Harmony 2018年11/12月号
開発者に聞く

COROLLA SPORT
小西良樹
製品企画 チーフエンジニア

文・小沢コージ 写真・小松士郎

始まりは「カローラ スポーツ」から!トヨタの“走るスマホ”化計画

豊田章男社長自身が「100年に一度の大変革期」と認める今、ついに歴史が動いた。元祖国民車の「カローラ」がハッチバックになり、“コネクティッドカー”いわば“走るスマホ”の先陣として登場。チーフエンジニアに新世代「カローラ」の“本気度”を直撃した。

トヨタならではの“走るスマホ”化計画

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小沢:正直、びっくりしました。あの「カローラ」が12代目にして、デザインから走りまで大胆チェンジ!しかも“つながる技術”、いわばクルマのスマホ化を本気で搭載してきた。実際、この「カローラ スポーツ」と「クラウン」がトヨタの「初代コネクティッドカー」になるわけですよね?

小西:そうです。まずはこの2車種が第1弾という認識です。トヨタ車としては本格的にDCM(専用通信機)を搭載し、サービスを開始していきます。今後も第2弾、第3弾と、小沢さんのおっしゃる「トヨタの“走るスマホ”化計画」は続いていきます(笑)。

小沢:それはすなわち、ネットによるアップデート、つまり買ってからも新たにアプリやOSをダウンロードすることにより、性能アップが図れるようになるってことですか?

小西:ええ、今後そうしていかなければならないと思っています。

小沢:とはいえ、今回「カローラ スポーツ」に導入されたコネクティッド機能を見ると、主にオペレーターサービスとかコンシェルジュサービスが中心で、たとえばクルマの中でグーグル検索ができるとか、Yahoo!ニュースが読めるわけじゃないですよね?そこは正直言って、少しガッカリした部分です。

小西:現在は、ニュースや天気予報、お店等の案内をエージェントが音声で読み上げる機能が付いていたりしますが、確かに充分ではないですね。

小沢:そこはやはりトヨタだけに、「安心・安全」機能から導入していくってことですか?分かりやすい今どきの「快適・便利」機能よりも。

小西:安全性はやはり非常に大事で、「カローラ スポーツ」もそこをキチンと担保するために、まずはディスプレイを、ドライバーの目線をあまり動かさなくてもいい位置にもってきています。

小沢:まずは使いやすい操作位置、そこからだと?

小西:そうですね。そこは会社の思想であり、ポリシーかもしれません。ただし今回はあくまでも第1弾であって快適・便利の部分もこれから追求していきます。スマホ的な利便性への期待は大きいですから。

小西良樹

小西良樹(こにし よしき)

愛知県出身。1991年トヨタ自動車入社。ボデー設計部で「セリカ」「コロナ」「bB」の担当を経て、「カローラ」「RAV4」の製品企画を担当。その後、商品統括部に異動。現在のTNGAプラットフォームの開発責任者を務めた。2015年にふたたび製品企画室に戻り、11代〜12代の「カローラ」シリーズのチーフエンジニアを務める。

「ドクターヘリ」も自動手配。交通事故死亡率が大幅減

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小沢:コネクティッド機能の中身でいちばん驚いたのは「ヘルプネット」。地味な機能ですが、実際これは凄い。事故に遭ったら連絡ひとつで「ドクターヘリ」も呼べる!それも今までみたいに救急車の判断を介さずに自動で呼べるから、治療開始時間をざっくり約17分も短縮できると。それによって死亡率は約68パーセントも低減という。

小西:そうなんです。今回の進化で従来からあったヘルプネットサービスが「D-Call Net®」対応になりました。これによってクルマが事故に遭遇した際、その加速度や障害度合によってD-Call Net®サーバーが自動判断して、オペレーター経由でドクターヘリを呼ぶことができるんです。

小沢:いや、これはかなり重要な機能ですよ。事故でたとえ運転手が気を失っていても、必要なら自動でドクターヘリを手配してくれるってことでしょう?この機能のために政治家やVIPは、「カローラ スポーツ」や「クラウン」を買うべきだと思います。

小西:ありがとうございます。この機能は、2020年までにほぼすべてのトヨタ車に搭載する予定です。

小沢:それから面白かったのが2つの“eケア”で「走行アドバイス」というのと「ヘルスチェックレポート」。これまたクルマがネットに常時接続されることで可能になった新サービスで、最初は“つながるクルマ”はドライバーのヘルスケアまでしてくれるのか!とびっくりしました。

