たかが酒、されど酒。その一献にまつわる蘊蓄と、
美酒をさらに美味しく楽しむコツとレシピを利き酒師が紹介します。

2016年7月記
至福の一杯【第3回】 新しい味の発見を手軽に楽しむ

あえて「自宅でカクテル」のすすめ

文/写真・塩澤雄二

新しい味の発見こそがカクテルなら、自由な発想で自分だけの一杯を求めてみよう。仕上がりに失敗はない。「新しい」と思える寛容さがあれば、不思議な味もまた楽しい。

レシピの再現だけじゃない、カクテルの楽しみ方

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近年、カクテルのイメージはずいぶん変わりつつある。キューバ発祥のラムベースの「モヒート」や、ブラジルの国民酒カシャーサを使った「カイピリーニャ」は、若い世代を中心にしたイベントでも気軽に楽しく飲めると人気だ。居酒屋でもウイスキーの「ハイボール」が生ビールと並ぶ最初の一杯の酒となった。「カクテル」と言えば、バーでバーテンダーの妙技によりレシピ通りの完璧な再現性を味わうものとする人からすれば、「それってカクテル?」と思うかもしれない。しかし、発祥や語源は諸説あれど、「カクテル」の定義は、酒に何かを加えて新しい味を生み出した飲料全般のこと。焼酎に梅干しを入れたものも立派なカクテルなのだ。自宅でカクテルを楽しむ、というブームは数年に一度起こるがなかなか続かない。それは、道具と酒を揃え、レシピ本を精読し、調薬のごとく数ml単位で計り、黙々とシェーカーを振ることから始めるからだ。新しい味の発見こそがカクテルなら、本を閉じ、自由な発想で自分だけの一杯を求めてみよう。仕上がりに失敗はない。「新しい」と思える寛容さがあれば、不思議な味もまた楽しい。

ふだんの酒に風味をプラス

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自分でカクテルを作ると言っても、シェーカーやメジャーカップ、マドラー、カクテルグラスなどは必要ない。計って、合わせて、かき混ぜて、注ぐのは、ほかの物でも代替できる。今回は、「酒に何かを漬けて風味をプラスする」「グラスに酒と何かを注いで味を変化させる」という、お手軽カクテルを紹介しよう。

自宅でカクテルを作るのなら、まずは自分がふだんよく飲む酒をベースに試してほしい。飲み慣れない酒にさらに風味を加えても、味の変化の度合い、強弱は判断しがたい。自分の好み、馴染みの味わいの変化を知れば、カクテルのコツがつかめ、応用の幅はどんどん広がるだろう。

「サケ・サングリア」の楽しみ方

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「サングリア」は、ワインにスパイスやハーブ、果汁で風味を加えた「フレーバードワイン」と呼ばれるカクテルの一種。清酒は、自分の嗜好に一致すれば完璧な満足度が得られる醸造酒だが、逆にずれてしまうと物足りなさや行きすぎが気になることもある。新しく試しに開栓したものの、何か違うなあと感じたら、手軽にできる「サケ・サングリア」を試してみよう。清潔なビンにカットしたフルーツを入れて清酒を注ぎ、数時間(4時間から一晩程度)、冷蔵庫で漬け置きするだけ。果物の甘味は酒を濃醇にし、酸味はキレをよくする。全体にひと味足りない場合は、グラスにレモンをしぼってもいい。

「焼酎・カイピリーニャ」の楽しみ方

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ブラジルの「カイピリーニャ」は、カットしたライムに砂糖を混ぜ、クラッシュドアイスを加えて蒸留酒のカシャーサを注いだもの。これを焼酎に応用し、紫蘇のほか、キュウリの千切り、各種ハーブなど好みの風味の素材と氷を入れたグラスに焼酎を注ぎ、潰すようにかき回し、香りを楽しみながらいただく。芋焼酎の甘さ、むぎ焼酎の香ばしさ、米焼酎のやわらかな香りにさまざまな香りをプラスすることで、1杯ごとに異なる風味を味わうことができる。

グラスに注ぐだけの「カンタン・カクテル」の作り方

しおざわ ゆうじ◎1966年、神奈川県生まれ。SSI認定の利き酒師・焼酎利き酒師。酒を地域文化・食文化の側面から着目し、その中に伝統の継承と革新の可能性を探求中。