FUJI MOTORSORTS MUSEUM富士モータースポーツミュージアムで見るモータースポーツの歴史と名車たち

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富士スピードウェイの周辺には新施設が続々オープンしていますが、その中から今回ご紹介するのは、富士モータースポーツミュージアム。日本を代表する国際サーキット「富士スピードウェイ」のすぐ隣にあり、希少な実車を間近で楽しめるだけでなく、自動車レースの歴史を通じて、自動車の発展や進化を学ぶことができます。その魅力や見どころを紹介しましょう。

・大人もこどもも、クルマミュージアムがおもしろい
・130年の自動車の歴史を40台の展示車両で学ぶ
・カフェからの景色は老若男女を問わない見どころ!
・歴史を学んだ後はモータースポーツの今を知る場所へ

大人もこどもも、クルマミュージアムがおもしろい

世界中のレースカーが一堂に会する施設

日本には多くの自動車関連のミュージアムがあります。これまで紹介してきたトヨタ自動車博物館やトヨタ会館もそんなミュージアムのひとつです。猛暑が続きそうなこれからの季節、屋内でゆっくりと展示車両を見ることができるクルマミュージアムは、エンターテイメントとしてもドライブとしても最適な場所と言えるでしょう。

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そんなクルマミュージアムですが、変わった車両ばかりを集めるミュージアムだったり、ひとつのテーマに特化したミュージアムだったりとさまざま。今回ご紹介するのは、その名のとおり“モータースポーツ”に特化したミュージアムです。

富士モータースポーツフォレストの今後に注目

静岡県駿東郡にある富士モータースポーツフォレストは、現在周辺施設の整備が急ピッチで進められている富士スピードウェイを中心に、ホテルやレーシングチームのガレージなどが集まり、クルマ好きが丸一日「見て」、「体験して」「楽しむ」ことができる施設となる予定です。

2023年5月には富士モータースポーツフォレストの玄関口となるウェルカムセンターがオープンし、今後も周囲にレーシングチームのガレージが続々オープン予定。また、2027年度には新東名の小山パーキングエリアにスマートICが開通予定で、アクセスも大幅に向上し、エリア一体が大きな発展を遂げることとなるでしょう。

この記事では、富士モータースポーツフォレストと新しくできたウェルカムセンターにフォーカスし、「見て」楽しむポイントをお伝えします。

130年の自動車の歴史を40台の展示車両で学ぶ

富士モータースポーツミュージアムは、2022年10月に同時にオープンした富士スピードウェイホテルに併設されています。その敷地は富士スピードウェイに隣接しており、西ゲートを通過する際、左奥に巨大な建物が建っているので、すぐにわかるはずです。この建物の1階と2階がミュージアム、3階以上がホテルとなっています。ちなみにホテルの東側客室からは富士スピードウェイが、西側客室からは雄大な富士山を望むことができます。

ホテルと共用のエントランスに立つと、まず目に入ってくるのが、宙に浮いているかのようにディスプレイされたトヨタ7です。これだけでもインパクト十分ですが、これはまだミュージアムの敷地外。その左に向かうとミュージアムの入り口となり、正面右側のエスカレーターで3Fに上がると富士スピードウェイホテルのロビーとなっています。

館内では国内外の自動車メーカー10社の連携によって、常時約40台の車両を通じて約130年の自動車レースにまつわる歴史を紹介しています。1から15までのテーマに沿って展示され、単に珍しいレースカーを展示するだけでなく、そのレースカーが誕生した背景や開発にまつわる想いを合わせて紹介することで、レースによって鍛えられた自動車業界全体の歴史も学ぶことができるようになっています。

チケットを購入していよいよミュージアムに入ります。最初に目に入ってくるのが、フランスPanhard & Levassor(パナール・エ・ルバッソール)のTYPE B2というフランス最古の自動車会社の車両です。近代自動車の祖と称され、フロントエンジン、リア駆動というFR方式を最初に採用した車両でもあります。この車両は、19世紀末、電気自動車や蒸気機関自動車なども参戦した当時の都市間レースで優勝したことで、後に130年続くガソリンエンジン自動車優勢の時代を切り開くという大きな役目を果たしたのです。展示車両に添えられた解説を見ることで、そういった歴史的背景を学ぶこともできるようになっています。

