Toyota Commemorative Museum of Industry and Technologyトヨタ産業技術記念館で知的好奇心を刺激する
「モノづくり」の魅力を体感する秋

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トヨタ産業技術記念館は、世界の自動車業界を牽引するトヨタ自動車の本拠地、愛知県でトヨタグループの歴史や技術が五感で学べるミュージアム。ここでは繊維産業からはじまり、自動車開発で世界に名を馳せることになったトヨタの軌跡が、エンターテインメント性にあふれる多彩な展示で紹介されています。その見どころから今秋に開催される注目の企画展、イベントを紹介します。

世代や国籍を超えて多くの人を魅了!
本物の動態展示に圧倒される企業博物館

トヨタ産業技術記念館は、1994年にかつて豊田紡織の本社工場があった、トヨタグループ発祥の地に開館し、「研究と創造の精神」と「モノづくり」の大切さを次世代に伝えています。

近代化産業遺産にも認定されている貴重な赤レンガの建物が保存、活用されている。

トヨタのルーツは繊維産業にあります。トヨタグループ創始者である豊田佐吉は国や社会に貢献するため、布を織る織機(しょっき)の発明に生涯を捧げ、佐吉の長男・喜一郎は自動車の国産化に挑戦し、今日に続くトヨタ自動車工業を創業しました。この施設では、「繊維機械館」と「自動車館」の2つの展示場で、両氏がその発展に寄与した技術の変遷がわかりやすく展示されています。

この施設ならではの魅力は“本物”の機械の動態展示と多彩な実演。五感で体感できる展示は、トリップアドバイザーの「工場見学&社会科見学ランキング」で2015年から2018年まで4年連続で1位に輝くなど、時をかけて多くの人を魅了しつづけています。

開放感あふれるロビーでまず目に飛びこんできたのが高さ約4メートル、直径約3.5メートルの巨大な「環状織機」。こちらは「動力を空費せず、超広幅の布を静かに製織する」という目標を掲げた豊田佐吉が、1906年に発明した独創的な織機です。運動の理想である回転円運動により布を織り上げる画期的な技術は、世界19カ国で特許を取得し現在、トヨタの基本理念のシンボルとして動態展示され、1日に4回実演されています。

トヨタの礎を創った繊維機械館
進化する紡織技術がここに

そこから繊維機械館に足を踏み入れると、驚くのがその圧倒的なスケール。約3500㎡にもおよぶ空間では、大正時代に建てられた紡績工場の柱や梁、赤レンガの壁がクラシカルな雰囲気を醸し出し、糸を紡ぎ布を織る初期の道具から現代の繊維機械まで約100台が一堂に会しています。

まず紹介されているのは紡績技術の変遷です。江戸時代の道具を使用した「糸紡ぎ」の実演や一度に数十本の糸を同時に紡ぐことができる明治初期の「ガラ紡機」の展示など、興味深い展示に思わず見入ってしまいます。

そこから進むと、西洋から導入された近代紡績機械のコーナーへ。五つの行程を経て、目の前で瞬く間に大量の糸が生み出される実演は、まさに圧巻。一つひとつ解説してくれるので分かりやすく、楽しみながら近代化された紡機技術が学べます。

綿を混ぜ、繊維をほぐす混打綿機。

続いての展示は糸を使って布を織る展示。1890年に佐吉が23歳の若さで初めて発明した「豊田式木製人力織機」や生産性を20倍高めた日本初の動力織機「豊田式汽力織機」(1896年)が姿を現します。

そして、見逃せないのが1924年に完成した「無停止杼換(ひがえ)式豊田自動織機」、通称「G型自動織機」です。豊田佐吉の代表作であるこの織機では、なんと50件以上の特許技術が盛り込まれ、それまでよこ糸がなくなったときに人の手で交換していた作業を自動交換する画期的な技術が導入されています。

「魔法の織機」と称された斬新な技術によって、生産性は飛躍的に向上。当時の情景を再現した集団運転の実演では、リズム感のある機械音が館内に響き渡るダイナミックな躍動感に目を奪われます。繊維機械館では興味深い動態展示とエンターテインメント性の高い実演であっという間に時間が経ち、心躍る「モノづくり」の歴史と技術が体感できました。

自動車館で目の当たりにする
革新的技術と挑戦の物語

豊田佐吉の「研究と創造の精神」は豊田喜一郎に受け継がれ、自動車産業に大きな影響を与えました。延べ7900㎡にも及ぶ広大な自動車館では、トヨタの自動車づくりをさまざまな角度で紹介。国産自動車の生産をするまでの創業期から現代に至るまでの歴史や技術の進歩が学べます。

1920年代、アメリカで自動車が当たり前になりつつあり、日本にフォード社やGM社の工場が設立され外国車が普及していた頃、現地を目の当たりにした喜一郎は国産自動車の開発を決意。まず、1933年に豊田自動織機製作所内に自動車部を開設しました。

かつてない挑戦は、自動車に取り付けて使用する小型ガソリンの試作からスタートした。

500~600個の試作でトライ&エラーを繰り返して完成したトヨタ初の量産型エンジン「A型エンジン」、そして美しい流線型デザインのボディを開発し、1935年に最初の試作車「A1型試作乗用車」が完成しました。

特別な輝きを放つAI型試作乗用車の試作ボディ。

2Fでは試作乗用車を完成させてから月産2000台規模の量産体制、販売体制を整えるまでの物語を紹介。「お客様第一」、「品質第一」という考えが根付いた様子や、「TOYODA」が「TOYOTA」へ変更されたいきさつもわかります。

