Special butter to taste2024年は「味わうバター」が新潮流!?
いま知りたい、バターの奥深き世界

Lifestyle

身近な食材として昔から親しまれているバター。最近ではバターの原料となる生乳の個性を前面に押し出したリッチなバターや、それらを使用した高級なバタースイーツが話題を集めています。今回は、国内外150種類以上のバターを食べ比べてきたバター専門家が、バターのトレンドを解説。ギフトにもおすすめしたい専門店の逸品もご紹介します。

産地で異なるバターの味わい
こだわりの「クラフトバター」が人気沸騰中

バターに数千年の歴史あり! そもそもバターとはどんな食べ物?

健康志向の高まりに伴い、よりヘルシーな食材が好まれる現在。バターは縁遠い食材と思われがちですが、脂肪の代謝が活発になる酪酸をたくさん含んでおり、脂肪の分解を促すなど、高い栄養価とともに健康の側面でも期待されています。まずは、バター専門家として多数のメディアに登場する長尾絢乃さん(以下長尾さん)に、バターの基本情報を解説していただきます。

そもそもバターとは、どんな食材なのでしょうか。
「バター発祥の正確な年代は不明です。しかし、生乳を容器に入れて運んでいた時に偶然できたという逸話があり、紀元前5世紀のメソポタミア文明の頃にはバターのような“乳脂の塊”が存在していたことがわかっています」とはバター専門家・長尾さん。

「日本では、奈良時代の後期に『醍醐(だいご)』と呼ばれるバターに近いものが記録されています。食材としてのバターがつくられ出したのは江戸時代中期頃。現在の千葉県で、『白牛酪(はくぎゅうらく)』と呼ばれるバターのようなものが存在した記録が残っています。そして明治時代以降、西洋文化の流入による酪農の発展とともに、バターは日本中へと広まりました」(長尾さん)。

人気の「発酵バター」とは? バターの種類を解説

「バターにはさまざまな種類があり、それぞれに用途があります」と長尾さんは言います。まず、バターの種類について教えていただきました。

バター(非発酵)

日本で市販されている、もっともポピュラーなバター。保存性と風味のために塩を加えるものが「加塩バター(有塩バター)」、加えずに作るものが「食塩不使用バター」です。加塩バターはトーストやパンケーキに塗る際に使われます。食塩不使用バターは、塩分量を正確に計測したい場合の料理やお菓子作りなどに使用されます。

発酵バター

バターを作る際、原料となるクリームに乳酸菌を添加して発酵させて作るものです。発酵させることによってコクと風味が際立つため、焼菓子やクロワッサンなど、バターをたっぷり使用するメニューに使うと、芳醇な香りが際立って、とても深みのある味わいになります。

フランスでは発酵バターの消費は9割以上で、クロワッサンなどにも使われている通り、普段の料理や食生活においてポピュラーな存在です。

現在のバター事情を長尾さんに聞いてみました。
「製造者は、ナショナルメーカーから小さな工房までさまざまあります。牛を飼育している風土の特徴や餌の種類によってバターの味わいに違いが出るため、近年はそうした特徴を活かし、少量生産で流通する『クラフトバター』が親しまれています。個人経営のスーパーや、自治体のアンテナショップなどをチェックしてみてください。とてもユニークなバターに出合えます。中には手のひらサイズで2,000円超えという、高級バターも存在します」。

専門家が厳選!
バターの美味しさを味わうスイーツ3選

手軽に贅沢感を味わえるバターのお菓子。お取り寄せ&手土産に選びたいのは?

2009年にフランスの高級バター『エシレ』の専門店が東京・丸の内にオープン。バターを使ったお菓子が特別感をもって迎えられるようになりました。

また、ここ数年で、『バターのいとこ』、『BUTTER 美瑛放牧酪農場』、『クラフトスイーツ Butters』など、バターを使ったスイーツブランドが続々と登場しています。その背景には何があるのでしょうか。

「口に含んだ瞬間、口の中いっぱいに芳醇な香りとジューシーな味わいが広がるバターを使ったスイーツ。この贅沢感を手軽に楽しめるというのが、流行の背景ではないかと思っています。その中でも増えているのが「バターサンド」。軽快なサブレの食感と、口の中で溶けていくバタークリームという、異なる食感の組み合わせを楽しめるのが人気の理由ですね。バタークリームはお店によってレシピが異なり、それぞれにアレンジや工夫も加えられているため、店ごとの味を比較できるのも楽しみのひとつです」。

