Enjoy authentic BBQプロが指南する
スマートな“本格BBQ”のススメ

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画像提供:日本バーベキュー協会

酷暑も落ち着き、木々が色づくころになると外遊び機運が高まります。この時期、キャンプほど手間がかからず、自然の中で家族や仲間たちとかけがえのない時間を過ごすことができるBBQを楽しんでみてはいかがでしょうか。日本で本格的な欧米スタイルのBBQ文化を発信する日本バーベキュー協会会長・下城民夫さんに、BBQの魅力や楽しみ方、2024年のギア、場が盛り上がる料理などをうかがいました。

本場スタイルで楽しむBBQの魅力

下城さんは「日本に本物のBBQ文化をつくり出す」という目的で、2006年に国内初の「日本バーベキュー協会」を設立。これまでに約26,000人(※2024年8月現在)の受講者を輩出している「バーベキューインストラクター検定」や、全国各地で開催するBBQ教室、イベント、さまざまなメディアを通じて本格BBQの普及のために活動しています。

画像提供:日本バーベキュー協会

本場で一般的に楽しまれている本格的なBBQの魅力を聞きました。

「日本は伝統的な鍋料理文化の影響で、調理と食事が同時進行する、つまり、みんなで焼きながら食べる焼肉スタイルのBBQが主流です。肉が薄切りなのですぐ焼けるというのも理由のひとつ。欧米ではこうしたスタイルは少なく、特にアメリカなどのBBQ先進国では、ホストが塊肉やステーキなどを事前に準備し、スモークやロースト、多彩なソース、スパイスなど工夫を凝らして調理。焼きあがった肉をお皿に盛り付けてから、みんなでシェアして食べるのが基本です。わかりやすくいえば、本格BBQは茶道のような『ゲストに対するおもてなし会』なのです。どちらがよい、悪いというのではなく、まず根本のスタイルが異なるのです」

画像提供:日本バーベキュー協会

「日本流の焼肉スタイルで、みんなで焼きながら食べるのも楽しいですが、欧米スタイルで大切にしているのは『肉より人』なので、会話や料理をゆっくり楽しみながら過ごすBBQもぜひ一考してみてはいかがでしょうか。スマートな本格BBQの魅力は、家族や仲間など、人と人のつながりが深くなるということ。コロナ禍のあと、BBQブームが再燃したのは、人の心の奥底には人とつながりたいという思いがあるからだと思うのです」

画像提供:日本バーベキュー協会

スマートに楽しむBBQテクニック

そこで、下城さんにビギナーでもすぐ取り入れられるテクニックや楽しみ方を教えていただきました。

BBQ 3種の神器

●チムニースターター
「暖かい空気が上昇気流を起こす煙突の原理を利用して、放っておくだけで炭火を熾すことができる合理的な器具です。日本でも少しずつ浸透してきていますが、これを使うだけで、簡単に手際よく炭火を熾すことができるBBQマストアイテムです」

画像提供:日本バーベキュー協会

●水鉄砲
「BBQをしていると肉の脂が炭に滴り引火して炎が上がることがあります。肉が焦げる要因になるので、ピンポイントで効率的に炎を消せる水鉄砲が役立ちます。手持ち無沙汰な人に火消し役を頼んだり、お子さまがいればきっと喜んでやってくれますよ」

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●火消し壷
「火のついた炭を入れてフタをすることで酸欠状態にして火を消す、古くから日本でも使われている壷です。残った消し炭(けしずみ)を次回に再利用できるので、SDGsの観点からみても魅力的。自然の摂理を使った偉大な先人の知恵を活かしましょう」

画像提供:日本バーベキュー協会

「ツーゾーンファイア」の炭火レイアウト

一般的に炭火でのBBQでは、焼ける面積を増やすために全面に炭を敷き詰めがちです。

「肉は、例えば豚肉は63℃以上、鶏肉は70℃以上といったように、安全に食べられる内部温度の加熱基準があり、火が通る時間はそれぞれで異なります。炭を全面に敷き詰めた高温で一気に火を入れると、肉の表面は固くなっているのに中まで火が通っていないような状態になることも多いのです」