入り口からしばらく外国車が続きますが、館内を進んでいくと最初に見つけることができる国産車がこのトヨペット・レーサーです。このトヨペット・レーサーが誕生したのは、終戦まもない1951年のこと。ようやくGHQから乗用車製造が解禁され、トヨタ自動車もタクシー向けなどにトヨペットSD型乗用車を生産します。

このトヨペット・レーサーは、そんなSD型乗用車のシャシーやエンジンを使用し、流線型のボディを架装。オートレースに参戦すべく作られたレースカーです。エンジン搭載位置や着座位置を後方に移動し、前後重量のバランスは50:50を実現。最高速度150km/hに達したそうです。

トヨペット・レーサーは、大阪トヨタと愛知トヨタがそれぞれ開発と制作を担当し、ボディは手作りゆえに2台とも形状が異なりました。展示されている2号車は愛知トヨタが担当した車両のレプリカで、実際に社内に残っていたSD型乗用車のエンジンなどの部品をベースに作られています。富士モータースポーツミュージアムの象徴的なレースカーとして、トヨタの若手エンジニアたちの手により、復元されました。

コックピットを覗き込んで見ると、ステアリングやメーター類はSD型乗用車のままであることも判ります。また見難いですがフレームや足回りもSD型乗用車のコンポーネンツをそのまま使用しているのです。基本的には市販車を丸々流用して制作されたこのトヨペット・レーサーは、トヨタが掲げている「道が人を鍛え、クルマを鍛える」というポリシーを70年も前に実践していたという貴重な歴史を物語っているのです。

メーカーの壁を超えてレースの歴史を知る

館内を順路通りに進んでいくと、1階の一番奥に興味深い2台が並ぶスペースがあります。日産のR382とトヨタ7の2台です。この2台は実際に1969年の日本グランプリや日本カムナムレースに参戦した車両で、日産は前年までのシボレー製V型8気筒を搭載したR381から、新たに自社製6リッターV12を搭載したこのR382にモデルチェンジ。トヨタも前年まで3リッターV8エンジンを新たに5リッターV8に変更した通称「5リッターニュー7」を投入。熱戦を繰り広げ、日本グランプリ史に語り継がれる名レースとなったのです。

さて、ミュージアムを訪れた際は、貴重な車両はもちろんですが、その脇に展示された資料にも注目してください。

TOYOTA7脇には当時の社外秘であるエンジンスペックやテストの結果、風洞実験の結果など、貴重な資料が展示されているのです。ちなみにR382の脇にも同じような展示があります。これもメーカーの壁を超えて展示車両や関連資料が集まる富士モータースポーツミュージアムならではの光景。両車がデッドヒートを繰り広げた当時の雰囲気を感じることができる貴重な展示となっているのです。

1から15までに分けられた展示は、それぞれにテーマに合わせた解説が行われており、展示車両をより深掘りして見学することができるよう工夫されています。また多くの場所ではモニターに関連映像が上映されており、映像と解説を合わせて見ることで、展示車両の歴史的背景をより深く学ぶことができます。ちなみにこの7番のコーナーではラリー競技に通じるタルガフローリオやミッレミリアなどの歴史が紹介されており、モニターではレースカーたちが疾走する当時の貴重な映像が上映されていました。

館内には他にも見所がいっぱい

4ローター化したエンジンを搭載したマツダ787BとトヨタGT-Oneはいずれもル・マン24時間レースに出場した車両。暗い展示スペース内にル・マンの公道コースを再現し、時代を超えてル・マンで活躍した2台のレースカーが並ぶファン感涙のコーナーとなっています。

このコーナーでは、人がマツダ787Bの左ドア付近に近づくとセンサーによって突然、4ローターのエンジンサウンドが響き出すという演出がなされています。4ローター独特の甲高いサウンドに包み込まれることによって一気に、当時のル・マンにタイムスリップすることができます。

館内のとある場所に、多くのサインが描かれた壁があります。これは2022年10月のホテル&ミュージアムのオープニング時に開催されたパーティに出席したレジェンドレーサーやチーム代表などメーカーの壁を超えて様々な関係者が書いたサインが集まる貴重な空間です。その壁はアクリルで覆われて保護されていますが、来館者であれば間近で見ることができます。

