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トヨタ博物館のドリームカーたちTOYODA AA (Replica) Text & Photo:Daisuke Katsumura

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現在のトヨタ自動車の前身となった豊田自動織機製作所の自動車部が製作した初の本格的な国産乗用車がトヨダAA型です。日本の自動車史を語る上で欠かすことのできない車両ですが、残念なことに国内にはすでに現存していません。現在トヨタ博物館に展示されているのは、トヨタ自動車が当時の資料や設計図を探し出し、1986年に完成したセルフリプロダクションです。

以下のリンク先では、トヨダAA型のレプリカが展示されている様子や、AA型の誕生に至るまでのストーリー、制作の背景など、より深い情報にアクセスすることができます。

トヨタ産業技術記念館で「モノづくり」の魅力を楽しく体感!/2021年12月15日公開

当時最先端のボディを持つトヨタ自動車初の量産乗用車

トヨタ博物館を訪れたことがある人なら、エントランスを抜けてエスカレーターの前に展示されているレトロな車両を見たことがあるでしょう。車名を「トヨダAA型」と言います。「あれ、『トヨタ』じゃないの?」とお思いになるかもしれませんが、間違いではありません。

1936年に生まれたこのクルマ、実はトヨタ自動車の前身、豊田(トヨダ)自動織機製作所の自動車部が製作した一台なのです。その後、1937年にトヨタ自動車工業が設立され、車名も「トヨタAA型」に変更となるため、生産初期のみ呼ばれた名称です。

なお、「トヨダAA型」は現在、国内ではオリジナルの車両は現存しておらず、オランダの博物館に1台あるのみといわれています。そして、トヨタ博物館に展示されている車両は、トヨタ自動車の社内に残されていたさまざまな資料をもとにトヨタが制作した貴重なモデルです。

外観はもちろんシャシーやエンジンなどの機構は当時最先端だったアメリカの自動車に大きく影響を受けています。特にボディはアメリカでも最先端だった「デソート・エアフロー」が採用した流線型のボディに大きく影響を受けており、同時代のフォードやシボレーと比べても遜色ないものでした。

そんななか、フロントフード前端に備わるマスコットに日本らしい部分を発見しました。マスコットを横から見ると、丸のなかに「豊田」の文字がデザインされているのです。当時はフロントフードのマスコットはポピュラーで多くのクルマが装着していました。マスコットの下にあるTOYODAエンブレムは七宝焼でできています。

マスコットから少し視線を動かしてヘッドライトへ。「デソート・エアフロー」ではグリル脇のボディに埋め込まれていましたが、「AA型」はフェンダー上に備わるスタイルを採用しています。これは当時、多くのクルマで採用された一般的なデザインといえます。

ヘッドライトをよく見ると、レンズに「TOYODA」の文字が刻印されています。この刻印はオリジナルを忠実に再現したものです。

テールライトは左右フェンダーに独立して装着されており、左側はナンバー灯を兼ねていました。これは当時のアメリカ車でもスタンダードなスタイルで、デザインはフォード「モデルA」のものによく似ています。

じっくり見ていただくと、ライト本体の後ろに小さなスイッチがあることに気づくでしょう。これは当時の日本の「自動車取締令」に記載されていた「後面灯火は運転席から消灯できないように」という法規をクリアすべく備えられた特徴です。

アメリカ基準で作られた大排気量エンジン

エンジンは1933年式シボレーの直列6気筒を模したもので、ボア84mm×ストローク102mmの排気量3,389ccのA型です。各部の寸法はシボレーに準じていますが、これは設計当初、各部の補器類をアメリカ製に頼らざる得ない状況で、国内で流通しているシボレー車用のパーツを流用できるというメリットもあったためといわれています。当時の仕様書によると、エンジンの脇に見えるキャブレターはアメリカのカーター製だったそうです。

ちなみにエンジンルームは現在のボンネットのように前方が開くのではなく、中心を軸に左右にはねあげるように開きます。これも当時のアメリカ車ではスタンダードな手法でした。

随所に日本を感じられる創意工夫が詰まったインテリア

トヨタ博物館に展示されている車両は、左側面の観音開きの前後ドアを開けた状態で展示してあります。ドアを開けた状態で展示してある車両は非常に珍しいので、訪れた際は是非とも車内を覗き込んでみてください。

まず気になるのがリヤシート。足元はかなり広い設計となっています。その一方でフロントシートは固定式で前後のスライドはもちろんですが、背もたれの角度も変更することができない構造となっています。当時の乗用車はパーソナルカーではなく、タクシーやハイヤー、そして官公庁向けに製作したということもあり、ドライバーの快適性ではなく、後席に乗る人の快適性を優先した結果なのです。

フロントシートは左右が繋がったベンチシートで、シフトレバーはフロア3速のマニュアルシフトです。ちなみにシフトレバーの左隣に立つレバーがサイドブレーキで、ステアリングの下にあるのが手押しラッパです。これは当時の法律で電気式ホーンと手動式の二系統の装着が義務化されていたためだそうです。

注目すべきは木目のダッシュパネルです。実は「AA型」のダッシュはリアルウッドではなく、愛知県豊川市にある豊川稲荷の正門の木目を転写したもの。展示されている復元車も豊川稲荷に赴き、水圧転写で再現しています。なんとも日本的なこだわりを感じる部分ですね。

後席にもうひとつ日本的なものを発見しました。まだ舗装されていない道路が多かった当時、多くのクルマに「アシストストラップ」と呼ばれる吊革が備えられていました。乗降の際や不安定な道路を走る際に使用するため、欧米のクルマでは革ベルトを使うことが多いのですが、「AA型」では日本伝統の組紐が使用されているのです。

じっくりと観察し、当時の工夫や美しいデザインを見つける。そういった出合いがあることもトヨタ博物館の楽しみのひとつ。「AA型」をはじめ多彩なクルマが収蔵されているので、各社が自動車産業に注いだ情熱に想いを馳せながら、ゆっくり散策してみてはいかがでしょうか。

トヨタ自動車の原点であり、国内にオリジナルも現存しない「トヨダAA型」。トヨタ博物館のミュージアムショップにはトヨタ博物館オリジナルの1/43ミニカーも販売されています。フロントのマスコットや七宝焼のエンブレムなど、さまざまなディテールが精巧に再現されています。

※参考資料 『トヨダAA型乗用車』(編集・発行/トヨタ自動車株式会社・トヨタ博物館)

【SPECIFICATIONS】
TOYODA AA

型式
AA
年式
1936年
サイズ
全長4,785mm×全幅1,730mm×全高1,736mm
ホイールベース
2,850mm
車両重量
1,500kg
エンジン
水冷直列6気筒OHV
排気量
3.389L
最高出力
48kW(65HP)/3,000r.p.m.

住所:愛知県長久手市横道41-100
Tel:0561-63-5151(代表)
開館時間:9:30~17:00(入館受付は16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
入場料:大人1,200円、シルバー(65歳以上)700円、中高生600円、小学生400円、未就学児無料(いずれも一般料金、税込み)
※文化館1階、3階は、どなたでも無料で入場できます。
※TS CUBIC CARDを提示し、カードでお支払いいただくと入場料を200円(小学生100円)引きいたします。
https://toyota-automobile-museum.jp/

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