Japan's tangible cultural properties文化と宿~日本の有形文化財を巡る旅へ~

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群馬の秘湯、四万温泉の「積善館」。雄大な千曲川沿いに広がる長野・戸倉上山田温泉の「豊年虫」、そして開湯以来1,400年もの歴史が紡がれる兵庫・城崎温泉の「三木屋」。日本を代表する温泉郷で名を馳せる登録有形文化財の宿を巡りながら、そこに今なお息づく伝統と文化にふれる旅をご紹介します。

湯治文化を伝える古の湯宿建築「積善館」

三国山脈より南進する清流四万川。その上流に位置する閑やかな四万温泉郷は、奈良時代末期に開湯した伝承が残っています。「四万もの病を癒す」と称される霊泉は肌に優しく、強酸性の草津で療養したあとの「仕上げ湯」に浸れる湯治場としてにぎわいました。晩秋に紅葉が彩る山あいの中で、文人墨客や錚々たる要人に愛された旅籠が「積善館」です。

静寂が漂う温泉郷で三百年の歴史を紡ぐ名宿

創業は元禄7年。その3年前に建てられた本館は、現存する日本最古の木造湯宿建築として今に伝わり、幻想的にライトアップされるその夜の情景は、名作アニメーション映画『千と千尋の神隠し』に登場する湯屋のモデルのひとつになったといわれています。

清冽な新湯川にかかる朱塗りの慶雲橋を渡ると、古の湯治旅がはじまります。右手にそびえるのは大正ロマネスク様式を残すアーチ形の窓が趣深い「前新」。そして重厚な本館は、かつて二階建ての典型的な湯宿として建てられ、明治30年頃に書院風の座敷を持つ三階が増築されました。

左/本館には貴重な資料や江戸時代の部屋も展示。右/かつての移動手段だった馬の手綱をつないでいたといわれる「馬つなぎの柱」。

特別な空間と湯情にひたる至福の滞在

「積善館」は、山の斜面に向かって本館、山荘、佳松亭の3棟がひな壇式に並び、それぞれ異なった趣を醸しています。昭和11年に建てられた山荘には、部屋ごとに異なる組子障子をはじめ、彫刻や工芸の職人の技を駆使して装飾された桃山様式の建築に風雅な美が漂います。鬱蒼と茂る森と共存し、国の登録有形文化財、群馬県近代化遺産にも登録されたノスタルジックな空間に身をおくだけで、心が解きほぐされていくでしょう。

木造建築ならではの温もりが漂い、細部に昭和の名工の技を感じられる山荘は「浪漫の山荘」と称されるレトロ空間が魅力。画像は標準客室(8畳、3名定員)。
高台にたたずむ「佳松亭」で、静寂に包まれた滞在を満喫。画像は標準客室(12.5畳+広縁、6名定員)。
明治時代に残された絵巻から再現された「湯車」は、足湯を楽しみながら眺めることができます。

歴史と趣向を体感できる空間は湯場もしかり。4種類ある温泉の中で、積善館を象徴するのが前新の「元禄の湯」です。吹き抜けが心地よいモダンなホール風の建築に漂うのは、大正ロマンの薫り。建てられた昭和5年当時は大きな湯船が一般的ではなく、タイル張りの床に5つの石造りの浴槽が並ぶハイカラな空間が悠久の時を感じさせてくれます。

左/本館と山荘をつなぐ神秘的な「浪漫のトンネル」。右/大きな窓から自然光が豊かに降り注ぐ「元禄の湯」には、お風呂のルーツといわれている蒸し湯も。

こんこんと湧き出る源泉かけ流しの名泉を堪能したあと、山荘と佳松亭の宿泊者が楽しめるのは見目麗しい季節の会席料理。秋は松茸、冬は上州和牛など上質な素材を厳選し、日本料理の繊細な技で旬の精妙な味わいを引き出した会席は、贅沢なことこの上なし。

古式ゆかしい建築と名湯、そして美食にひたる滞在は、俗世を忘れさせてくれる癒しに満ちています。

群馬・四万温泉
「積善館」で過ごす上質な宿泊プラン

■期間
2025年1月10日(金)~2025年3月31日(月)

■部屋タイプ
佳松亭標準客室(和室)禁煙(12.5畳)

■料金
1泊2食付き、大人おひとりさま(税・サ込み)

2名さま1室 43,700円~52,000円
3名さま1室 42,500円~50,800円
4名さま1室 41,300円~49,700円

※ご予約の際は赤いカタログ「エースJTBセレクト栃木・群馬・新潟・房総」P41にて詳細をご確認ください。
 該当のパンフレットはこちらをご確認ください。
※エースJTB宿泊プランの企画実施会社は株式会社JTB、トヨタファイナンスは受託販売となります。
※2025年4月以降の宿泊プランについてはトラベルデスクへお問い合わせください。
※入湯税、宿泊税がかかる場合、別途現地にてお支払いください。

■優待
・貸切風呂「積」または「善」半額利用OK(通常3,300円
⇒1,650円/1回45分/1室につき1回/チェックイン時申し込み)
※先着順のため、ご希望に沿えない場合があります。

