A special journey by car ferry愛車とともに大海原へ!
カーフェリー旅の特別体験

Travel

四方を海に囲まれた日本では、古くから海運や造船の技術が発展していました。1960年代、モータリゼーションの波とともに登場し、旅行のイメージを変えたのがカーフェリーの存在です。愛車とともに乗船し、ゆっくりと時間をかけながら移動する“非日常のクルーズ体験”は、旅のスタイルが多様化する今、再び注目を集めています。ここでは、カーフェリーの旅の魅力や、今行くべき代表的なふたつの旅のコースをご紹介します。

快適な長距離移動と非日常体験が同時に楽しめる!

カーフェリーとは、クルマやオートバイなどを積んで運ぶ輸送船のこと。その魅力は、愛車でそのまま乗り込み、目的地に着いた後も乗り慣れたクルマで観光地を巡れるという自由度の高さ。そして、長距離移動でもドライバーがゆっくり過ごすことができる快適さなどにあります。また、ペットと一緒に乗船できるカーフェリーもあります。

最近のカーフェリーは、グレード別によって個室の客室が用意され、ホテルさながらのスイートルームを完備しているケースもあります。さらに、大浴場やエンターテインメントショー、シアター、ジムなど、さまざまなサービスを備えている船舶もあります。なにより、日常生活では体験することのできない広大な海上で過ごすダイナミックな船旅は、かけがえのない時間をもたらしてくれます。

名古屋〜仙台のクルージングをレポート

まず、カーフェリーへの乗船で注意しておくべき点をふたつご紹介します。ひとつは、ドライバーは事前に車検証の提示が必要で、同乗者とは乗船方法が異なることがあります。また、ペットと同乗する場合、指定の場所以外でゲージから出すことができないなど、船会社や船舶によってルールが異なることがあるので、チケット取得時に乗船するカーフェリーのホームページを必ずチェックしましょう。

太平洋フェリーの「いしかり」。画像提供:太平洋フェリー

最初にレポートするのは、「太平洋フェリー」によるカーフェリー旅です。太平洋フェリーは、名古屋~仙台~苫小牧の1,330kmを結ぶ定期航路を、「きそ」、「いしかり」、「きたかみ」の3船で運航。優雅な空間と充実したホスピタリティが評判で、船旅専門誌『クルーズ』の「フェリー・オブ・ザ・イヤー」を第1回から31年連続で受賞しています。

その中で、同社のフラッグシップであり、国内最大級の大型船「いしかり」で楽しむ名古屋~仙台の船旅をご紹介します。

多彩な客室から美食レストランまで、ホテル並みの空間

この航路は、19:00に名古屋を出発します。黄昏時の美しい港の光景が旅の始まりを演出し、ボーディングブリッジを渡るだけで早くも心が躍ります。

出港前の名古屋港の夕景。画像提供:太平洋フェリー

乗船すると、目の前に広がるのは5階から7階まで3層吹き抜けの開放感あふれるエントランスロビー。エーゲ海のきらめく青い海と空をイメージした明るい船内は、ホテルさながらの別世界が広がり、散策するだけで気分が盛り上がります。

フォトジェニックなエントランスロビー。画像提供:太平洋フェリー

「いしかり」では、レジャーやビジネス、里帰りなど、さまざまなシーンに合わせてスイートからシティホテルレベルの客室、カプセルホテル、大広間タイプの相部屋まで、バラエティに富んだ全11種類のタイプから選べます。

ロイヤルスイート(2~3名定員)。画像提供:太平洋フェリー

最高級の客室は、リビングとベッドルームの空間が分かれた「ロイヤルスイートルーム」。約52㎡の広々とした空間は国内フェリー最大級で、船首側のバスルームでは、大きな窓に映る大海を眼前に湯浴みを満喫できます。

ツインルームの特等洋室(2~3名定員)。画像提供:太平洋フェリー
2~3名定員、3~4名定員の2タイプから選べる特等和室。画像提供:太平洋フェリー
3~4名定員の一等和洋室 画像提供:太平洋フェリー

その他、進行方向の眺めが一望できる船首に位置し、ラグジュアリーな雰囲気が漂う「スイートルーム」、靴を脱いで寛げるカーペット敷きの小上りがあり、小さな子ども連れでも安心の「1等和洋室」などもおすすめです。

美しい風景を臨みながら楽しむディナーは格別。画像提供:太平洋フェリー

客室に荷物を置いた後、スカイデッキを訪れると、美しくグラデーションを描く夕景に思わず目を奪われます。その美景を臨みながら、バイキングでディナーを堪能できるのが船内レストラン「サントリーニ」です。