小西:さすがにそこまでは(笑)。まず、走行アドバイスですが、運転していて警告灯が突如点灯したら不安に感じられると思うんですが、そういう時にオペレーターからネットを介してアドバイスを受けられる。実際に危険な事態であれば、「そのまま停めておいてください」という指示もあります。さらに、その情報は事故現場の最寄りの担当ディーラーも把握していて、入庫したとたん待たずに修理できるという、バックアップ体制が整っています。

小沢:なるほど。まさに“ジャスト・イン・タイム”ですね。

小西:その通りです。“eケア”の発想のベースにあるのは、トヨタ生産方式の“ジャスト・イン・タイム”を販売の現場にも広げることなんです。

小沢:それから車両のエンジンオイル量、ブレーキオイル量、走行距離を常時ネットで把握することにより、メンテナンスサービスを受ける適切なタイミングが分かったり、自動ブレーキが正常に作動するかもネットでチェックできるとか?

小西:はい、今までは1年ごとに定期点検となっていたものの、さほど距離を走らないお客さまなら、やや長めのインターバルで点検を受けられるなど、無駄を省くことができます。

小沢:もうガソリンスタンドで余計なオイル交換をしなくて済むと。それからもうひとつ気になったのが「ドライブ診断」。これはドライバーの運転レベルやマナーをネットでチェックする機能ですか?

小西:と言いますか、エコドライブや丁寧な運転をする方にメリットを感じていただける機能です。この診断結果がよい方は、専用の任意保険が最大で9パーセントお安くなるんです。

小沢:おおっ、なんだか見張られている気もしますが……。

小西:いえ、安全運転をきちんと評価するということです(笑)。

オペレーターとつながる安心感と細やかなケア

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小沢:さらに今回の「カローラ スポーツ」で何に驚いたかって、「オペレーターサービス」と「エージェント」機能です。
まずはオペレーターですけど、凄くないですか、人材レベルが。まさに電話番号案内の104のごとく、モニターをタッチすればハンズフリーでオペレーターと話せて、しかも、かなり親切!「最寄りのおいしいトンカツ屋を教えてくれ」みたいな下らない質問でも嫌がらずに対応してくれるし、天気なんかも教えてくれる。マジメな話、あまりに口調が優しいので、思わず人生相談したくなりました。失恋した直後だったりすると「ツラいんです」とか言っちゃいそう(笑)。

小西:ちょっとそこまでは、なんとも返答しかねるかと思いますが(苦笑)。

小沢:あれってトヨタが専門オペレーターを集めたコールセンターを作ってるんですよね。大変な手間と人件費かとお察しします。人って横着だから、そのうちどんどん要求が増えて回線がパンクしちゃうんじゃないかと心配です。

小西:数カ月の厳しい訓練を受け、試験に合格したものがオペレーターのデスクに座ります。その後も対応に問題があると、何度も訓練センターに戻される。それほど、しっかり訓練します。

小沢:それからもうひとつの「エージェント」機能。こっちは機械で、AIが質問に答えてくれるようなんですけど、まずは日本語認識ソフトの出来が神レベル。「トランクってどう開けるんだっけ?」とか「トイレ行きたい」とかほぼ正確に認識してくれますし、トランクリッドの位置はまず、正確に教えてくれますよね。「最寄りのトイレ」は無理でしたけど(笑)。

小西:実際にどこまでサービスを広げるかは検討の余地がありますが、性能はどんどん上がりますからね。

小沢:だからまさに、スマホの延長で便利に使いたい気持ちもあるんですけど、こういうクルマならではの“つながる”性能であり、安心も含めて可能性が広がるなと思いました。

小西:今後、両方とも進化させていくので是非ご期待ください。

COROLLA SPORT

発売52年を迎えた「カローラ」。“新世代ベーシック”としてスタイルを一新。走りを楽しむMT搭載車も投入された。

小沢コージ

おざわ こーじ

バラエティ自動車ジャーナリスト。1966年神奈川県横浜市生まれ。「NAVI」編集部を経て、フリーに。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『ドライブ上達読本』『クルマ界のすごい12人』など多数。TBSラジオ「週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ」出演中。

詳しい情報・お問い合わせはtoyota.jpへ

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