全国で3,000以上もの温泉地がある温泉王国、日本。
その中から、クルマでなければ行きづらい名湯・秘湯をご紹介します。

2016年9月記
クルマで行く名湯・秘湯【第6回】 長野県 別所温泉・角間温泉

真田氏ゆかりの “温泉”
歴史舞台を巡る

文・北 武司

NHK大河ドラマ「真田丸」の人気で、真田の地を巡る旅が静かなブームだ。なかでも長野県上田市には真田氏にまつわる数々の名所・旧跡が点在。今回は趣の異なる2つの “温泉” をご紹介しよう。

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NHK大河ドラマ「真田丸」の人気で、真田一族発祥の地を巡る旅が静かなブームだ。なかでも長野県上田市には、真田氏中興の祖である真田幸隆、その三男・昌幸、そしてその子である信之、信繁(幸村)兄弟という、真田氏三代にまつわる数々の名所・旧跡が点在。そんな真田氏ゆかりの地から、今回は趣の異なる2つの “温泉” をご紹介しよう。

真田一族が英気を養い、傷を癒した「石湯」

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まず1つめが、北向観音など多くの寺がある “信州の鎌倉” で、信州最古の温泉とも称される「別所温泉」。日本武尊が東征の折に発見。その後、平安時代には木曾義仲が、戦国時代には上田城主であった真田氏とその家臣が、それぞれ入湯したとの記録が残る。もちろんホテルや旅館もあるが、ここでは外湯を楽しむのがおすすめ。というのも、木曾義仲ゆかりの「大湯(葵の湯)」、円仁慈覚大師が好んだ「大師湯」、そして真田幸村の隠し湯として知られる「石湯」という3つの共同浴場があり、それぞれ150円で気軽に入ることができるからだ。

とくに「石湯」は、池波正太郎氏の大河小説『真田太平記』にもたびたび登場し、その建物の前に立つ「真田幸村公 隠しの湯」の標石の文字は池波氏の筆によるもの。天然の岩間から今も豊かに湧き出す石湯は、真田一族を癒してきた隠し湯。その湯に肩まで浸かれば、まさに全身で戦国の世で異彩を放った真田氏の歴史舞台の一部に溶け込むかのような感覚が楽しめ、ファンにはたまらない。

泉質は弱アルカリ性の柔らかな湯で、昔から「美人の湯」と言われ、女性に人気が高い。3カ所の外湯の近くには飲用専用の飲泉塔があるので飲んでみてはいかがだろう。

別所温泉観光協会

角間渓谷の大自然の中に佇む秘湯「岩屋館」

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2つめは、真田の里の隠し湯と呼ばれている角間温泉「岩屋館」。歴史については、本誌「日本ドライブ紀行」でも紹介されていたので、ここでは詳しくふれないが、角間渓谷の大自然に囲まれ、まさに秘湯というにふさわしい風情ある一軒宿だ。館内には大浴場と露天風呂を完備。天然では珍しい鉄分を含んだ茶褐色の炭酸泉で、湯温は低めだが、ゆっくり長く浸かることでじんわりと体を温めてくれる。

帰り道に角間渓谷へ立ち寄れば、猿飛佐助が修行したと伝わる猿飛石などもあり、切磋琢磨しながら戦国の世を生きた真田一族ゆかりの原風景の中、里山ドライブが堪能できる。

角間温泉「岩屋館」

コラム原稿は2016年8月現在の情報を元に執筆しています。

きた たけし◎1960年新潟県生まれ。北海道から沖縄まで田舎暮らしやIJUターン、温泉などの取材経験を活かし、雑誌記者として旅やアウトドアなどの記事を執筆。源泉掛け流しの湯とご当地食を愛し、日本の秘湯と日本百名湯“完湯”をめざす。編著に『フィールドの天気がわかる本』、『ダッチオーブン&スキレット教書』ほか。