メニューは航路で異なるので、往復で利用しても飽きないのも魅力。画像提供:太平洋フェリー

食事は、季節の食材を採り入れた和洋中のメニューが揃います。過去には、愛知県のブランド豚を使用したローストポークやカツオのたたき、宮城県のホヤの天ぷら、北海道のザンギなど、寄港地ゆかりのメニューが振舞われたこともあります。

シアターラウンジでは、プロのエンターテイナーによるショーが無料で楽しめる。画像提供:太平洋フェリー

食後は、シアターラウンジ「ミコノス」へ。本格的なステージでは、和太鼓や三味線、中国の伝統的な打弦楽器・揚琴(ようきん)など、さまざまなジャンルのアーティストによる華やかなショーを不定期で開催。食後の余韻をより豊かな時間に変えてくれます。

船上ならではの絶景と迫力を体感!

洋上で眺める感動的な日の出は、カーフェリーでの船旅ならでは。画像提供:太平洋フェリー

翌朝、水平線から昇る朝日が素晴らしい一日の始まりを報せてくれます。運がよければ、イルカの群れやクジラが見られることも。澄み切った空気に包まれた後は、朝風呂へ。

大海を臨みながら入浴できる「展望大浴場」。画像提供:太平洋フェリー

ゆったりと手足を伸ばせるジャグジーも完備した大浴場からは、大海原の絶景が望めます。乗船直後から目的地に入港する30分前まで、24時間いつでも入浴できるのもうれしいところ。

「ヨットクラブ」では、カレーやうどん、ホットケーキなどの軽食やドリンクが気軽に楽しめます。画像提供:太平洋フェリー

つづいて、スタンドコーナーの「ヨットクラブ」でモーニングを楽しみ、客室や展望通路で思い思いの時間を過ごします。太平洋沖は基本的に電波が通じません(太平洋フェリーでは1回の乗船時に1,078円 で無線ネットワークを使用できます)が、デジタルデトックスすることで日々の雑事や仕事から解放されて、ゆっくりと自分時間に浸りながらのんびり過ごせます。

すれ違いのドラマティックな光景は一生の思い出に。画像提供:太平洋フェリー

ランチを楽しんだ後、14:30頃に姉妹船とのすれ違いが…。この航路の大きなハイライトです。大型フェリーが間近に迫り、お互いの航海の無事を祈る汽笛が上がる光景は、一見の価値あり。迫力に圧倒されながら、旅人同士が甲板から手を振り合う旅情は、他では味わえません。

そして16:40頃、仙台港に入港。非日常の海上で、ホテル宿泊のような贅沢な滞在を満喫する特別な体験が幕を閉じた後は、愛車に乗って陸の旅へ。すぐに次の観光へシフトできるのも、カーフェリーの旅の魅力です。

今回は、名古屋~仙台の航路をご紹介しましたが、仙台~苫小牧(北海道)間の航路も魅力です。仙台を19:40に出港し、翌朝11:00頃には北海道に到着するので、午前中から観光をめいっぱい楽しめます。

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太平洋フェリー

神戸~宮崎間を優雅に旅するナイトクルージング

神戸~宮崎間の495kmを航海する宮崎カーフェリーの「フェリーたかちほ」。画像提供:宮崎カーフェリー

次にご紹介するのは、関西から九州へのカーフェリーの旅です。この中でおすすめなのが、宮崎カーフェリーの神戸~宮崎を結ぶ「フェリーたかちほ」です。

プレミアムツインルーム(2~3名定員)。画像提供:宮崎カーフェリー

2022年4月に就航した「フェリーたかちほ」は、まさに“移動するホテル”。温暖な宮崎の気候をイメージした船内は、定員の半数以上を占める個室が216室と、プライベート空間が充実。快適なプレミアムタイプからコンパクトなシングルまで、さまざまな客室が揃っています。

イベントスペースでは音楽ライブなどを開催。画像提供:宮崎カーフェリー

さらにキッズコーナーやウィズペットルーム、サーフボードロッカーなど、多様なニーズに対応した設備が充実しています。また、宮崎の食材や郷土料理がバイキングスタイルで楽しめるレストラン、海を眺めながらリラックスできる大浴場など、快適な旅を彩る施設も魅力。神戸発の航路で望める港町のドラマティックな夜景をはじめ、雄大な景色を体感しながら、特別な船旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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