Spring hot spring trip Vol.02桜・絶景・グルメ!春の名湯を巡る旅へ
Vol.02
~長野・扉温泉 明神館、美と健康への誘い~
Photo:Shinpei Fukazawa

Travel

冬の間にすっかり冷えてしまった身体を温めに、春は温泉に行きたいという方も多いのでは。せっかくならば、温泉に入るだけではなく食にこだわってみてはいかがでしょう。動物性の食品を摂らず、その土地で採れた旬の食材を食べるというマクロビオティックは、身体の内側からも美しさにアプローチしてくれます。今回は、温泉とマクロビオティックで心身を癒してくれる秘境の宿『扉温泉明神館』をご案内します。

松本駅から車で30分
知る人ぞ知る名湯「扉温泉」へ

秘境にたたずむ、自然に抱かれた宿

松本は、豊かな自然と泉質に恵まれた一大温泉郷として知られています。中でも、標高約1,000メートルの高所の山深い場所にある、知る人ぞ知る名湯が扉温泉(とびらおんせん)。
松本駅から車で30分ほど、扉峠の西側の山麓、薄川の上流に位置しており、下界から遮断されたような雰囲気が漂います。

周囲一帯が八ヶ岳中信高原国定公園に指定されており、まるで時が止まったような錯覚に陥るほどの静寂。宿の周囲には渓流が流れ、草木のざわめきだけが耳をかすめて消えていきます。

訪れた日はうっすらと雪化粧でしたが、春には美しい新緑と、ピンクの山桜とのコントラストが楽しめるとか。四季の移ろいをより敏感に感じられる場所なのです。

この辺りには道祖神が多く、道祖神巡りの人々が投宿したのが『扉温泉 明神館(みょうじんかん)』でした。1931年創業、家族経営の小さな宿でしたが、山や畑で採れた野菜をふんだんに使った温かなもてなしが評判となり、作家や学者が長く逗留するようになりました。

築90年の建物を増築・リノベーションして現在の姿に。周囲には渓流が流れており、散歩をするには最適。なお渓流では川魚が釣れる。

長野は日本の中でも特に長寿の地域。その理由のひとつと言われているのが、土地の地産食材を使った料理です。旬の美味しさを閉じ込めた料理と体の芯から温まる温泉が、多くの人を惹きつけています。

「90年以上前から地産地消を実践し、自家農場では生ごみをリサイクルして有機野菜を栽培。国際エコラベル「グリーンキー」認証を日本で初めて取得した温泉宿です。大自然の渓谷の中に現れた楽園のようなナチュラルリゾートで、自然に抱かれた温泉に癒され、土地の香りや力が詰まった美食を味わえます。雰囲気の異なる多様な部屋があるので、気分に合わせて選べるのも魅力。パブリックラウンジもくつろげます」と話すのは、温泉ビューティ研究家・トラベルジャーナリストの石井宏子さん。

建物は、伝統的な日本家屋のたたずまいを守りながら、内装には現代的なデザインを施しており、素朴さとモダンさが絶妙に調和します。

石井 宏子(いしい ひろこ) プロフィール
温泉ビューティ研究家・トラベルジャーナリスト。旅にでかけて宿に泊まることをライフワークとし、トラベルジャーナリストとして取材・執筆、講演などを行う。ドイツ・ミュンヘン大学アンゲラ・シュウ気候医学教授に学び「気候療法士」資格を取得。国際中医師温泉、自然環境、食事、宿での過ごし方などを通じて、心も体もきれいになる新しい旅“ビューティツーリズム”を提唱する。『感動の温泉宿100』(文藝春秋)ほか、著書多数。

周囲の森を一望できる、贅沢な客室

館内に入ると、正面にフロント、左手にロビー、右手に茶室が見えてきます。重厚な雰囲気のロビーは、真空管アンプのオーディオから、クラシックやジャズが静かに流れ、穏やかな時をもたらします。

