Land Cruiser 7040年のこだわりと進化
新型ランドクルーザー70をオフロードで試す
文/河村 大 写真/トヨタ自動車、森山良雄

Car

理念や基本構造を変えずに何十年も作り続けられるクルマは珍しい。トヨタ ランドクルーザーの「70(ナナマル)」は、そんな稀有なクルマの一台といえる。1984年の誕生以来、世界各地の過酷な環境下で活躍し、「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」として信頼を勝ち得てきた。

そんなランドクルーザー70が、久しぶりに日本へリバイバルした。新たに日本の土を踏んだ70は、ランドクルーザーとしてなにを守り、どこを変えたのか。モータージャーナリストの河村大氏がオフロードからレポートする。

海外戦略の先兵だったランドクルーザー

ランドクルーザーの原点ともいえるトヨタ・ジープBJ型

ランドクルーザーの歴史は1951年のトヨタ・ジープBJ型から始まった。この車は朝鮮戦争のさなか、国土防衛のために創設された警察予備隊からの要請を受けて生み出されたものだ。

試作にあたり占領軍のジープが参考になったことは想像に難くないが、アメリカのミリタリージープが比較的小排気量(2.2ℓ直列4気筒)のガソリンエンジンを積んだライトウェイトな小型4×4であったのに対し、トヨタはトラックの頑丈なシャシーに3.4ℓ直列6気筒の大排気量ガソリンエンジンを組みあわせた。これにより、アメリカンジープよりひとまわり大きく、パワフルな車ができあがった。

結果として警察予備隊には採用されなかったが、この「少し大きくて頑丈、パワフル」な特徴がこの車の運命に大きく影響を与えることになる。

その後、商標権の問題で1954年にランドクルーザーと改名、1955年には20系へと進化、海外へ積極的に輸出されるようになっていった。

海外市場でランドクルーザーの名声を決定づけた40系

この時代、トヨタの乗用車は海外で戦えるだけのレベルに達していなかったが、ランドクルーザーの置かれていた環境は違っていた。重い荷物にも負けない動力性能と信頼性において、ランドローバーやジープといったライバルを凌ぐ性能が与えられていたからだ。

これに気づいたトヨタは、欧米諸国ではなくアジア、アフリカ、ラテンアメリカ、オーストラリアといった第三世界に20系を送り、それを足がかりに販売網を広げていく方法を大々的に採用した。ランドクルーザーはトヨタ海外戦略の先兵として世界に羽ばたいていったのだ。

続く40系の時代に「世界のワークホース」としての立場は決定的なものになった。40系は20系を基本に、走行性能や快適性を改良して1960年にリリースされたモデルだが、この時代は、ランドクルーザーのバリエーションが大きく増えた時代でもあった。

当初はショートしかなかったボディにミドルやロングが加わり、ピックアップやディーゼルエンジンも追加された。荷台を載せずに現地のカスタマイズに任せる「キャブシャシー」での注文も増え続けた。

ヘビーデューティモデルとしては初の6速ATを搭載

新型ランドクルーザー。2004年に一度国内市場から姿を消したが2014年に期間限定で復活、今回が2度目のリバイバルとなる

国内では2004年に惜しまれつつ姿を消したものの、2014年には発売30周年記念モデルとして、セミロングの4ドアとダブルキャブのピックアップが期間限定で復活したランドクルーザー70(ナナマル)。今回、20年ぶりとなる継続販売のカタログモデルとして、セミロングの4ドア仕様が待望のディーゼルエンジンを搭載して復活した。

そのナナマルにひと足早くオフロードで試乗する機会を得たのでご報告したい。試乗車はAXグレードの白。といっても今回は1車型、1グレード、3色だけの設定なので仕様の違いは「色」だけだ。