トヨダG1型トラックの修理現場を描いたレリーフ。喜一郎も現場に駆けつけていた。

リアルな展示を目の当たりにしながら追体験する、「自らの手で国産自動車をつくる」という喜一郎たちの挑戦の物語は、胸を打つものがあります。

時代を彩ったトヨタの
自動車コレクション

先に進むと目に飛びこんでくるのはトヨタ車と生産工程の壮大な景色。ここでは、時代を見据えて進化していった歴代のトヨタ車がズラリと揃い、時代によってトヨタがどのような車をつくり上げてききたかを年代別に分かりやすく展示されています。

トラックなどの商用車から現代の乗用車まで、順を追って主な車を紹介していきましょう。

トヨダAA型乗用車。

トヨダAA型乗用車についてはこちらから。
TOYODA AA (Replica)

トヨダG1型トラック。

展示された歴代のクルマに圧倒されます。しかも、すべて走る状態で展示されています。

初代カローラ。
「エコカーは普及してこそ環境への貢献」という考えで開発されたMIRAI。

これらの展示は、時代ごとの要請とニーズに応えつづけたトヨタの自動車製造の軌跡を伝えてくれます。

さらに、見逃せないのが「生産技術」コーナーです。こちらには1938年に稼働開始した挙母(ころも)工場の一部を再現。ステアリングナックルの鍛造工程やエンジンとシャシの自動組付装置など、創業期から現在に至るトヨタならではの生産技術が動態展示されています。

驚かされるのは、繊維記念館、自動車館ともに展示機はすべて動くだけでなく、トヨダトラックG1型をはじめとした全展示車も走行可能ということ。年に1度の開館記念日には走行披露イベントも行われています。

両館はポイントをおさえた推奨コースに沿って巡れば、それぞれ約1時間前後で楽しめます。ガイドツアーやアプリケーションでの解説もあるので、チェックしてみてください。

まだまだ見どころ満載!
秋冬に楽しみたいイベント・企画展も

繊維機械館と自動車館以外にも、動力の庭に面して展示されているのは、100年以上前につくられたスイス・スルザー社製の蒸気機関や2010年に開催された上海万博の日本館でデビューした二足歩行型のパートナーロボット、創業期からの貴重な資料などを展示しているトヨタグループ館など、まだまだ見どころは盛り沢山です。

さらに、繊維機械や自動車に使われている原理や仕組みを取り入れたオリジナルの遊具が揃うテクノランドやモノづくりの創造性を育む週末ワークショップなど、子供たちに大人気の施設も。(要当日整理券)

この秋には、卓上手織り機で縞模様のオリジナルコースター作りなどが楽しめる「秋の発見☆体験ミュージアム」が開催されます。(要事前申込み)

また、日本のモノづくりの源流ともいえる、江戸時代中期から明治時代初期の貴重な科学技術所蔵品から「からくり」に関する資料を展示するトヨタコレクション企画展「からくり ご覧に入れまする」も見逃せません。

この秋、ファミリーで楽しめるトヨタ産業技術記念館で知的好奇心を刺激する旅を満喫してみてはいかがでしょうか。

※画像はすべて「トヨタ産業技術記念館提供」

【取材協力】
「トヨタ産業技術記念館」

名古屋市西区則武新町4-1-35
TEL:052-551-6115
開館時間:9:30~17:00(入場受付は16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
※土・日曜日・祝日の来館は予約制になります。
https://www.tcmit.org

区分 大人 中学生 小学生
  65歳以上
一般 500円 300円 300円 200円
団体
(30名以上)
400円 240円 240円 160円
学校行事
(引率の先生は無料)
250円 - 無料 無料
年間パス
(記名本人のみ有効)
1,200円 700円 700円 500円

※65歳以上の方は証明できるもの(健康保険証・運転免許証など)をご持参いただき、ご提示ください。
※障害者手帳・特定医療費受給者証お持ちの方と付添の方1名は無料です。
障害者手帳アプリ「ミライロID」もご利用いただけます。(総合案内で証明となるものをご提示ください)
※トヨタ「ティーエスキュービック(TS3)」カードでお支払いのお客様は2割引。
(「総合案内」にて、ご持参の方に割引入場券を販売します)


[交通アクセス]

車/
名古屋高速6号清須線「明道町出口」から5分程度
名古屋高速都心環状線「丸の内出口」から10分程度
(駐車場無料、乗用車220台/バス10台)
電車/
名鉄名古屋本線「栄生駅」下車、徒歩3分
バス/
なごや観光ルートバス“メーグル”「トヨタ産業技術記念館」(敷地内)下車すぐ
タクシー/
「名古屋駅」から5分

【イベント情報】
●「秋の発見☆体験ミュージアム」

開催期間:10月28日(土)・29日(日)
会場:創造工房
参加対象:親子ペア ※お子様は小学1~中学3年生
参加費:無料 ※入場料別途必要

創造工房にて事前予約制で開催。下記ホームページ「週末ワークショップ」よりお申し込みください。受付期間期間は9月1日(金)~9月12日(火)
※定員に満たない場合は開催前日まで受付可能

【企画展情報】
●トヨタコレクション企画展「からくり ご覧にいれまする」

開催期間:10月7日(土)~12月17日(日)
会場:トヨタ産業技術記念館 特別展示室
開館時間:9:30~17:00
休館日:月曜(祝日の場合は開館、翌日休館)
入場料金:館の入場券(常設展)のみ

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