和をベースに現代的なエッセンスが加わるロビー。大正モダンを思わせる雰囲気が魅力的。

奥に進むとラウンジへ。ウェルカムドリンクのシャンパンを飲みながら、ゆっくりとチェックイン。有料ではあるものの、ワインを楽しむこともできます。

暖炉の暖かな空気に包まれながら、チェックインをしつつシャンパンを味わう。宿に足を踏み入れた瞬間から非日常が始まる。

明神館の客室はいくつか種類がありますが、この日案内されたのは『然』というシグニチャールーム。新しく造られた部屋で、明神館を包む自然をイメージしてデザインされています。
大きな窓が特徴で、森を一望できる様子はまるでプライベートシアターのよう。特等席に座り、心ゆくまで悠久の自然を眺めたいものです。

思わず裸足で歩きたくなるような、開放感のあるフローリング。ベッドは世界で愛用されるSealy製。

客室に時計とテレビは置かれていません。日常の煩わしさから離れた、特別な時間を味わえる工夫がされているのです。

談話室に飾られているのは、昔懐かしい紙芝居。素朴な道具が、ノスタルジックな思いを誘う。

チェックイン後は談話室やライブラリーなどで、本を読みながらゆったりと過ごすこともできます。

自然と一体になるような「立ち湯」を堪能

「秘境の雰囲気漂う山道の先にある楽園のような湯宿です。温泉旅館の寛ぎとラグジュアリーリゾートの楽しみの両方が味わえます。泉質はアルカリ性単純温泉でなめらかな肌へ導く美肌の湯。単純温泉はストレスによる自律神経の乱れを優しく癒して、穏やかな睡眠へ導きます。『立ち湯・雪月花』は浮遊感があり、渓流へ身も心も誘われるような美しい温泉です」と石井さんが話す温泉は、この宿で特筆すべきもの。

明神館の浴場は2フロアに分かれています。ひとつは、露天風呂付きの大浴場『白龍』。周囲の森に向かって窓が大きく取られており、木漏れ日を浴びながら特別な時間を過ごせます。お湯の温度は38〜40度ほど。副交感神経を高め、神経をリラックスさせるのにちょうどいい温度です。高い温度のお湯よりも、体をじっくりと温めてくれます。

大浴場は、男湯・女湯ともに内湯と露天風呂がある。身体を芯から温め、肌や髪にもやさしい。

「美肌の湯」と言われる通り、湯上がりはすべすべの肌に。また、胃腸の不調、神経症、リュウマチ、婦人病などへの作用が期待できます。

そして、立ち湯『雪月花』。深さは120センチで、立った姿勢で腰上ぐらいまで浸かることで足に水圧がかかり、通常の浴槽よりも血行を促進すると言われています。半露天の浴場で、まるで自然と一体となったような感覚が味わえます。

普段なかなか味わえない立ち湯。外の風を感じながら入る温泉はまた格別。

春は新緑の美しい緑に山桜が混じります。夏は深い緑に蝉の鳴き声、秋は紅葉が見事。12月~3月までは雪景色で、白く閉ざされた森の風情はまた格別です。雪見温泉を楽しみに宿を訪れる人も多いとか。

女性用のアメニティは、精油とオーガニック植物成分を配合したブランド『La CASTA』。明神館のためだけに作られたオリジナルの調合で、「髪がサラサラになった」との声も。※個人の感想です

ここでしか味わえないマクロビオティックで
「身土不二」を実践する

「余計な手を加えない」。大地の恵みをテーブルに

明神館のもうひとつの魅力は、マクロビオテックが味わえること。マクロビオテックとは、動物性の食品や、精製した小麦・砂糖・卵・乳製品を一切使わず、できるだけその土地で採れた旬の食べ物を食べることで、健康を維持するという考え方を指します。

明神館には創業者から受け継ぐ畑があり、そこでは農薬を使わない有機栽培を行っています。料理には、この畑で収穫した甘みのある高原野菜を使用。さらに、シェフが生産者を訪ねて探し当てた食材もふんだんに使っています。都会ではお目にかかれないような、勢いのある素材を堪能できるのです。