エンジンはプラド譲りの2.8ℓ直列4気筒ディーゼルエンジンのみ。ミッションもプラドと同じギア比だが、ヘビーデューティモデルとしては初の6速AT搭載だ。

こうして用途や燃料の選択肢が広がることで、ランドクルーザーさらに多くのユーザーに迎えられていった。トヨタは現地の部品供給網も意欲的に整備していったため「どんな仕事にもへこたれない」だけでなく、「万一壊れてもすぐ仕事に復帰できる」唯一無二の実用車として、世界のあらゆる地域で重宝されるようになっていった。

そして1984年、フレームやボディをいちから設計し直した70系が誕生した。この時、40系から派生していたランクルのステーションワゴンは既に60系へと進化していたが、ナナマルはヨンマル直系の子孫として、世界のラフロードで人々の生活を支えるヘビーデューティモデルとしての重責が与えられた。

その70系は今年、登場から40周年を迎える。この間、4ドア・セミロング仕様の追加やエンジンの変更、フロントサスのコイル化など、市場のニーズに合わせて様々な変更が加えられながら継続して生産され続けてきたが、その基本構造は登場以来ほとんど変わっていない。ボディバリエーションはさらに増え、ホイールベースだけでもショート、ミドル、セミロング、ロング、スーパーロングの5種類が存在する。

海外では多くのボディバリエーションがあるが、日本で復活したのはセミロングの4ドア+ディーゼルエンジンという組み合わせ

試乗は愛知県のオフロードコース「さなげアドベンチャーフィールド」で行った。走り出す前にまず、トランスファーレバーを「L」に入れる。これは日常的に使う6速(ハイレンジ)を丸ごと低速化して、極悪路をゆっくりトルクフルに走れるようにする機能だ。

前2段×後6段など、前後に変速可能なギアを備えたサイクリング車に例えると分かりやすい。この車は6速のミッションにハイ・ロー2段のギアを組みあわせているので 2×6=12速 のミッションを備えていることになる。林道や普通のダート走行ならハイレンジでも充分だが、今回のようにアップダウンの激しいコースを低速で這うように走る場合はローレンジが基本だ。

走り出すと車内の揺れがこれまでのナナマルと随分違うことに気が付く。リアのリーフリジッドサスペンションが想像以上にしなやかで凹凸路面へのアタリが柔らかい。

国内では2004年に惜しまれつつ姿を消したものの、2014年には発売30周年記念モデルとして、セミロングの4ドアとダブルキャブのピックアップが期間限定で復活。そして今回、20年ぶりとなる継続販売のカタログモデルとして、セミロングの4ドア仕様が待望のディーゼルエンジンを搭載して復活した。

そのナナマルにひと足早くオフロードで試乗する機会を得たのでご報告したい。試乗車はAXグレードの白。といっても今回は1車型、1グレード、3色だけの設定なので仕様の違いは「色」だけだ。

エンジンはプラド譲りの2.8ℓ直列4気筒ディーゼルエンジンのみ。ミッションもプラドと同じギア比だが、ヘビーデューティモデルとしては初の6速AT搭載だ。

リアスプリングの変更で乗り心地がしなやかに

司令塔のように乗員を高く座らせるコックピット。メーターはアナログからオプティトロンメーター+液晶ディスプレイへと進化した

元々バン登録だったナナマルは荷室に重い荷物を積むことを前提に造られていたが、今回ワゴン登録とするにあたり、リアスプリングのバネレートや形をパッセンジャー優先で煮詰めている。これが凹凸の激しいオフロードにほどよくマッチする。

サスペンションは前後とも、左右のタイヤが1本棒で繋がったリジッド式。バネはフロントがコイルスプリング、リアがトラックと同じようなリーフスプリングという設定だ。これが前後とも空荷のままよく伸びよく縮み、乗り味に比例して土や砂利の路面を柔らかくしなやかにトレースしてくれる。