そこで、下城さんがおすすめするレイアウトは、炭を敷き詰める加熱ゾーンと炭を一切置かない保温ゾーンを設ける「ツーゾーンファイア」です。

画像提供:日本バーベキュー協会

「炭を置かないゾーンは弱火調理や保温をするエリア。炭火での調理は、食材の表面はもちろん、中まで火を通す遠赤外線を利用しているので、弱火ゾーンでグリルのフタをしてじっくり焼くことで、美味しく仕上がります。温度帯を変えることで、つくれるレシピの幅も増えるので、ぜひ取り入れてください。炭は積みあげると温度があがるので、炭を高く積み上げたゾーン(強火)、中ぐらいに積み上げたゾーン(中火)、炭を置かないゾーン(弱火または保温)の3つのゾーンをつくり出す『スリーゾーンファイア』など、炭火のレイアウトはさまざまなパターンがあります」

スターター(前菜)は「焼ける前の一品」

画像提供:日本バーベキュー協会

「BBQを始めると、自然とお腹が減って、出来上がるまで待ちきれないことも多いものです。まず、薄い肉から焼いて落ち着くのもいいのですが、焼く必要のない『焼ける前の一品』を出す方が、よりスマートです。例えば、クラッカーに生ハムとクリームチーズ、彩り豊かな野菜を乗せた『ピンチョス』や『ブルスケッタ』などのフィンガーメニューを、何種類か事前につくっておく。ゲストは小腹が満たされて自然と笑顔になり、ワンランク上のBBQが楽しめます」

こうした事前準備が何より大事だと下城さんは続けます。

「肉をマリネする、野菜やキノコをホイルに入れておくなど、事前に家でしっかりすることで、現場での楽しい時間を生み出しやすくなります。また、現地でのゴミも減るので環境にも優しいですよね」

画像提供:日本バーベキュー協会

肉は多彩なソースで楽しむ!

「日本は食材にこだわり、その味を美味しくいただく文化が根付いているので、霜降りの肉など素材のグレードアップに注力しがちですが、欧米スタイルのBBQは、ソースでさまざまな味を楽しみます。安価な肉やリーズナブルな素材でも、前日にシーズニングやハーブでマリネして、現場で焼いてソースを付けて食べることでリッチな味になる。ゲストそれぞれが好きなソースを1本持ち寄るだけでも、食べ比べができて盛り上がりますよ」

日本バーベキュー協会のオリジナルBBQソース「BBQ SHOGUN UMAMI BARBECUE SAUCE」シリーズも人気が高い。公式ホームページで購入可能。
画像提供:日本バーベキュー協会

続いて下城さんがおすすめする最新BBQギアをご紹介します。

プロが選ぶ最新BBQギア5選

Weber
Weber Traveler® ポータブルガスグリル

画像提供:Weber Japan

1952年にアメリカで誕生したWeberは、世界のトップシェアを誇るBBQグリルブランドです。
「最新モデルのこちらは、クルマのトランクに収められるように折りたためる構造。片手でグリルを持ち上げて簡単に設営できるので、女性ひとりでも組み立てられます。焼き面も大きく、アウトドア用のガス缶で着火できるのも魅力です」

●参考リンク
https://www.weber.com/JP/ja/ガスグリル/weber-traveler-ポータブルガスグリル/9010013.html

UNIFLAME
ユニセラTG-Ⅲ

画像提供:UNIFLAME

V字型の構造で底部から大量の空気を取り込み、サイドの内側に設置されたセラミックパネルが熱せられることによって遠赤外線の熱を焼網に伝える卓上BBQグリル。
「日本の伝統的な七輪は、燃焼効率にすぐれ、しかも高い保温性が魅力ですが、これはその利点を取り入れたグリルです。熱効率がよく少ない炭でしっかり焼けるのが嬉しい。手入れが簡単でコンパクトにたためるなど、細やかなこだわりは日本のメーカーならではです」