こう語る長尾さんが、人気のバタースイーツを楽しめるお店のメニューを厳選してご紹介します。

ミルクティーのような風味の贅沢な味わい
Fairycake Fair「フェアリークリームウィッチ レーズン生バターサンド」

華やかな見た目が美しいカップケーキ&ビスケット専門店。自社のアトリエで職人が一つひとつ手作りし、保存料などを使わずに仕上げています。

「フェアリークリームウィッチ レーズン生バターサンド」は、ホイップしたバターに生クリームを加えた「生バタークリーム」に、紅茶に漬け込んだフルーティーなレーズンがたっぷり入った重厚感のある味わい。ダークチョコレートがかかったビスケットは、“さっくりしながらもしっとり”という絶妙な食感です。日が経つごとにビスケットとクリームが馴染み、よりしっとり感が加わります。

<長尾さんコメント>
「キュートな見た目とパッケージは、女性に人気!バタークリーム自体も美味しいのですが、中に入っている紅茶漬けレーズンの効果で、ミルクティーのような風味になっているのがユニーク。ちょっとした手土産にも喜ばれる逸品です」

Fairycake Fair
フェアリークリームウィッチ レーズン生バターサンド 5個入り
2,000円(税込)
https://fairycake.jp/

伝統の醗酵バターがたっぷり
小岩井農場「純良醗酵バターケーキ」

岩手県雫石町・滝沢市に本拠を置く小岩井農場は、多くの人に知られる歴史ある大型農場です。敷地内の「小岩井農場まきば園」は観光エリアとして人気で、農場産の原料を使用して作るお土産品は、乳製品、クッキーやジャム、カレーなど多彩です。

「純良醗酵バターケーキ」は、小岩井農場内で育てられた牛の生乳を使い、独自発酵製法によって1902年から作り続けられている「醗酵バター」をふんだんに使用。農場内で育つ「朴ノ木」を使った木枠の中で、時間をかけて丁寧に焼き上げています。

<長尾さんコメント>
「その名の通り、純良な醗酵バターのリッチな香りを楽しめるバターケーキ。シンプルな見た目ですが、重厚な生地がたまりません!食べる前に少し温めてバターをふんわり香らせたり、冷蔵庫で冷やしてしっとりとした食感を味わったりと、さまざまな食べ方が楽しめます」

小岩井農場オンラインショップ
小岩井農場物語 純良醗酵バターケーキ 1本8カット
2,270円(税込)
小岩井純良バター(復刻版) 160g
800円(税込)
https://www.koiwaishop.jp/

バターがとろける“進化系どら焼き”
中尾清月堂「ホットドラバター」

1870年創業、富山の老舗和菓子店中尾清月堂による新感覚のどら焼き。看板商品であるどら焼きにバターが加わったもので、食べる前に軽く温めることにより、自家製の餡ととろける濃厚なバターのハーモニーが楽しめます。定番のオリジナルに加え、クリームチーズ、アーモンドチョコ、五郎島金時、カレーの5種類を展開。

どら焼きに使うバターは、それぞれの具材に合ったものを2種類、ブレンドで開発しています。オリジナルの小豆に入っているバターはたっぷり9g! 温めてトロッと溶けたバターと相まって、新しい食感が生まれます。

<長尾さんコメント>
「バターがジュワっと口の中で溶けるのがたまらなく美味しい進化系どら焼きです。レンジで温めた後、約10秒袋の上から手で軽く押してから食べると、バターが染み込んでよりおいしく食べられます」

中尾清月堂
ホットドラバター オリジナル
302円(税込)
https://hotdorabutter.com/

みなさんいかがでしたか?知るほどに奥が深い、バターの世界。バターを食べ比べ、その違いや味を知り、シーンや料理によって使い分ければ、楽しみ方がもっともっと広がります。オリジナリティが光るバタースイーツをお取り寄せして、“とびっきりの幸福感”を味わってみてはいかがでしょうか。

“バターマニア”ことバター専門家
長尾絢乃(ながおあやの)

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部 食品科学科卒業。在学中に実習先の牧場で搾りたての生乳の味に感動し、牛と乳製品マニアに。卒業後は観光牧場で約10年間勤務。製菓材料販売の会社やバター菓子の会社、日本料理レストランの運営を行う会社などで、WEBディレクター・WEBマーケターとして勤務するかたわら、バターの解説などを行う。国内外150種類以上のバターを味わうバター愛好家。TBS『マツコの知らない世界』、フジテレビ『Kinki Kidsのブンブブーン』、NHK『あさイチ』などのテレビ番組や雑誌『dancyu』『OZ magagine』など出演多数。
https://www.buttermania.com/

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