展示スペースを順に見ていくと、最後は15番「これからのモビリティとモータースポーツ」です。前述した通り、1番でガソリンエンジン優勢の時代がスタートし、現在までガソリンエンジン主体の自動車の時代をが続いてきました。ところが現在、地球環境を守るため、電気や水素、そしてカーボンニュートラル燃料などをエネルギーに仕様する次世代モビリティへの模索が喫緊の課題となっています。そして、これからもモータースポーツは、自動車勃興期と同様に燃料の検証の場として、重要な役目を担っています。

現在、ここにはマツダがバイオ燃料を使用したディーゼルエンジンでスーパー耐久レースに参戦するマシンが展示されています。ご存知の通り、水素エンジンで耐久レースに参戦しているROOKIE RACINGの水素エンジンカローラのライバルであり、切磋琢磨してカーボンニュートラル社会を目指す同志でもあります。

カフェからの景色は老若男女を問わない見どころ!

1階と2階を全て見終わったら、エレベーターで3階へと上がりましょう。3階はホテルのエントランスとなっていますが、ここにミュージアムのオフィシャルショップとカフェがあります。ここではオリジナルグッズはもちろんですが、レースカーやレーシングチームに関連した書籍、ミニカーなどが入手できます。

併設されたカフェでは各種ドリンクを楽しめるほか、簡単な食事も可能です。エントランスからエスカレーターを上がることでこちらに直接アクセスすることも可能なので、ミュージアムを見終わった後だけでなく、事前の待ち合わせにも最適です。

ちなみにこのカフェ最大の特徴が窓の外の眺めです。富士スピードウェイのコースを俯瞰で見ることができるのです。隣にある屋外のテラス席もレース時には多くの人で賑わうそうです。「見るならスタンドから!」というファンもいますが、「コースを広く見れるから」という理由であえてこちらから見るという人も。また、「ここならこどもといっしょでも安心」と、ファミリーで楽しむ方もいらっしゃるようです。

富士スピードウェイのレース・イベントカレンダーはこちらをチェック。
https://www.fsw.tv/motorsports/calendar.html

歴史を学んだ後はモータースポーツの今を知る場所へ

さて、せっかく富士モータースポーツミュージアムを訪れたなら、ぜひとも立ち寄ってほしいのが、冒頭でも紹介した富士モータースポーツフォレストのウェルカムセンターです。

富士モータースポーツミュージアムではレースカーの「歴史」を学ぶことができますが、ウェルカムセンターでは、モータースポーツの「今」を知ることができます。建物は、富士モータースポーツミュージアムから見て富士スピードウェイの西ゲートを挟んだ反対側にあり、ROOKIE Racingガレージと連結されています。

館中には車両の展示スペースがあり、取材時にはROOKIE Racingの水素エンジンカローラなどが展示されているほか、水素エネルギーを解説する展示が行われていました。

併設されたROOKIE Racingガレージは、2階からガレージのメンテナンスフロアを一望できる展望デッキになっており、プロのレースメカニックの仕事ぶりを見ることができます。運がよければドライバーの来訪に遭遇することもあるのだとか。ウェルカムセンターは入館も駐車場も無料で訪れることができるので、ぜひ訪れてみましょう。

富士モータースポーツミュージアムへは、東名高速道路御殿場I.C.から約20分、中央高速道路河口湖ICからは東富士五湖道路須走I.C,を経由して25分。富士スピードウェイ西ゲート脇の看板を目印に専用通路を進むと建物奥に無料駐車場があります。

<フジモータースポーツミュージアム>
住所:静岡県駿東郡小山町大御神645
Tel:0550-78-2480
開館時間:10:00~17:00(曜日やイベントによって延長営業あり)
休館日:無休(車両入替日など臨時休業あり)

入場料: 平日  大人1800円 中高生900円 小学生700円
土日祝 大人2000円 中高生1000円 小学生800円

※TS CUBIC CARDをご提示いただくと入場料を大人200円(小中高生100円)引きいたします
https://fuji-motorsports-museum.jp/

大人からこどもまで、モータースポーツの世界を深く楽しめる希少なミュージアム。レースファンはもちろんのこと、レースに詳しくない人でも気軽に楽しめるスポットです。先人たちのアツい想いとストーリーを知れば、ドライブがまたひとつ楽しくなるかもしれません。


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