Local activities in Okazaki 02地域のとりくみ「岡崎」CHAPTER:02
岡崎の市街地へつながる、乗り合い送迎サービス運行中!
Text:PONCHO
Photo:Yuichiro Higuchi

Travel

岡崎市の取り組みに、「チョイソコおかざき」という乗り合い送迎サービスがあります。導入の経緯、課題、そして未来像を、地域住民が立ち上げた六ツ美中部学区エリアバス運営協議会の二村政彦さん、岡崎市総合政策部地域創生課 公共交通係の川内良祐さん、システムを構築した株式会社アイシンの大屋輝倫さんの3名に伺いました。

市民、行政、民間事業者の連携による「チョイソコおかざき」

岡崎市における市民、行政、民間事業者の連携による街を活性化させる取り組みは、PART1の記事でお伝えしたQURUWAだけではありません。その代表がJR東海道本線・岡崎駅から西へ4kmに位置する六ツ美中部学区を走る、「チョイソコおかざき」という乗り合い送迎サービスです。

そのシステム導入の経緯、運用後にわかった課題、これからの未来像を、地域住民が立ち上げた六ツ美中部学区エリアバス運営協議会の二村政彦さん、行政の立場から岡崎市総合政策部地域創生課 公共交通係の川内良祐さん、システムを構築した株式会社アイシンのチョイソコ営業グループ 大屋輝倫さんの3人に伺いました。

「CHAPTER:01:小さな自然が生み出すまちづくりと、新たな関係づくり。」はこちらから

六ツ美中部学区住民の声からはじまったチョイソコ

写真左から、六ツ美中部学区エリアバス運営協議会の二村政彦さん。岡崎市役所の川内良祐さん、株式会社アイシンの大屋輝倫さん。

チョイソコおかざきは、事前予約型乗合タクシーとして2020年10月から実証運行を開始した、新たな公共交通のカタチです。運行のきっかけは、地域住民から市への陳情だったといいます。

―――チョイソコおかざき運行前の、六ツ美中部学区はどのような状況だったのでしょう?

二村
この地区は5000人程度の住人が暮らしており、高齢者が多く住んでおります。85歳を過ぎても畑仕事をして元気な方もいますが、約半数の方は家族や知人の車で送迎をしてもらっている状況でした。加えて、このエリアには病院やスーパーがないため、学区外への移動は日常的に必要です。

しかし、自宅からバス路線の停留所までが遠い、病院などの目的地へ向かうバスの運行本数が少ないといった交通不便地域ならではの課題があり、エリアバス運行の陳情に至りました。

――チョイソコおかざきは、どのような乗り合い送迎サービスなのでしょう?

大屋
六ツ美中部学区在住の12歳(中学生)以上で、ご自身もしくは介助者の補助により予約、停留所まで移動、乗降ができる方に会員登録をしていただき、電話やインターネットで希望時間や目的地を予約、複数の住民の方が乗り合わせて利用、お出かけを支援する乗り合い送迎サービスです。

主に高齢者をはじめとする住民の方の移動手段の確保が目的です。予約は2週間前から、お出かけの予定が急に決まっても利用いただけるように当日15分前まで受け付けています。
二村
運行地区を生活エリアとお出かけエリアに分けていて、運賃は生活エリア内の移動が1回200円、お出かけエリアへの移動が1回400円。運行日時は、月、火、木、金、土の9:00~16:00となっています。生活エリア内の停留所は、幹線道路沿いだけでなく、住宅地内にも多く設置して、自宅からできるだけ歩かずに済むようにしています。

――運行区域を見ると六ツ美中部学区を中心とした運行になっていますが、JR岡崎駅などまでの送迎は行なっていないのでしょうか?