●参考リンク
https://www.uniflame.co.jp/product/615010

SHIMANO
ICEBOX PRO

画像提供:SHIMANO

SHIMANOは1921年創業のアウトドアスポーツメーカーで、自転車や釣りのプロダクトは世界中のユーザーに支持されています。
「クーラーボックスに求めるのは、シンプルに保冷力の持続性。その点においてクーラーボックス内の氷が最大240時間キープされるこのシリーズは日本トップクラスです。大人が座っても問題ない堅牢性やフタが左右両開き、取り外しができるなど、利便性にも優れています」

●参考リンク
https://lifestyle.shimano.com/icebox/

Weber
ラピッドファイヤーチムニースターター

画像提供:Weber Japan

煙突効果による上昇気流で、約20分間放置しておくだけで素早く簡単に炭火が熾せるチムニースターター。
「いろいろな器具を試した中で、炭火がもっとも早く熾せるチムニースターターです。誰でも簡単にできるのはもちろん、サイズも大小から選べるので、グリルの大きさに合わせてチョイスしてください」

●参考リンク
https://www.weber.com/JP/ja/アクセサリー/グリルの種類別アクセサリー/チャコールグリル用アクセサリー/rapidfire-chimney-starter/7416.html

KINGSFORD/プロフェッショナル チャコールブリケット

画像提供:KINGSFORD

KINGSFORDのチャコールブリケットは、BBQの本場アメリカで100年以上の歴史があり、もっとも売れている木炭ブランドのひとつです。原料の木材は100%天然の北米産木材で、創業当時から環境に配慮し、伐採するのではなく木材廃棄物を使用しています。
「着火速度が速く、火力が強くて燃焼時間も長い。サイズが均一なので扱いやすく、足し炭する際もすぐに温度が上がるのが魅力です」

●参考リンク
http://kingsford.jp/product/professional/

ワンランク上のBBQ料理

最後に、ひと工夫でグレードアップするBBQ料理を教えていただきました。

●ピーマンの丸ごとハーブグリル

「好みのハーブを漬けたオリーブオイルをピーマンの表面に塗って丸ごと焼くだけ。オリーブオイルがピーマンの水分を閉じ込めるので、驚くほどジューシーで香り高いごちそうになります」

画像提供:日本バーベキュー協会

●本格ソーセージ+ヴィナグレッティモーリョ

「セロリや玉ねぎ、人参などの香味野菜をサイコロ状に刻み、1:2の割合の酢と水、エキストラバージンオリーブオイルを合わせ、塩と胡椒で味を調えたヴィナグレッティモーリョ(=ソース)は、リングイッサなど肉感あふれるソーセージと相性抜群です」

ヴィナグレッティモーリョはどんな肉にも合います。
画像提供:日本バーベキュー協会

●ハワイアンポークリブ

「豚肉は甘みと相性がよいので、塩・胡椒したポークリブをマーマレードと少しの醤油でマリネして一晩寝かせておきます。焼く前に肉の表面に改めてマーマレードを塗って、ツーゾーンファイアの低温ゾーンでじっくり焼けば、照りが出てとても美味しくなります。ハワイの方におもてなしでつくってもらって以来、自分でもつくりつづけています」

画像提供:日本バーベキュー協会

この秋、ぜひワンランク上の本格BBQを楽しんでみてはいかがでしょうか。

●取材協力

画像提供:日本バーベキュー協会

日本バーベキュー協会 会長
下城民夫さん

兵庫県芦屋市出身。2006年、日本に本場のベーバキュー文化を伝えるために「日本バーベキュー協会」を設立。翌年には世界のBBQ文化を身につける「バーベキューインストラクター検定」をスタート。各種メディアでの発信や子ども向けオリジナル食育プログラム「キッズバーベキュー楽校」、防災士(日本防災士機構)の資格を活かした「防災アウトドア&バーベキュー教室」、福井県高浜町、高知県四万十町でBBQを活用した地域おこし活動など、日本における本格BBQを伝道する第一人者として多方面で活躍中。

日本バーベキュー協会 公式ホームページ
https://jbbqa.org

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