また、前後ディファレンシャルのギア比が同じディーゼルエンジンのランドクルーザープラドよりローギアード化されたことで、より低い速度で走れるようになっていた。

試乗は愛知県のオフロードコース「さなげアドベンチャーフィールド」で行った。走り出す前にまず、トランスファーレバーを「L」に入れる。これは日常的に使う6速(ハイレンジ)を丸ごと低速化して、極悪路をゆっくりトルクフルに走れるようにする機能だ。

前2段×後6段など、前後に変速可能なギアを備えたサイクリング車に例えると分かりやすい。この車は6速のミッションにハイ・ロー2段のギアを組みあわせているので 2×6=12速 のミッションを備えていることになる。林道や普通のダート走行ならハイレンジでも充分だが、今回のようにアップダウンの激しいコースを低速で這うように走る場合はローレンジが基本だ。

走り出すと車内の揺れがこれまでのナナマルと随分違うことに気が付く。リアのリーフリジッドサスペンションが想像以上にしなやかで凹凸路面へのアタリが柔らかい。

車両区分がバンからワゴンに変更されたため、乗り心地も快適性を重視したものになった

元々バン登録だったナナマルは荷室に重い荷物を積むことを前提に造られていたが、今回ワゴン登録とするにあたり、リアスプリングのバネレートや形をパッセンジャー優先で煮詰めている。これが凹凸の激しいオフロードにほどよくマッチする。

サスペンションは前後とも、左右のタイヤが1本棒で繋がったリジッド式。バネはフロントがコイルスプリング、リアがトラックと同じようなリーフスプリングという設定だ。これが前後とも空荷のままよく伸びよく縮み、乗り味に比例して土や砂利の路面を柔らかくしなやかにトレースしてくれる。

また、前後ディファレンシャルのギア比が同じディーゼルエンジンのランドクルーザープラドよりローギアード化されたことで、より低い速度で走れるようになっていた。

絶大な効果を生むアクティブトラクションコントロール

エンジンは高い熱効率を誇る2.8L直列4気筒ディーゼル1GD-FTV型を搭載。パワー&トルクは150kW(204ps)&500Nm(51kgm)

エンジンも扱いやすい。最大トルク500N・mはナナマル史上最高の値だが、これを1600rpmという低回転域から幅広く発生してくれるため、見上げるようなヒルクライムでも2.3トンからなる車体を軽々と運び上げてくれる。そして凹凸の激しい岩場でもクリープ現象プラスαのアクセルワークで十分トルクフルに、安全に走り抜けてることができた。

新たに装備された「アクティブトラクションコントロール」の効きもいい。これは空転するタイヤに「チョンチョン」と軽くブレーキをかけてくれる機能だが…「ブレーキで前進する」と言われても分かりづらいだろうか?

トランスミッションはスーパーインテリジェント6速オートマチック。その右側にあるのが駆動方式を切り替えるトランスファーレバー

でも、片輪を溝に落とした車が反対側のタイヤを高く浮かせ、空しく空回りさせている姿はなんとなく想像が付くはずだ。これは駆動力を左右に振り分けるのに必要な「ディファレンシャル」がイタズラをしているから。

その仕組みはともかく、浮いて空転しているタイヤにブレーキをかければ…つまりそのタイヤが擬似的に接地しているような状態にすれば「両輪とも地面を蹴られる」わけで、実際に接地している溝側のタイヤが地面を蹴ることで動くことができる…といえば、なんとなく分かっていただけるだろうか。

とにもかくにも、新しいナナマルはこの電子デバイスのおかげで、ほとんどの難所を、ただアクセルを踏むだけで難なく走り抜けられるようになった。つまり、誰でも簡単に悪路を運転できるようになったのだ。

前後デフロックの凄まじい走破性

空転する車輪にブレーキをかける「アクティブトラクションコントロール」のおかげで誰もが手軽にオフロード走行を楽しめる

だが、この優れた電子デバイスを持ってしても走破できない極悪地形も存在する。例えば右前輪と左後輪のサスペンションが伸びきって、対角線上にある2輪が空転してしまうような状況だ。これを「対角線スタック」と呼んでいる。この状態がより激しく、そして登り坂等に組み合わされると、電子デバイスの力を借りても簡単には登れなくなってしまう。なぜなら、電子デバイスは「タイヤの回転を止める」負の制御が基本となるからだ。