二村
六ツ美中部学区の住宅地にチョイソコの停留所を多く設置しているので、自宅近くの停留所からJR岡崎駅や西尾駅、藤田医大方面行きの既存のバス路線のバス停で乗り継いでもらうことになります。乗り継ぎ場所のバス停は、六ツ美中部学区に3ヶ所設けています。
川内
乗り継ぎの際には、チョイソコが地域の足としてより多くの方にご利用いただけるように、200円を割り引く乗継券を発行しております。バスやタクシーといった既存の交通機関と上手く共存させていくことも地域の足を守ることですので、バランスを取って運用しています。

――2020年に実証運行をはじめて間もなく2年が経ちますが、利用状況はどのような感じでしょうか?

二村
現状、高齢者に多くご利用いただいています。こどものいない世帯では、自転車やクルマに乗れなくなると交通の足がなくなってしまいます。そうした時に、乗車の15分前から予約ができるオンデマンドバスはとても便利なんですよ。今後さらに利用を広めることで、高齢者の免許返納を促しつつ、お出かけはポジティブに楽しんでもらえたらと思っています。

また、身近に話し相手がいないと悩んでいる方から「運転手さんと話すのが楽しい」という声をいただくこともあります。お出かけの際に、あえてチョイソコを選んでいただくことが、日々の楽しみになっているというのはうれしい限りですね。
川内
既存のバスと違い、バスの時間に合わせて行動するのではなく、自分の予定に合わせてチョイソコを利用できるので、便利だという声も多くありますね。

その反面、利用したいけれど、まだまだ停留所まで遠いという声もあります。さらに必要な方たちの声を拾って、より多くの地域の方の足になれるように、今後も話し合っていきたいと思います。
大屋
チョイソコは、地域の交通機関としてだけでなく、お出かけしたくなるようなイベントを開催し、高齢者の健康増進につなげることも目的のひとつなんです。

コロナの影響でお出かけしなくなってしまった高齢者も多くいます。そうした方が無理なく体を動かせて、楽しく参加できるようなイベントを開催することで、お出かけの機会を作っていきたいですね。

――利用の促進策として、4月から回数券の販売を開始しましたが、いかがでしょう?

大屋
チョイソコ車両内で、200円券12枚つづりを2000円で販売しています。小銭の用意が不要で便利なこともあり、これまで現金での支払いがほとんどだったのに対し、現在は7割以上が回数券を利用されています。
二村
電子回数券の利用促進のために、スマホ教室を開いて利用方法を覚えてもらう取り組みも考えています。さらにスポンサー企業や地域の飲食店で、電子回数券を利用できるようにする構想もあるので、そうなればまた利用者も増えるのではないかと期待しています。

また、電子回数券の購入はインターネットでできるので、他地域で暮らすお子さんたちや友人からプレゼント……といった広まり方もしてくれるとよいと思っています。

――最後に、チョイソコおかざきの運行に携わってきた感想をお聞かせください。

大屋
チョイソコシステムを導入している自治体は、岡崎も含めて2022年7月時点で32自治体あります。その多くは、自治体主導で動いていますが、ここ岡崎は、地域住民の方が、当事者意識を高く持っていて、そして弊社と話し合い、よりよい地域の交通機関となるように進めていらっしゃいます。そうした姿勢にとても刺激を受けていますし、今後の活躍や拡大のためにさらに協力していきたいと考えています。
川内
岡崎市としては、「日常生活における移動手段の確保」と「お出かけ促進による健康増進」という観点で支援を行っています。これからも市としてできる限りの支援を行い、六ツ美中部学区はもちろん、市内の他の交通不便地域の課題解消にも活かしていければと考えています。
二村
この約2年間の取り組みを見て、新たにスポンサーとなり停留所を設置したいという事業者も増え始めました。そうした事業者は、地域の足を一緒に支えたいという想いで参画いただいています。

チョイソコおかざきが、さらに便利で気軽に利用できるようになれば、きっと地域も元気になるでしょう。そうなれるように、この新たな地域交通についてみんなで知恵を出しながら、下支えしていこうと思います。

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