Custom Beerビアボール、カクテル…、自分好みで味わう、
麗しきカスタムビールの世界
Text:Ryosuke Fujitani
Photo:Shinpei Fukazawa
世界に誇る4大ビールメーカーが定着しながら、独自の進化を遂げている日本のビール文化。ここ10年で定着した多彩なクラフトビールの次にくるトレンドが、ビールにフルーツやハーブなどを加えて楽しむ「カスタムビール」と言われています。そこで、その起爆剤となりつつある「ビアボール」の魅力から、プロ料理家が教える自宅で簡単に作れるカスタムレシピまで、次代を先取るビールの楽しみ方を紹介します。
江戸時代から続く日本独自のビール・カルチャー
日本で最初のビール醸造が行われたのは江戸時代の1812年。オランダ人によって長崎の出島でビールが醸造されました。その後、明治時代に入ると横浜の山手居留地に誕生した「スプリング・バレー・ブルワリー」をはじめ、各地に醸造所が誕生。現在も続く4大ビールメーカーの前身となる会社が誕生し戦後になると代表的な銘柄が開発され、缶ビールで飲むスタイルなど時代ごとに発展を遂げ、日本独自のビール文化が定着しました。
1994年には酒税法が改正され、小規模醸造業者により「地ビール」の開発がスタート。
全国の観光スポットを中心にさまざまなビールが誕生しました。その潮流のアップデート版が2010年代から登場した「クラフトビール」です。
もともとはアメリカのポートランドからブームに火が付いたクラフトビールは、端的にいえば、小規模なビール醸造所(マイクロ・ブルワリー)でビール職人が造るビール。もともと100種類以上あるビアスタイルのうち、大手メーカーが造っていた3〜4種類ではなく、多彩なスタイルのビールが各地で続々と誕生し、若者を中心に普及しました。現在は地域の特産物を使用したクラフトビールが全国で生まれるなど、進化し続けています。
ビールの新潮流!? 自由に楽しむ「ビアボール」とは
多様化が進む現代のビール文化の中で、昨年10月サントリービールが発売した「ビアボール」が話題となっています。
ビアボールは、アルコール度数16%のビールを炭酸で割って飲む日本初のビール。気分や好みで自由に濃度を調節できるだけでなく、氷を入れて炭酸水で割ってもしっかり感じられるうまみ、時間が経過しても崩れない味わいと香りのバランスが魅力で、麦芽本来の深いコクとフルーティーで爽快な醸造香が堪能できます。
なにより、コロナ禍を経てお酒の種類だけでなく飲み方も多様化するいま、自分好みにカスタムする楽しみ方は、現代のライフスタイルにフィット。2023年は、そういった「カスタムビール」がトレンドになると予想されています。
誰でも作れるカスタムビールをプロが伝授!
そこで今回、広告やCM、テレビドラマ、雑誌など幅広いフィールドでレシピ提案からスタイリング、調理や料理指導などのフードコーディネートに携わる料理家の上樂由美子さんに、自宅で手軽につくることができるカスタムビールを教えていただきました。
どれも街の量販店や酒販店で手に入るビアスタイルのビールと一般的な食材を使用したレシピです。
ベルジャンホワイト[ハニーレモンジンジャー]
ベルジャンホワイトとは14世紀にベルギーのヒューガルデン村で誕生したビアスタイル。コリアンダーシードやオレンジピール(オレンジの皮)を副原料として使用し、苦味が少なく、柑橘系やスパイスの爽やかな香りが楽しめる白ビールです。
今回は、コンビニエンスストアやスーパーで手に入りやすい定番の「ヒューガルデン・ホワイト」を使用しました。
[材料]
ベルジャンホワイト…150cc
レモン果汁…大さじ1
蜂蜜…大さじ1
生姜の絞り汁…大さじ1/2
レモンの皮…適量
[作り方]
1:グラスに蜂蜜、レモン果汁、生姜の絞り汁を入れてよく混ぜる。
2:蜂蜜が溶けたらグラスにビールを注ぎ入れる。
3:レモンの表皮を削り、トッピングして完成。
レモン果汁を加えることで柑橘の風味と香りが際立ち、蜂蜜の自然な甘さでより飲みやすくなったこちらは、ビールの苦味が苦手な人でも楽しめる爽やかな一杯。蜂蜜をしっかり溶かしてからビールを注ぐのがポイントです。
レッド系IPA[レッドベリー]
正式名称が「India Pale Ale」のIPAは、ビールの原材料のひとつ「ホップ」を大量に使用して造られるイギリス生まれのビアスタイル。一般的なビールに比べてホップ由来の香りや苦味が強く、アルコール度数も5.5〜7.5%と高めで、世界中で愛されています。