静かな山荘を思わせるフレンチのダイニング『菜』。宿泊客は和食かフレンチかを選択でき、和食の場合は別フロアの『TOBIRA』へと案内される

「明神館の統括総料理長・田邉真宏シェフが、松本の自然に着想を得て生み出す料理は、オーガニック、マクロビオテックを極めた先に行きついたという、土地のテロワールを丸ごと味わうディナーです。自家農園もある宿の野菜はそれぞれの個性を感じる旨みのある味わいです。里山の恵みを美味しく味わい、森や山の力が溶け込んだ温泉に浸る旅は、究極の『身土不二』。その土地へ旅をしないと出会えない温泉や、その季節だけの恵みにエネルギーをもらい、明日への力がよみがえります」(石井宏子さん)。

統括総料理長の田邉真宏シェフ。明神館のフレンチの監修はもちろんのこと、KUSHIマクロビオティック認定シェフとして、マクロビオティックコースを作り上げる

アミューズから始まり、前菜、季節のスープ、メイン、デザートと続くマクロビオティックのコースは、動物性の食品を使わずともこれほどまで満たされるのかと思うほど、力強い味わいです。

まずは『アルティザン』と名付けられたサラダ。アルティザンとは“職人”という意味で、野菜の生産者に対するリスペクトが込められています。約40種にもおよぶ地元の野菜は、大根だけでも3〜4種、にんじんが3種に、スティックセニョールやナスタチュームなど豊富な葉物が加わります。味付けは塩と玉ねぎのドレッシングのみと最低限。口にすると、まるでハーブ園にいるかのような、豊かな香りと味わいに圧倒されます。

春の花畑をイメージさせる、華やかな色合いが美しい。一皿に40種類ほどの野菜が使われている

次に供されるのは、カブのスープ。くりぬいた「あやめ雪かぶ」をオーブンで火を通して器にし、わずかにピンク色をしたみずみずしい甘いカブをスープに仕立てます。なめらかな舌触りの繊細な味わいのスープに、器のカブの食感がアクセント。ブラックオリーブと玉ねぎを乾燥させたオリジナルのトッピングが、カブの味わいを際立たせます。

まるで土からカブを収穫したような見た目は、シェフの遊び心。蓋を開けると、その繊細な仕事ぶりに思わずため息が漏れる

そして、田邉シェフのスペシャリテ「椎茸のテリーヌ」。このテリーヌを食しに宿を訪れる人もいるほど、ファンの多い逸品です。つなぎを使わずに接着させた原木の椎茸を、昆布だしを加えた岩海苔のソースが彩ります。ごく淡い味付けが繊細な椎茸の香りを引き立て、この上ない贅沢な一皿。長野といえばやはり茸ですが、土地のものを食べて大地の力を味わうからこそ、人間の体と土地は切っても切れない関係にあるという「身土不二」を成し遂げられるのです。

「山の食材だけだとミネラルが足りない」と、岩海苔と昆布だしのソースを加えている。食事はあくまでもバランスが大切だと思わされる

「基本的に、生産者の存在があるからこそ料理人が料理をできる、という考え方です。農家の方が一生懸命に作ったものに、余計な手は加えたくありません。これは、通常のフレンチのコースも同様です。またマクロビオティックにこだわると、やや視野が狭くなってしまう方がおられますが、身体を壊すような無理な食事では意味がありません。身体が自然に受け入れられる食であるように、と心を砕いています」と、統括総料理長 田邉真宏シェフは言います。

一方で、「マクロビオティックは野菜の切り方ひとつとっても独自の手法があります。“目に見えない物事こそきちんと実践しなければならない”というのは、私の料理への考え方に通じるものがあり、改めてその奥の深さを感じさせます」と、この食餌法を追求する理由も語ってくれました。

統括総料理長 田邉真宏シェフ プロフィール
栃木県矢板市出身。『オトワレストラン』音羽和紀氏に師事したのち、フランス、イタリアでの修業を経て帰国。「松本一本ねぎ」をはじめ、生産者の顔が見えるような長野食材をふんだんに使用する

マクロビオティックのコースは、通常の宿泊料金にプラス5,000円でオーダーが可能(季節により料金に変動あり)。宿泊の1週間前までに予約する必要があります。

滋味深い食材を使った、身体を浄化するようなマクロビオティック。身も心もゆったりとくつろげる温泉。そして、気取らないあたたかなおもてなし。この春、特別な旅に出かけてみませんか。


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