさんも合流。木を基調とした内装など、くつろげる空間づくりに、さまざまな提案をしてもらいました」

洗車待ちはもちろん、ふらっと立ち寄りたくなる空間

ポルダーテラスはL字型の建物で、向かって右手がトヨタとダイハツのショールーム、『ほけんの窓口』の店舗。中央が『HALU REFORM』、左手が『ダンケンコーヒー』となっています。

ダンケンコーヒーは、鹿児島のベーカリー「ベッカライダンケン」が提案するコーヒーショップです。美味しいパンとスイーツ、そしていつものコーヒーを提供。木のぬくもりと、大きな窓から射し込む光が、ホッと一息つける空間を演出しています。

土日はもちろん、平日でも、こちらのコーヒーやパンを求めて、多くの地元の人が集っています。
人気のフードは、写真のおいもキャラメルバタートースト(季節限定/380円)とカフェラテ(レギュラー/380円)。平日9~11時は、定番のダンケンブレンド(レギュラー/300円、ラージ360円)、アイスコーヒー(レギュラー/300円、ラージ/360円)が半額サービスもあり。※すべて税込み

冷凍のピザやパン、コーヒー豆も各種販売。自宅用としてだけでなく、お土産用に買い求める人も多いそうです。

ダンケンコーヒー
■営業時間:9:00~18:00
■定休日:無休
■TEL:099-202-0015
https://dankencoffee-polder-terrace.business.site/

HALU REFORM(ハル リフォーム)は、「庭くらしのすすめ」をコンセプトにご家族やご友人がご自宅の庭に集い、楽しく団らんしていただけるようなシーンを提案しています。アウトドアで着たくなるウエアや小物類が並び、店内奥には自作用小屋「Re・mo-CABIN(リモ キャビン)」(税込み88万円)の完成品も展示。

また、住宅リフォームやウッドデッキの製作、再生可能エネルギー(太陽光・蓄電池・V2Hなど)の相談カウンターもあり、自然を感じ、環境に優しいライフスタイルを実践したい人が訪れています。

HALU REFORM
■営業時間:11:00~18:00
■定休日:火曜
■TEL:099-203-0588

クルマで来たら、あとは全部おまかせの洗車場

ポルダーテラスの建物の一番右手にあるのが、洗車ブース「ポルエコウォッシュ」です。

産業道路から入口を入ってまっすぐ突き当りの洗車場入口に停車。洗車メニューを決めたら受付表を持って店内へ。あとは、専門スタッフに全部おまかせします。

店内受付に行って精算、カギ引換券を受け取り、洗車終了を待ちます。店内では終了した番号が掲示板やアプリに表示されますが、声かけやアナウンスはしていません。カフェでくつろいでいる時に、急かしたくないためというのがその理由です。

洗車だけでなく、ゆっくりとした時間をほんのひととき過ごしてもらいたいというのが、ポルダーテラスの全部おまかせ洗車を利用してもらう価値だと考えているのです。

最新洗車機で行う洗車の仕上がりはもちろん、ハイクオリティです。それでも灰による傷を心配するお客様に安心してもらうため、洗車機にかける前にスタッフが手作業で車体に付着している灰を洗い流すことからはじめ、さらに機械で洗浄するというポルダーテラスならではの手厚いサービスを行っています。

専門スタッフには、女性が多いことも特徴です。神之田さん曰く、

「老若男女を問わずお客様に質の高いサービスを提供するため、幅広いスタッフを採用しています。例えば女性のお客様にとって、同じ女性のスタッフが愛車を拭き上げ、移動させることが安心につながることもあるかと考えました」

とのこと。

ピッカピカに磨き上げてもらい、料金は通常会員で平日水洗い洗車1,100円、モコモコ泡で洗い上げるバブルウォッシュが1,400円、プレミアムアプリ会員ならそれぞれ800円と1,000円。平日限定の利用になりますが、月額3,000円のサブスクも用意してあります。※すべて税込み

セルフ洗車と大きく変わらない値段。全部おまかせ洗車で、待ち時間はダンケンコーヒーでゆっくりできるとなれば、利用しない手はないでしょう。

ポルダーテラス(ポルエコウォッシュ)
■営業時間:9:00~18:00
■定休日:無休
■TEL:099-814-7848(代表)
https://pt-tokai.com/

県道217号線に立つ、ポルダーテラスの看板。「工業地帯の中でシンボルツリーのように自然な存在感と調和性を表現するサイン」として、第6回鹿児島市景観まちづくり賞・屋外広告部門を受賞しています。

カフェだけでなく、洗車もできるディーラーのポルダーテラス。クルマでのお出かけ前、そしてお出かけ後、鹿児島であれば降灰の後に面倒だと感じる洗車を、積極的に利用したくなる場所でした。

こんな新しいカタチのディーラーが近くにあったら、そしてキレイなクルマに乗りたいと思う人なら、思わず「洗車しようかな!」となる可能性高そうです!鹿児島ドライブの際は、ぜひ訪れてみてください。

「ポルエコウォッシュ」の開発背景や詳細はこちらから。
●地域のとりくみ「鹿児島」02:やって納得!エコにもなる!最新洗車機ポルエコウォッシュ

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