その中でもレッドIPAは、その名の通り赤みがかった薄い銅色のビールで、今回使用した「悪魔のビール レッドセッションIPA」は、ホップのトロピカルな香りが特徴です。
[材料]
レッドIPA…150cc
赤ワイン…40cc
カシスリキュール…20cc
いちご…1個
[作り方]
1:グラスに赤ワインとカシスリキュールを入れてよく混ぜる。
2:ビールをグラスに注ぎ入れる。
3:切り込みを入れたいちごをグラスの縁に飾って完成。
いちごをかじりながらいただくとジューシーな甘みと酸味が口内で広がり、赤ワインとカシスを加えることで増した濃醇なインパクトは、ステーキやローストビーフなどの肉料理にマッチ。赤ワインのタイプによって味わいが変わるので、お好みの味を探すのも楽しいカスタムです。
「いちごは、赤ワインとカシスリキュールを混ぜる時に潰し入れても美味しいです」
スタウト[カプチーノビア]
英語で「強い」という意味のスタウトは、黒ビールの一種。香ばしいナッツやチョコレート、コーヒーのようなロースト香と真っ黒な色が特徴です。
今回は、デイリーに楽しめる個性豊かなビールが人気の大阪・箕面ビールのスタウトを使用。なめらかでクリーミーな口当たりと、コーヒーを思わせる焙煎モルトのフレーバーが後ひく飲み飽きないスタウトです。
[材料]
スタウト…150cc
牛乳…80cc
お湯…20cc
インスタントコーヒー…適量
砂糖…適量
シナモンパウダー…適量
[作り方]
1:耐熱容器にお湯、インスタントコーヒー、砂糖を入れてよく溶かし、粗熱を取る。
2:牛乳も加えてコーヒー牛乳を作り、グラスに注ぐ。
3:ビールをグラスに注ぎ入れる。
4:シナモンパウダーをトッピングして完成。
甘めに仕立てたコーヒー牛乳を加えることで、まろやかで飲みやすくなりながらも、しっかりスタウトの焙煎感が感じられ、シナモンの香りが上品な余韻を演出。そのままはもちろん、チョコレートなどのスイーツとの相性もよいカスタムです。
「市販のコーヒー牛乳でも構いませんが、濃いめのコーヒーでしっかり甘いミルク感の強いコーヒー牛乳をつくると美味しいです。ロックグラスなど背の低いグラスで作り、シナモンスティックでステアしながらいただくと、より風味と香りが増します」
ビールをカスタムする際のポイント
今回のレシピに限らず、ビールをカスタムする際に合わせる食材のポイントを聞きました。
「まず、同じ色の食材同士は相性がよいことが多いので、色を意識してチョイスするのといいです。また、たとえば柑橘やスパイス、チョコレートなどのアロマなど、ビールの中に感じる香りから食材を合わせる事も美味しく仕上げるポイントです」
ビアボールのアレンジで多彩に味わう
さらに、ビアボールの炭酸以外の美味しいアレンジも教えていただきました。どちらも分量はお好みで調節して楽しみましょう。
苦味+酸味の「レッドビアボール」
[ビアボールに加える素材]
カンパリ、グレープフルーツジュース
[作り方]
グラスにたっぷりの氷とビアボール、カンパリ、グレープフルーツジュースを入れ、仕上げに炭酸水を注ぎ、軽くステアして完成。
爽やかに香る「モヒート風ビアボール」
[ビアボールに加える素材]
ミント、トニックウォーター、ライム
[作り方]
グラスにミントを入れてマドラーなどで潰しておく。たっぷりの氷とビアボール、トニックウォーター、ライムを加え、軽くステアして完成。
「カスタムビールは、ビール以外の食材と合わせることによって生まれる新しい味わいや香り、喉越しなどの意外性を楽しめるのが魅力。ホームパーティなどで季節を感じさせるアレンジのビールをつくればゲストとの話題がさらに盛り上がるアイテムになりますよ」
厳しい寒さが終わりを告げ、ビールが美味しく感じられるこの春から夏にかけて、カスタムビールを試してみてはいかがでしょうか。
■レシピ監修
料理家・フードコーディネーター
上樂由美子
広告、雑誌、書籍、CM、テレビドラマなどのレシピ考案、スタイリング、調理、料理指導など撮影現場でのフードコーディネート全敗に携わる。神奈川県の海辺の町に暮らす一児の母であり、地元では料理教室を主宰。株式会社A2所属。
Instagram:@yumiko_Joraku https://www.instagram.com/yumiko_joraku/
■関連リンク
ビアボール
https://www.suntory.co.jp/beer/beerball/
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