Local activities in Toyama地域のとりくみ「富山」:
次の世代にとって、クルマが心躍る存在となるために
Text:PONCHO
Photo:Higuchi Yuichiro、トヨタカローラ鹿児島
「若年層のクルマ離れ」が語られるようになった今、未来のクルマ業界人を育てるために、ディーラーはさまざまな取り組みをおこなっています。子どもたちに 「クルマに興味を持ってもらう」ために、ネッツトヨタ富山が行っている素晴らしい取り組みとは? 取締役部長の村上幸雄さんにお話を聞きました。
カーディーラーは、クルマを販売することが仕事です。しかし、訪れたお客さまに、これまでトヨタのクルマを乗り続けてきた方に、または新たに興味を抱いた方に向けて販売しているだけの時代は、もう終わりを迎えているのかもしれません。
今回紹介する『ネッツトヨタ富山』の企業情報を掲載しているWEBページには、以下のような文章があります。
“その昔、クルマは便利な道具でした。時を経てクルマは進化し、ステータスであり、自己表現であり、さまざまなニーズが生まれていきました。クルマは人々に夢を与えるものでした。しかし、昨今言われるクルマ離れ、近年のリサーチ結果を目にすると、若年層がクルマに抱くイメージの第1位は「クルマは道具」といったものでした。たしかに、原点回帰の率直なご意見かもしれません。考えてみると、若い世代のほうがナチュラルにクルマを捉えている様にも思えます”
「若年層のクルマ離れ」も、それが言われるようになって久しいもの。そうした変化に対してディーラーは、どんな取り組みを行なっているのでしょうか?
その取り組みについて、ネッツトヨタ富山の取締役部長の村上幸雄さんに尋ねると、想像以上に進んでいる「クルマ離れ」の状況が見えてきました。
“クルマは道具”というショックな現実
「少し前に、県内の工業高校でクルマに興味を持ってもらうためのイベントを開催したことがあります。富山県は高卒での就職率が高い地域ということもあり、サービスのエンジニアとして就職を考えてもらいたいという狙いもありました。
そこでトヨタだけでなく、自動車メーカー各社のエンブレムを見せて、どこのメーカーのものかを質問したところ、ほとんどの生徒さんが「わからない」、「知らない」という回答だったんです」
富山県は自動車免許保有者数が高く、全国5位とのこと。世帯当たりの自動車保有台数では、全国2位です。免許を取得して、クルマを購入する若者が少ないわけではないようです。
「以前と異なるのは、購入の際に親御さんと一緒に来店されて、親御さんの勧めるクルマを選ぶ方が増えています。そうして選ぶのは、プリウスやアクアです。もちろん、それらのクルマもよいものですが、“クルマは道具”という考えを反映したチョイスに思えます」
もしかすると、彼らの価値観に合ったクルマそのものの情報や、カッコいいと思えるクルマを題材にした表現が減っていることも原因なのかもしれません。
こうした背景の中で、ネッツトヨタ富山では、どのような取り組みを行なったのでしょうか?
子ども向けイベントで好奇心を刺激
小学生くらいまでのお子さんであれば、現在でも鉄道やクルマを含めた乗り物に興味を抱く子が多いものです。そこで村上さんは、小学生向けの楽しいクルマイベントを開催するようにしたといいます。
「イベントではカート乗車体験や組立式電気自動車キットの組み立てを行なったり、さらにトヨタ白川自然学校での自然体験、SDGsイベント、近隣や海岸での清掃活動などをしたり、コロナの影響が大きくなるまではさまざまなイベントを開催していました。
また、イベントや各店でキッズエンジニアチャレンジスクールを開催。お子さんたちにエンジニアウエアを着てもらい、インパクトレンチを使ったタイヤ交換やボルト締めなど、自動車エンジニアの仕事を体験してもらっています。
このスクールの初回開催は2010年だったのですが、最近、スクール体験者が、実際にサービスエンジニアとして就職してくれたんです! まさにこの取り組みが、大きな成果につながったのだと喜んでいます!」
エンジニアへのなり手不足も、ディーラーの大きな課題。状況改善のための種撒きは、クルマの魅力を伝えていくことから、コツコツと始まっていることがわかります。
地域の清掃活動から垣根を越えたイベントへ
さらに、小学生だけでなく、クルマ好きが楽しめるイベントも開催しています。
「『ご近所クリーン大作戦(※)』という、ネッツトヨタ富山が2006年から取り組んできた地域貢献の清掃活動を、2019年から富山新庄地区のカーディーラー8社で共催。それが縁となり、ホンダカーズ富山・新庄本町店さんと北陸スバル自動車・富山本店さん、そして弊社のGR Garage富山新庄の3店合同で、それぞれのクルマファンが各店を行き交うイベントを開催しました。
各社の社長が話をして「地域のみなさんにクルマに興味を持ってもらう」ことを目的にした、全国的にも珍しい取り組みです」
(※)ゴールドカード会員誌「Harmony 2023 春号」にて掲載
旧車、レースカー&ラリーカー等を各店で同時展示。クイズラリーや各社歴代の名車ナンバーワンを投票で決める内容だったそう。
なにより、それぞれに贔屓にしているお店があり、ほかのディーラーに興味はあってもなかなか高い敷居をまたぐことができなかったクルマ好きには、格好の場となったといいます。
「お客さまだでなく、スタッフにとっても他のディーラーに行き、自分たちとは異なるよさを知る機会となったようです。
人とクルマが行き交い、人とクルマの新たな関係をつくるコミュニティの場となることを目指しているというネッツトヨタ富山。クルマ離れと言われる時代であっても、クルマのワクワクを伝えられる方法はまだまだあることを教えてくれる、好例といえます。
ネッツトヨタ富山の取り組みは、ゴールドカード会員誌「Harmony 2023 春号」にて掲載中です。下記よりログインいただくと、E-bookからご覧いただけます。
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ネッツトヨタ富山
https://www.netz-toyama.co.jp/