■住所
群馬県吾妻郡中之条町四万温泉4236
https://www.sekizenkan.co.jp/

ご予約・ご相談はトヨタファイナンス トラベルデスクから。

旅館建築の歴史を変えた革新を宿す「豊年虫」

客室と客室の間を壁で仕切り、出入り口に鍵のある個室、奥行きのある縁側に椅子とテーブルを置いた広縁――。現在では定番となっているホテルのスタイルを初めて日本旅館に取り入れたのが「豊年虫」です。写真上の客室「萩の間」(本間12畳+次の間4.5畳)では、北側と南側で異なる庭の情景が楽しめます。

現代の旅館建築の礎を創った斬新なデザイン

雄大な千曲川沿いに広がる戸倉上山田温泉の老舗湯宿「笹屋ホテル」の別荘として設計デザインを手がけたのは、近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトに師事した建築家・遠藤新。それまでは襖で仕切られているのが常だった日本旅館の客室の境界に独立性をもたせ、座敷から広縁、庭が調和し、自然と建物と人の一体感を生み出した手法は、昭和7年当時、極めて斬新でした。

天井板は茶室の趣を取り入れ、竹の壁止めで萩の部分と杉の部分で分け、空間に変化をつけています。

このスタイルが現代まで続く近代観光旅館建築のモデルになったことから、国の登録有形文化財に指定され、昭和初期に笹屋ホテルに逗留中の志賀直哉が執筆した短編『豊年蟲』から名付けられました。完成以来、木造建築が故に幾度となく改修されていますが、建築家の意図と趣は守られつづけているのです。

普遍の洗練が漂う歴史空間に癒される

日本建築ならではの繊細な美を巧みに取り入れた豊年虫は、全8室それぞれで意匠が異なります。

天井板には木目のきれいな春日杉を使用し、広い本床に書院、琵琶棚、床脇がある床の間をしつらえるなど、もっとも格式高い「蘭の間」。茶室の思想が色濃く反映され、全室で唯一檜造りの内風呂が備えられた「萩の間」。本間入口側に床の間のある「下座床」の自由な発想や、庭園の池に浮かぶように瀟洒な広縁が配された「菊の間」など、伝統の技法と遊び心を宿した空間デザインは、約1世紀の時を経た今も、時代を超越した普遍性に満ちているのです。

ガラス戸を2面に取り、自然との一体感にこだわった「菊の間」(前室4.5畳+本間11畳)の広縁。
左/「蘭の間」(前室6畳+本間15畳)は、昭和38年当時、皇太子殿下がご宿泊されました。右/床の間には、「狐格子」と呼ばれる妻飾りの工夫が。

そして、その空間をさらに活かしているのが、遠藤新の盟友、阿部貞著が手がけた庭園。自生する樹木の間に池を配し、部屋ごとに庭の情景が異なり、宿泊者にやすらぎを届けています。

移ろう季節で表情を変える庭園には、自然美が宿ります。

部屋に備えられた内風呂のいで湯だけでなく、本館である笹屋ホテルの大浴場「石の湯」を利用できるのも豊年虫の魅力。大小二つの石造りの湯船と庭園風景に包まれた露天風呂が楽しめます。

荘厳な石造りの「石の湯」。悠々と湛えるその泉質は、自律神経の調整や疲労回復に効果が期待できるアルカリ性単純硫黄温泉。

「石の湯」のほか、窓の外に信州の大自然が広がる「木の湯」、そして3種類の貸切風呂は、すべて自家源泉100%のかけ流し天然温泉で、美肌の湯と称されています。

左/夕食は、野山や毎朝の市場で仕入れた旬の素材で丁寧に仕立てた季節の会席。冬は上質な信州和牛の鍋が登場します。右/豊年虫の2階のライブラリー「石楠花」には、笹屋ホテルを訪れた文人墨客の作品を展示。庭園の全容が見渡せる眺望も魅力です。

「なにもしない贅沢」に身を委ね、明日への活力を養う滞在を楽しみたくなる宿です。

長野・戸倉上山田温泉
「豊年虫(笹屋ホテル内)」で過ごす上質な宿泊プラン

■期間
2025年1月10日(金)~2025年3月31日(月)

■部屋タイプ
豊年虫(和室)禁煙庭園付き(10畳+踏込)

■料金
1泊2食付き、大人おひとりさま(税・サ込み)

2~4名さま1室 46,100円~50,800円

※ご予約の際は赤いカタログ「エースJTBセレクト信州・飛騨美濃」P32にて詳細をご確認ください。
 該当のパンフレットはこちらをご確認ください。
※エースJTB宿泊プランの企画実施会社は株式会社JTB、トヨタファイナンスは受託販売となります。
※2025年4月以降の宿泊プランについてはトラベルデスクへお問い合わせください。
※入湯税、宿泊税がかかる場合、別途現地にてお支払いください。

