Art Districtアート界の風雲児・バンクシーの軌跡に迫る!
版画作品「《風船と少女》Girl with Balloon」が104万2,000ポンド(およそ1億5,000万円)で落札されるや否や、会場にアラームが鳴り響き、額縁に仕掛けられていたシュレッダーが作品を断裁し始める……。2018年10月5日に老舗オークションハウス『サザビーズ(Sotheby’s)』で繰り広げられた“事件”は世界中のメディアが報じ、仕掛人であるアーティストは誰もが知るところとなりました。その名はバンクシー(Banksy)。
今年3月には「《ゲームチェンジャー》Game Changer」が約25億円で落札されるなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで活動するバンクシーとは一体、何者なのでしょうか? アートシーンを、世間を騒がせる時代の寵児の魅力に迫ります。
10ドル足らずの路上販売からスタートしたサクセスストーリー
バンクシーを知るにあたり、お話を伺ったのはアートディーラー『CURIO(キュリオ)』の代表・渡木(とねぎ)章浩さん。国内外のギャラリー、オークションハウスと太いパイプをもち、アートコレクターが厚い信頼を寄せる『CURIO』は、バンクシー作品の取引にも関わってきた実績をもちます。
「昨年1年で当社で扱ったバンクシー作品は10点ほどです。年々扱い作品数は増えていますし、価格が高騰している点も人気の高まりを物語っていますね。そもそもバンクシーがアートシーンに登場したのは2003年頃でしたが、落札額は100万円もしなかったと思います。時を経て、私が初めてバンクシー作品を扱ったのは7〜8年前のこと。まだ日本国内では知る人ぞ知るアーティストで、作品は「《ラヴ・イズ・イン・ジ・エア》Love Is In The Air」で取引額は200万円程度だったと記憶しています。億単位の値段がつくようになったのはここ2〜3年ですね」
「バンクシーは元々、自身で版画を路上販売していたんです。その価格は10ドルほどだったと言われています。今でも当時の版画を目にすることがありますが、画鋲でピン留めしていた跡が残っているところから、本人にとっても、購入者にとってもアート作品というよりポスター感覚だったと推察されます。
さて、そんなバンクシーがここまでの人気を博すようになった背景には2つの要因があると考えています。まずは『わかりやすさ』。バンクシー作品の魅力はユーモラスさと社会風刺のコントラストにありますが、その題材が身近でわかりやすいんです。そしてもう1点が『まったく新しいアプローチ』です。これまでのアートシーンでは当然のことながら作品自体が評価対象でしたが、バンクシーはシュレッダー事件然り、『Dismaland(ディズマランド)』(社会問題をシニカルに伝えるために期間限定で現れた某テーマパークを模した施設)など話題を生み出すことでも評価を高めてきました。
奇抜なトピックを世界中のメディアが報じることで、多くの人がバンクシーの存在を知り、作品の価値が高まってきたのです。これこそがバンクシーを時代の寵児に押し上げた最たる理由でしょう。その手法の賛否は別れるところですが、私はアートと人々の繋がり方に新風を吹き込んだ点、アートに興味をもつ起爆剤になり得る点を評価しています」
バンクシーの醍醐味は“アート鑑賞×社会問題への気付き”
「人気の高まりを分析するのは野暮だったかも知れません。断言できるのは、バンクシー作品には特有のインパクト、誰もがクスリと笑えるユーモア、そして社会風刺のバランスが絶妙に保たれているということです。『《風船と少女》Girl with Balloon』の構図に見て取れるように、もちろんアート作品としての秀逸さも備えています。そんなバンクシー作品の楽しみ方はズバリ、なにがテーマか、何を批判しているかに想いを馳せながら眺めることだと思います。繰り返しになりますが、いずれの作品もわかりやすいテーマですので、アートを楽しみながら、社会問題に目を向ける機会になると思います」
【バンクシーのオリジナル作品が、ストリート作品の原寸大再現と共に見られる・・・】
WHO IS BANKSY?
バンクシーって誰?展
会期:2021年8月21日(土)〜2021年12月5日(日)
会場:寺田倉庫 G1ビル(東京・天王洲)
〒140-0002 東京都品川区東品川2-6-4
会場時間や休館日などの詳細は以下のURLよりご確認ください。
https://whoisbanksy.jp/
【取材協力】
CURIO問い合わせ:0120-840-807
https://curio-w.jp/
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