こんな時、力を発揮してくれるのが伝家の宝刀「デフロック」だ。これは電子的なブレーキ制御とは180度考え方が違う。左右のタイヤに回転差をつくりだすディファレンシャルをロックして左右輪を全く同じ速度で回してしまえ!という「正」の制御が行われるからだ。

このデフロックをリアだけに適応するのが悪路の第一段階。それでも走破できそうもない極悪地形を目の当たりにしたら、レバーをもう1段階回すことで「前後デフロック」状態を作り出すことができる。

極悪地形を走破するときは「前後デフロック」モードが威力を発揮する。副作用もあるので限られた場面での使用がおすすめ

これは凄まじい威力だ。なぜなら四輪が全て直結され、全てのタイヤが同じ回転数でしか回らなくなるからだ。それだけに曲がることは至難の業だだが、この状態のナナマルの走破性はもはやスゴ過ぎて筆舌に尽くしがたい。

だが、前後デフロックは本当に使わなければならない状況でのみ、ピンポイントで使いたい。

なぜなら、車がどんな角度に傾こうとも、グイグイ登っていってしまうため、使い方を誤ると車を大きく斜めに傾けて横転させてしまったりするからだ。だから、極悪路を脱出したらデフロックスイッチはすみやかにオフにしよう。普通の悪路なら「アクティブトラクションコントロール」だけでも充分過ぎてお釣りが来るような実力だ。

歴代ナナマル随一の仕上がり

ラゲッジルームのドアは観音開き。狭い場所などでの使い勝手に優れる

他にも、急坂を下りる際、各輪のブレーキを個別に制御して安全な速度で下りられるようにする「ダウンヒルアシストコントロール」、坂道に貼り付いた状態でブレーキを自動的に効かせ、ブレーキペダルからアクセルペダルに踏み変える際、ズリ落ちないようにしてくれる「ヒルスタートアシストコントロール」など、悪路で役に立つ機能がたくさん用意されている。それらの機能が全て、アップダウンの激しいコースで実用的に、効果的に機能することが今回の試乗でハッキリ確かめられた。

何よりも驚いたのは、ブロックパターンの控えめな、どちらかというとオンロードよりの性能が与えられたノーマルのタイヤのまま、持っている武器だけで、この激しいコースを簡単に走り切ってしまったことだ。しかもボディのどこも擦ることなく…。

おそらく、同じように前後デフロックを備えたランクル300のGR-SPORTSも全く同じ路面を走破してしまうだろう。だが、前後バンパーや左右のスチール製サイドステップは無事では済まない可能性が高い。

後席使用時のラゲッジルーム。後席を前方に跳ね上げるとさらに広大なスペースが生まれる

それでも「どこへでも行き、生きて帰れる」ポテンシャルに変わりはないが、そこを無傷で走れてしまうナナマルのボディワークの素晴らしさと、ノーマルタイヤの性能を完全に使いこなす基本性能の高さに脱帽するしかなかった。

正直、ワークホースとしてのナナマルには多くの快適性を望んでいなかった。だが、今回の試乗でその考えが大きく変わった。

凹凸路をこれだけしなやかに、トルクフルに走れる総合力はおそらく歴代ナナマル随一の仕上がりだ。今回はオンロード試乗こそできなかったものの、ファミリーカーとして充分に通用するであろう乗り心地の良さ、そしてどこへでも長距離でも連れて行ってくれるであろう懐の深さを十二分に想像することができた。

本当に素晴らしい車だと思う。今はただ、この車が可能な限り多くの人に行き渡ってくれることを願うばかりだ。



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