■優待
・豊年虫宿泊限定、夕食ドリンクを1泊につきおひとりさま1杯ご用意
(お酒・生ビール・ソフトドリンクのいずれか)
※アルコールは20歳以上のみ

■住所
長野県千曲市千曲之湯戸倉温泉(笹屋ホテル内)
https://www.hohnen-mushi.jp/

ご予約・ご相談はトヨタファイナンス トラベルデスクから。

文豪が愛した宿で日本旅館の本質を体感「三木屋」

「自分の部屋は二階で、隣のない、割に静かな座敷だった。読み書きに疲れるとよく縁の椅子に出た」――。

近代文学を牽引した文豪・志賀直哉が逗留し代表作『城の崎にて』を執筆した宿「三木屋」。その創業以来、3 5 0年余の時を経た今も、風土の文化で旅人をもてなす伝統を守りつづけています。志賀直哉だけでなく、民俗学者の柳田國男や画人の山下清、小磯良平など多くの文化人が訪れました。

往時の面影と現代の快適性が融合

開湯以来、1,400年余の歴史を誇るにぎやかな温泉街の中心に位置しながら、ゆっくりと時が流れる閑静な空間が魅力。

志賀直哉がはじめて城崎温泉に訪れたのは大正2年。大怪我を負ったあとの養生に三木屋を訪れ、約3週間滞在し、目の当たりにした生き物の死と自身の死生観を照らし合わせて『城の崎にて』を執筆したという。当時の建物は大正の大震災で倒壊しましたが、昭和2年に再建。その面影を色濃く残した稀少な木造3階建ての東館は登録有形文化財に指定されています。志賀直哉は、昭和30年代まで常宿として「三木屋」に幾度となく訪れました。

志賀直哉が贔屓にした26号室。志賀直哉から届いたはがきなど貴重な展示も必見です。

志賀直哉のお気に入りだった26号室は当時のまま残され、宿泊者のみ見学可(宿泊不可)。重厚な書院造の空間に華美な装飾はありません。縁側から『暗夜行路』に描かれた庭園を眺めていると、十代目の片岡大介さんが教えてくれました。

「『城の崎にて』は、最低限の言葉で本質が描かれています。弊館も心根は同じ。装飾は極力せずに、日本旅館としての本懐を大切にしています」。

モダンな快適性を取り入れながらも歴史的建築を守りつづけるその矜持は、館内のそこかしこにも表れています。

すべての部屋が庭園に面している「庭園側和室」(8畳〜10畳、4名定員)。
付書院や床脇の違い棚など、書院造の床の間に歴史を感じることができます。
左/夕食では豊饒な風土が生んだ山海の幸を堪能。冬は一級品のブランド蟹「津居山がに」を。右/多彩な柄から浴衣が選べます。
「外湯を巡るのは湯治場の伝統。その不変の楽しさを味わってください」と語る片岡さん。

「志賀直哉さんは、良質な温泉があり、人の心の温かさが木造の建物と調和している城崎温泉が日本の温泉地のあるべき姿だ、と仰っていました。時代に流されず、街全体を一軒の宿として考え、外湯巡りの楽しさを大事にしてきたその文化は、現在にも受け継がれています」

柳並木を風がなで、浴衣を纏った旅人が、カランコロンと下駄の音を響かせる――。文化財の宿とともに、風情豊かな温泉街を満喫してはいかがでしょうか。

兵庫・城崎温泉
「三木屋」で過ごす上質な宿泊プラン

■期間
2025年1月10日(金)~2025年3月31日(月)

■部屋タイプ
庭園側和室(風呂なし8畳+広縁)

■料金
料金詳細はトラベルデスクへお問い合わせください
※夕食最終開始時間は18時30分となります。食事場所の都合上、11名さま以上のグループはお申し込みいただけません。
※1室大人2名さま以上でお申し込みください(定員4名)。
※未就学児はお申し込みいただけません。

※ご予約の際は赤いカタログ「エースJTBセレクト兵庫・大阪・和歌山」P17にて詳細をご確認ください。
 該当のパンフレットはこちらをご確認ください。
※手配旅行となるため、取扱いはトヨタファイナンスとなります。
※2025年4月以降の宿泊プランについてはトラベルデスクへお問い合わせください。
※入湯税、宿泊税がかかる場合、別途現地にてお支払いください。

■優待
・志賀直哉の長編小説「暗夜行路」に登場する日本庭園を望むお部屋をご用意(一部和室除く)
・女性に色浴衣をお貸出し(大人のみ)

■住所
兵庫県豊岡市城崎町湯島487
https://kinosaki-mikiya.jp/

ご予約・ご相談はトヨタファイナンス トラベルデスクから。

文化と宿を巡る上質な旅へ トラベルデスクおすすめプラン

登録有形文化財の宿を巡りながら、四万温泉、戸倉温泉、城崎温泉といった日本を代表する温泉郷を満喫する旅へ。トラベルデスクでは、ここで紹介した3施設のほかにもさまざまなプランやツアーをご用意しています。もし行き先や目的が決まっていなくても、旅行専任コンシェルジュが旅の楽しみ方とともに最適なプランをナビゲートしてくれるので安心。さあ、日本の文化を感じる旅へでかけましょう。

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